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京都市の実質的な借金残高は約8600億円

【独自取材】京都市、借金8600億円の中500万円“漆塗りエレベーター”に怒りの声、市長退職金6800万円も「見直しなし」…新たな税改革で巻き返しなるか?

相次ぐ市役所の“豪華改修”に物議

 京都市は2021年8月、実質的な借金残高が約8600億円余りにのぼる深刻な財政状況を発表し、5カ年計画で収支改善計画を実行中です。その結果、歳出はマイナス63億円・歳入がプラス56億円で、119億円の収支を改善しました。しかし、いまだ今年度の予算は117億円の赤字のままです。にもかかわらず市長は、「財政危機を克服できる見通しが立った」と強気なコメントを出し、「行財政改革をしっかり実施していく中で展望が開ける」と語りました。

京都市の収支状況

 117億円の財源については、「行政改革推進債」で44億円、「調整債」が17億円、さらに「公債返還基金の取り崩し」で56億円となっています。しかしこの「公債返還基金の取り崩し」は、将来返すお金に手を付けることになるため、“禁じ手”と言われています。

改修費500万円の“漆塗りドア”

 このような中、3月に完成した市庁舎1階・来庁者用エレベーターの“漆塗りドア”の改修費用が約500万円だったことが分かりました。この漆塗りは、京都市の産技研と民間企業が共同開発し、特許登録もしているということで、「新しく金属の上に漆を塗る技術を使って、従来にない光沢感・透明感があり、伝統産業の活性化への思いを込めた」ということです。しかし市民からは、「わざわざ見に来る人がいるとは思えない」「変なプライドが高いんじゃないか、もうそんな時代じゃないと」といった怒りの声もあがりました。

京都市役所の“豪華改修”

 このエレベーターの改修も含めた総工費159億円の京都市役所の耐震改修工事については、これまでも、豪華なシャンデリアの「正庁の間」や議会の「緞子(どんす)張り」、市民が使えない「茶室」など、物議を醸す様々なものがありました。そして、年間最大6%カットを行ってきた京都市職員の給与ですが、これは今年度で終了するということです。また、市長の退職金二期分約6800万円も「見直しの予定はない」とのことです。

市民生活にも影響している財政改革

 その一方で京都市では、市バスの料金が無料になる「敬老パス」の対象年齢が、70歳から75歳に段階的に引き上げられます。そのバスの運賃も、現在の均一区間230円が値上げされることや、地下鉄の初乗り220円の値上げも決まっています。6月1日からは、二条城や京都市動物園など京都市の23施設が入場料や使用料を値上げ。さらに、今年度中に138の施設で値上げを行うということです。

増えない税収…新たな取り組みで改善なるか?

神社・寺への課税は「できない」

 税収に関しては、京都市は人口の約1割が学生で、さらに高齢者も多いため、納税義務がある人の割合が、政令指定都市で最低の43.1%しかありません。さらに、景観保全のため高いマンションが立てられないこともあって、多くの固定資産税が見込めないという事情もあります。また、京都市内に約2000ある神社・寺に対して、税負担を求める市民の声もありますが、5月に京都の門川市長は「ほとんどが極めて厳しい経営状況。原則として寺に課税はできない。その辺は、ご理解いただきたい」と苦しい胸の内を明かしました。

全国初「別荘・空き家税」導入へ

 そこで3月に京都市は、新税「別荘・空き家税」を議会で可決しました。これは生活実態のない非居住住宅の戸主に対し課税するもので、空き家も対象とした税は全国初であり、早ければ2026年の施行だということです。

受け入れ額が激増した「ふるさと納税」

 さらに京都市は、収入を増やす取り組みとして、「ふるさと納税」に本格参入を決めました。京都市はこれまで「ふるさと納税」には消極的でしたが、2021年から“京都ならではの返礼品”を、それまでの3倍以上に増やしたところ、寄付受け入れ額が2020年の3倍以上となる61億円に上る見込みとなりました。また、三条大橋の補修にかかる市の負担金を、「ふるさと納税」による寄付で集めたところ、予算の2億円を超えた2億6500億円が集まりました。

市民からの巨額の寄付

 また、芝が張り替え次期を迎えていた「宝が池公園」に対し、“サッカー好きの京都市民”から、「子どもたちのために役立ててほしい」ということで、15億4000万円の寄付がありました。京都市はこの市民と折衝をして、この寄付金を基に、球技場の芝の張替えや観客席の改装、宝が池公園へのスケートボード場の新設などを行いました。スポーツ振興室の課長は「“財政難”で予算確保できるか不透明だった。寄付は非常にうれしく思っています」と話しています。

今後、観光客が戻って来ると思われる京都市。サービスカットに対する市民への説明責任が果たされ、より多くの人たちが“本当に見たい”と思える場所をつくることが望まれます。

(情報ライブミヤネ屋 2022年6月2日放送)

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