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【独自解説】約4300万円を“法的に確保”、代行業者から3500万円返還で「罪は軽くなる」一方“全額使った”がウソでも「その犯罪は成立している」容疑者の量刑を専門家が解説
2022年5月24日 UP
山口県阿武町(あぶちょう)の職員が、“新型コロナ”の臨時給付金として4630万円を24歳の男性に誤って送金した問題で、決済代行業者から阿武町に3500万円余りが返還されていたことが明らかになり、さらに阿武町が24日に行った会見で、法的措置によって約4300万円を確保できたことを明らかにしました。「複数のネットカジノで全て使った」と、接見した弁護士に話していた田口翔容疑者。その証言に偽りがあったのでしょうか?大阪地検の元検事・亀井正貴(かめい・まさき)弁護士と、ネットワーク犯罪に詳しい石川英治(いしかわ・ひではる)さんが解説します。
過去の摘発事例が影響?返還された経緯を考察
Q.決済代行業者から3500万円余りの大金が返還されたということですが、どんな経緯が考えられますか?
(ネットワーク犯罪評論家 石川英治さん)
「お金を口座から移しただけで、ほとんど使っていなかったのではないか、もしくはカジノで勝っていた可能性などが考えられます。また決済代行業者は、入金されたお金を外貨に変換して外国カジノの口座に入金するのですが、今回のケースは代行業者がそのままの金額を返金しているので、もしかしたらカジノにお金を送金していなかったのではないかとも考えられます」
Q.その場合、田口容疑者は決済代行業者にお金を移して全額使ったことにしてしまえば、このお金を使えるとでも思っていたのでしょうか?
(石川さん)
「そうですね。口座からお金を出して使ったことにしてしまえば、罪を償った後にそのお金を使えるだろうと思ってもおかしくないですよね」
過去には、オンラインカジノを巡る摘発事例がありました。2015年、偽コインをネットで販売した男が詐欺容疑で逮捕され、この男を警察が捜査したところ、男はオンラインカジノの客と判明。そして、オンラインカジノ決済代行業者が管理する男の口座に、約1億2000万円があったことが明らかになったことにより、決済代行業者の役員は「犯罪収益移転防止法違反」の容疑で逮捕されたということです。亀井弁護士は、「この事件が今回の決済代行業者による返還の原因になった可能性はある」としています。ただし、「勝手に返還するとは考えにくく、本人の同意はあったのではないか」ということです。
(大阪地検元検事 亀井正貴弁護士)
「今回詐欺をして得たお金を、全て遊興に使っていた場合には、新たに犯罪は成立しないのですが、もし騙し取ったお金をどこかに隠していたら、例えば『組織犯罪処罰法』や、この『犯罪収益移転防止法』の関係で、犯罪収益の隠匿や、業者が政治に報告しないということで、また別の犯罪が成立してしまうんです。恐らくこの犯罪の関係で、決済代行業者も返金すべきだと感じていた、連日報道があって問題性を認識していた、もしくはこの決済代行業者と被疑者の関係が他の業者より関係が濃かったのかもしれません」
Q.阿武町のお金だと分かっていても、田口容疑者の了承なしでは返還できないのですか?
(亀井弁護士)
「田口容疑者の口座に振り込めば返金で済むのですが、違うところに振り込めば今度は容疑者から返還請求を受けるリスクもありますから、やはり本人の同意がないと他の口座への振り込みは難しいのではないかと思います」
容疑者の量刑に影響は?
Q.3500万円余りが返還されたことで、罪が軽くなる可能性はあるのですか?
(亀井弁護士)
「軽くなります。実害が1000万円余りとなりますから、さらに返金があれば、執行猶予が付く可能性が十分にあります。400~500万円が返金できなかった場合、実刑が前提にはなるのですが、今回は町側が大きな金額を流出させて返したという事情がありますし、町が犯罪を誘発した面も若干ありますから、考慮の範囲に入ってくると思います」
Q.3500万円余りは返金されていても、「お金は使った」と嘘をついていた部分は、罪に問われないのですか?
(亀井弁護)
「そこの部分の犯罪は成立しているので、罪に問われています。どちらにしても犯罪は成立しているので、後は実害がどれだけ回復するかということによって、量刑が変わってくる可能性があります」
(情報ライブ ミヤネ屋 2022年5月23日放送)


