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36人もの命が犠牲になった京アニ放火事件

【独自取材】「やっぱり謝罪の言葉を述べてほしい」京アニ放火事件・青葉被告と対話してきた元主治医が初公判直前に語った“切なる願い”―「裁判にしっかり向き合ってほしい」

 2019年7月18日、京都市伏見区の「京都アニメ―ション」第1スタジオに侵入した男がガソリンをまいて放火し、36人が死亡・32人が重軽傷を負った事件。警察は、現場近くで倒れ込み、「液体をまいて火をつけた」という趣旨の話をした青葉真司被告を確保しましたが、被告自身も全身に大やけどを負っていました。「ミヤネ屋」は、2023年9月5日に始まった初公判を前に、青葉被告を治療した元主治医に独自取材。医師が明かした“思い”とは―

4年前、青葉被告は何を思い、何故火をつけたのかー

事件後、現場近くで倒れていた青葉被告

(青葉真司被告/確保時)
「(京アニが)自分の小説を盗んだから、やった」

 当時、こう話したという青葉被告。自宅の家宅捜索では「京アニ」作品のサイン入り色紙なども押収され、「京都アニメーション」に関心を寄せていたとみられることも、明らかになりました。

 また、青葉被告は埼玉の自宅を出るときから犯行を決意し、当日、複数の包丁を準備していたことを認め、

(青葉被告)
「邪魔する人がいたら、襲うつもりだった」

と、犯行の計画性についても話したといいます。

逮捕された青葉被告

 そして2020年5月、医師の意見などを基に、留置施設での勾留や取り調べに耐えられるまでに容体が回復したと警察は判断し、青葉被告の逮捕に踏み切りました。

(青葉被告/逮捕後の取り調べで)
「ガソリンを使えば、多くの人を殺害できると思い、実行した。一番多くの人が働いている第1スタジオを狙った」

残された人たちの癒えぬ悲しみ…苦しみ続ける遺族の本音

被害者支援をテーマに遺族が講演活動続ける

 この事件では、アニメを愛し、数々の有名作品を生み出してきたクリエーターら36人もの命が、犠牲になりました。遺族たちの苦しみが癒えることはありません。

 「京アニ」を代表するヒット作の1つ「ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン」で美術監督を担当していた渡邊美希子さんも、犠牲になった一人です。美希子さんの母と兄は、事件の後、被害者支援をテーマに講演活動を続けています。


(美術監督・渡邉美希子さんの母)
「子どもがいなくなるというのは、ここまでしんどいのか、と。これまでも、『しんどいやろな、大変やろな』と、子どもさんを亡くされた方には思っていたつもりだったんですけど、とてもとても、そんなものではなかったです。もうあの子がいなくなって、4年近く経ちますが、何かの拍子に『美希子ちゃんのこと思い出して、つらいか?』と聞かれますけど、逆なんですよね。集中してないと危険なときは、集中しています。包丁を持ちながら、あの子のことを考えて、ウジウジしてても仕方ない。でも、その時間が終わると真っ先に出てくるのは、ごめんな、あんた(兄)じゃなくて美希子なんよ。そんな4年間を過ごしています」

(渡邉美希子さんの兄)
「妹のほうが価値があるんだったら、代わってあげたい…恨まれるようなことをする人間ではない、と。本当に理不尽だな、と」

「しっかり向き合うように」元主治医が伝え続けた思い…青葉被告には届いたのか

青葉被告の元主治医・上田敬博教授

 一方、全身に重いやけどを負い、病院に搬送された青葉被告の治療に当たった上田敬博教授にも、初公判直前に話を聞くことができました。

(青葉被告の元主治医 鳥取大学医学部・上田敬博教授)
「治療に関しては、かなり絶命する可能性が高いと判断されていたが、それでもお受けした理由は、『少しでも救命できる可能性があるとしたら、自分たちの施設だろう』ということで、お引き受けしました。他の患者と同じ、絶命しかけている人を助ける、それだけです」

青葉被告の手術の様子

 この写真は、上田教授らが青葉被告の手術を行っている実際の写真です。青葉被告の体に残った皮膚を培養し、移植するものでした。手術は、大阪府内の病院で4か月の間に5回ほど行われたといいます。上田教授らの治療により青葉被告は、5週間後には頷けるようになり、その後、会話もできるまでに回復しました。

(上田教授)
「青葉被告が入院して転院するまでは、自分らがしっかり治療をしていって、こちら側から『裁判が、もし始まった場合には、しっかり向き合うように』という姿勢を表していました。それがある程度、伝わっていたんじゃないかな、と思っていたんですけど…」

「本人の言葉を直接聞きたい」と手紙を送る

 2019年11月、上田教授の下での治療を終え、青葉被告は京都市内の病院へ転院。上田教授は本人の言葉を直接聞きたいと、大阪拘置所の青葉被告に対し、接見の申し込みや手紙を送っていたといいます。

(上田教授)
「転院から1年が過ぎ、2年が過ぎということで、気持ちの変化が起こってないかというのを、返事が来る可能性はないと思ったんですけど、出してみたってところです」

 結局、手紙への反応はなかったといいます。初公判を迎えた青葉被告に、何を思うのでしょうかー

(上田教授)
「まず、やっぱり謝罪の言葉を述べてほしいというのが、個人的には思います。それから、やはり裁判自体に向き合うというか、目を逸らさないというか、黙秘せずに、しっかり向き合ってほしいというのが、一番感じているところです」

 そして、2023年9月5日に行われた裁判員裁判。

 青葉被告は、「事件当時は、こんなにもたくさんの人が亡くなるとは思っておらず、今はやり過ぎたと思っています」と述べ、起訴内容を認めています。

(「情報ライブ ミヤネ屋」2023年9月5日放送)

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