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“統一教会”脱会の苦労

【独自取材】“統一教会”元信者と家族が語る入信から脱会までの凄絶12年、12万円の念珠に始まり献金総額は3200万円…彼女を洗脳から解いたものとは―

 “統一教会”は、一度信仰すると脱会するにはいくつもの困難が待ち受けています。信者だった妻を脱会させるために向き合い続けた藤田さん(仮名)一家が、「ミヤネ屋」のカメラに“脱会の難しさ”を語ってくれました。

きっかけは家族に関する悩み 信者になった経緯

“統一教会”元信者 藤田さん

 インタビューに答えてくれたのは元統一教会信者の藤田さん(仮名)とそのご家族です。藤田さんは、「統一教会を12年間、信仰していました。2007年にきっかけができて入信して、2019年までです」と、今は脱会しているということです。藤田さんの夫も「牧師さんに『奥様も完全に“統一教会”から心が離れているから、もう安心してください』と言われたのが2021年の12月、1年前ですね」と、藤田さんは現在完全に脱会したと語りました。藤田さんの息子は「信者時代の母は、見た感じは普通ではあるのですが、“統一教会”の話をすると怒っているというか、頑なにしゃべらない感じになってしまって…」と当時を思い起こし、藤田さんの夫は「私たち家族だけで対応するのは難しいなと、私も本当に悩んでしまって…」と、脱会までの道のりを語り始めました。

Q.そもそも藤田さんが信仰するきっかけは何ですか?
(藤田さん)
「主人の病気で一番悩んでいましたから、夜に変な行動とかをしていたので、それが引っかかって…主人がストレスで休職して、私の父も病気になったし、身内によくないことが続いていたのがきっかけです」

 悩んだ藤田さんは、普段から仲の良いママ友に相談しました。するとそのママ友から「家系図を鑑定してくれるところがあるから行ってみない?」と提案されたといいます。そしてママ友から「宗教だよ」とは聞かされていたものの、いつも親身になって話を聞いてくれるので、言われるがまま、とある場所へ連れて行かれました。そこには先生と呼ばれる女性がいて、その女性に家系図を見せたところ、「藤田さん、ご主人の病気は、先祖から繋がっているんです。お子さんを守るために、念珠を用意した方がいいですよ」と念珠の購入を勧められたといいます。藤田さんは「家族を守るため…」との思いで念珠を購入しました。

最初に勧められたのは12万円の念珠(写真はイメージ)

Q.念珠はいくらしたのですか?そのときの気持ちは?
(藤田さん)
「念珠は12万円でした。そして、息子を守るため、不幸を断ち切るためには、まだ勉強しなくちゃいけないと思いました」

藤田さんが連れてこられたのは、教団の施設です。ママ友と先生の二人は“統一教会”の信者だったのですが、この時点では明かしていませんでした。“統一教会”とは知らないまま、藤田さんはその後、勉強会という名目のフォーラムへ参加します。そこは、教団の教えを講じる、いわゆるビデオセンターだったのです。

Q.ビデオセンターに通おうと思ったのはなぜですか?
(藤田さん)
「そこに行って、そのビデオの話だけではなく家庭の事とか、自分の生活の中での事とかを話すと、受け入れる言葉が返ってくるので、そこは居心地のいいところなんです。だんだん進んでいくと、神様とか聖書の話とか、文鮮明の事も明かされていくんですよね」

藤田さんは、フォーラムの早い段階で“統一教会”だと認識したといいます。そして数回通ったある日、先輩信者が近づいてきて「通帳を持って来てくださいね、お清めするためです」と言われます。さらに翌日、その通帳を見た先輩信者から「藤田さんの場合、1000万円は献金が必要ですね」と告げられたといいます。

Q.1000万円の献金が必要だと聞いたときの心境は?
(藤田さん)
「今思うと、そんな大金をなぜ?と思うんですけど、そのときは本当に『宗教でも何でもいいや』みたいな気持ちに自分がなっていたので…」

Q. 旦那さんの病気を何とかしたいというのが一番ですか?
(藤田さん)
「そうです」

藤田さんが記した教団関連のメモ

 藤田さんは、家族を救いたい一心で、結果的に1000万円を現金で献金しました。当時の藤田さんのノートに記されたメモ書きには、教団との初接触を持った2007年6月に「念珠12K」との記載があります。この「12K」とは「12万円献金」の事です。さらにその17日後に、1000万円の献金をします。その日には「SK」と書かれていて、その意味は「すぐ献金」の意味だといいます。

家族にも気付かれないように信仰を深めていった

Q.藤田さんは、“統一教会”の教えにのめり込んでいきますが、ご家族は、異変に気付かなかったのですか?
(藤田さんの息子)
「全く気付かなかったですね…」
(藤田さんの夫)
「気が付きませんでした。私が仕事に行っているときに勉強会に行っていたという感じだったので。それに、最初に『家族には、話してはいけないよ』と言われていたということなので…」

Q.なぜ話してはいけないのですか?
(藤田さん)
「黙ってやること、隠れてやることが大事、みたいなことを言われた気がします」

献金総額は3200万円以上に 異変に気付いた家族

夫の写真を持ち、1人で祝福を受ける藤田さん

 藤田さんは、ゆくゆくは「夫婦で祝福を受けたい」という気持ちを持つようになり、夫の写真を持って、1人で祝福を受けたこともあります。そして、夫や息子に隠れて献金する度に物品が増えていき、180万円の善霊堂など、献金は総額3200万円以上に。家族がいないときに、文鮮明総裁夫妻の写真を出してきて祈りを捧げる日々が続きました。その当時の状況を藤田さんは、「お金を使ってしまっているし、『隠さなければ』というのがあったので、ウソのつきまくりでした」と語ります。

夫や息子に内緒で信仰を続けること12年あまりが経った2019年10月、ようやく夫が藤田さんの異変に気付きます。

Q.気付いたきっかけは?
(藤田さんの夫)
「以前から夕方になると妻の携帯に連絡があって、私としては、『どこかに連絡しているな』と不信に思うところがあったのです。しかし、妻に聞いてもはぐらかされたので、妻のいないときに携帯を見たところ『今日は婦人部長の面会があるから』とか『教会長の話があるから』とか、そういう内容のメールがあったので…」

“統一教会”関係者とのメールを発見(写真は取材に基づく再現)

 藤田さんの夫は、「やってはいけない」と思いながらも藤田さんの携帯電話を見たところ、そこに“統一教会”関係者とのメールのやりとりがあったということです。藤田さんに問いただしても「2年前からバンドのファンサークルに通っているの。お金も10万円、20万円ぐらいしか使ってないし…」という納得のいかない返事でした。さらに、家計などお金の管理は藤田さんに任せっきりだった夫ですが、「妻の様子がおかしい」と思い、久しぶりに通帳をチェックすると、大変な事になっていました。

Q.通帳はどうなっていたのですか?
(藤田さんの夫)
「700万円ぐらい入っていた通帳が、本当に3~4年で0円に近くなっているのがありまして。一時は1日おきに50万円とか30万円とか抜いていたので『なんでだろうな』と思って…妻に『これ何?生活費こんなにかかるの?』と問いただしても、『投資信託に使った』とか言っていたんです。」

 結局、藤田さんは夫にウソを見抜かれ、“統一教会”信者であることを認めました。そのときの心境を、藤田さんの夫は「マインドコントロールをかけてくること、妻を変えていくのはやっぱり許せなかったですし、やっぱり妻が一番つらかっただろうなと…マインドコントロールするのが強い教団だと感じました」と語りました。また、藤田さんの息子は「父は平成初期の“統一教会”を知っていますので、すごい焦っている感じでしたね。どうしたらいいのだろうというところで…」と父親の様子を語っています。

教団から出された合意書

 妻の脱会に向けて、藤田さん一家がすぐさま始めたのは、教団への返金請求です。藤田さんの献金額は3200万円以上あり、その返還を請求したのですが、教団側は「正式な献金額はわからない」と主張。その結果、統一教会の信徒長が持ってきた合意書は、「教団が藤田さんに500万円を返金する」となっていて、他にも「今後、一切の異議申し立てを行わない」などが記されていました。

Q.500万円で合意したのですか?
(藤田さんの夫)
「“統一教会”側は『合意書にサインして欲しい』ということだったのです。私たちは、カウンセラーの牧師さんとかに相談しまして、『合意書に同意してしまうとそれ以上の金額は戻らない場合がある』と言われました」

 藤田さんは、合意書への署名を拒否。その後、教団からの連絡が途絶え、現在1円も返金されていないといいます。そして、脱会に向けて最も困難なのが、家族がどんな言葉で説得し、信者と向き合うか?です。 

脱会への説得、立ちはだかるマインドコントロール

「地獄に落ちる」“統一教会”の教え

 当初、夫は「やめなかったら離婚だからな」と言い、息子も「俺も縁を切るよ」と強い言葉で脱会を迫りました。藤田さんはその言葉に「なんで分かってくれないの?家族のためにやってきたのに…」と反発したと言います。また、統一教会の教えには、「脱会したら“地獄に落ちる”」「離婚したら“地獄に落ちる”」というものがあり、強く否定する言葉での説得は藤田さんを混乱させ、かえって逆効果になりました。当時の状況を藤田さんの息子は、「父は『“統一教会”はおかしい』というのがあって、そこから話していて、母は『家族のためにやっているんだから統一教会は正しい』みたいな事で話しているので、話が合わなくて、ちょっと喧嘩になったりして、見ていて『やだな』というのはありましたね」と語っています。

 その後、家族は脱会を手助けする牧師にカウンセリングを依頼し、藤田さんと引き合わせました。しかし、カウンセリングの最中、藤田さんは終始怖い顔で、ついにはカウンセリングの途中で突然帰ってしまいました。

Q.どうして帰ってしまったのですか?
(藤田さん)
「そのとき、まだ気持ちは教会にあるので、行って色々話はしてくれるのですけど、『間違っている』『違うんだよ』って、強く言われるのを我慢していましたが、『これ以上、話を聞きたくない』と帰ってしまいました」

藤田さんを脱会させた牧師

 マインドコントロール下における脱会説得の難しさ…それでも家族は、藤田さんをその都度説得し、牧師の元に連れて行きました。すると、カウンセリングを重ねるうちに、藤田さんの心境に変化が生じます。藤田さんと同じ経験をした元信者の話が、藤田さんの心に響いたのです。

(藤田さん)
「元信者だった方も来てくださって、話をしてくれるんです。私が家族に、信仰していたときの自分の気持ちを話したくてもうまく話せなくて、そのかわりに元信者の方が言ってくれたので『みんな同じ気持ちなんだなあ』と思って『私の思っている事を言ってくれた。それでスッキリ』みたいなものがあって、少しずつ変わっていきました」

藤田さんは、牧師や元信者の話を聞くことで、どんどん表情が穏やかになったといいます。

Q.藤田さんが、教団を脱会する最大の要因はなんですか?
(藤田さんを脱退させた牧師)
「家族の熱意に押されたところが大きかったと思いますよ。こちらの言う話が、いくらか少しずつ心の中に浸透していったのもあったと思いますけど、やっぱり結局は家族ですよ。本当に心配して『なんとかしよう』としていました。だから家族の力が一番大きかったのです」

 藤田さんの家族は、一度も諦めることはありませんでした。膝を突き合わせてカウンセリングに通い続けること2年、ついに2021年12月、藤田さんは、完全に統一教会から心が離れることができました。

(藤田さん)
「主人も息子たちも、私を見放さないでくれました。突き放さないでくれました。このことは、本当に感謝です」

(情報ライブミヤネ屋2022年12月26日放送)

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