記事
【独自解説】「習主席辞めろ!」習近平氏の母校でも抗議の声が上がる異例事態…中国で拡大する“反ゼロコロナデモ”の現状を北京からリアルリポート
2022年11月30日 UP
隔離や封鎖など、厳しい“ゼロコロナ政策”を続ける中国で抗議活動が激化し、大勢の市民が公然と政権を批判する異例の事態が発生しています。言論統制が厳しい一党独裁の国・中国で今、何が起きているのか?北京から森本隼裕記者が、現地の様子を伝えます。
(NNN北京 森本隼裕記者)
「中国で異例とも言える抗議が広がりを見せていますが、その背景の一つは長引く不況、生活への打撃です。北京の中心部にある外国人にも人気の観光地・胡同は、古い町並みを生かした、飲食店や雑貨店などが南北にずらりと並ぶエリアなのですが、今はほとんどの店が閉まっていて、閑散とした状況です。今日は平日ですが、土日に来ても状況は変わらず、寂しい雰囲気となっています」
(森本記者)
「この状況は今に限ったものではなく、中国ではこうした状況が約3年もの間、何度も繰り返されています。そのため、『もういい加減にしてくれ!』という不満が噴出したのが、今回の抗議活動に繋がったのだと思います」
Q.中国では新型コロナの感染が広がっているということですが、何をするにもPCR検査を受けるということでは、無症状の人を含めるとある程度の人数は出てきますよね?
(森本記者)
「そうですね。これだけ毎日のようにPCR検査を受けさせられているので、当然あぶり出されてしまいますし、それで一人でも感染者が出れば、その地域一帯の人がまとめて封鎖されてしまうという状況がもうずっと続いていますので、本当にストレスの多い生活状況になっています」
Q.森本記者も、1日に1回ぐらいのペースでPCR検査をしているのですか?
(森本記者)
「毎日受けなければいけないという決まりはないのですが、実際の所、私たちが取材で行く中国当局の関連施設や一般の商業施設でも、『24時間以内あるいは48時間以内の陰性証明が必要だ』と言われることが多いので、やはり1日に1回、あるいは2日に1回検査を受けるのが当たり前になっています」
Q.北京での抗議活動の様子はいかがでしたか?
(森本記者)
「実際の現場は別の同僚が取材したのですが、中国ましてや首都・北京でこれほど大規模な抗議活動が起きるというのは衝撃的でした。10年ほど前の『反日デモ』で、この規模の集会がありましたが、今回は明らかに“ゼロコロナ政策”、ひいては共産党政権や習近平氏を名指しで批判するようなシュプレヒコールも聞こえて、やはり異例中の異例の事態だったと思います」
Q.抗議をしているのは若い人や大学生も多いと聞きますが?
(森本記者)
「そうですね。若い方は非常に多いです。ここ北京で言うと、北京大学や習主席の母校でもある清華大学など、受験競争の厳しい中国の中でもトップ中のトップの名門大学で、こういう事が起きていて、将来有望な若者たちが、未来のリスクを冒してまで声を上げている、というところは、非常に印象的でした。中国はもともとSNSの規制なども厳しいのですが、今の若者は様々な情報ツールを持っていて、水面下でこういった抗議活動の情報を拡散していますから、そういうものにお互い刺激されて、『よし俺たちも声を上げよう』と連鎖的に広がっていったという印象です」
Q.中国当局は、すぐにSNSを規制をする、というイメージですが、それをかいくぐるようなツールが出来ているという事でしょうか?
(森本記者)
「やはり外の世界を知りたいという欲求は、特に若者にはありますし、さまざまな情報ツールを持っていて、この規制の網をなんとかかいくぐってみんなで情報交換しようということで、今回のように、当局も未然に防ぎきれないというような状況が起きているのだと思います」
Q.“ゼロコロナ政策”に対する批判というのはまだ分かるのですが、将来有望な若者が「習主席辞めろ!」と言うのは異常事態だと思うのですが?
(森本記者)
「習主席を名指しで批判する抗議活動を行うということは、当然この中国では逮捕されてしまうようなリスクもあります。それでも声を上げるというのは、現状の生活への不満もありますが、将来を考えても、『こんな状況はいつまで続くんだ。自分たちの将来はどうなってしまうんだ』という不安が、彼らをこういう行動に駆り立てているのだと感じます」
Q.“ゼロコロナ政策”で経済も暮らしも大変な上、若いエリートたちが声を上げている中で「自由」という言葉を出していますが、習政権にとっては、一つ上に大きなものが乗ってしまったような気もするのですが?
(森本記者)
「最近、若者は外の世界を見ていますし、今回のワールドカップでも、自分たちが今置かれている境遇とは全然違う、自由にみんなが熱狂している、楽しんでいるような世界と比較してしまうと、『自分たちが置かれている状況は一体何なんだ?』という疑問を強く持つ人が増えてきているのだと思います」
Q.映像を見ると「天安門事件」を想起してしまうのですが、中国ではそもそも「天安門事件」は無かったことになっていて、今の若い人は知らない人も多いと思います。それだけに怖いなと思うのですが?
(森本記者)
「そうですね。確かに今の若者たちは知らない人も多いとは思いますが、ただ大学生の間では色々な情報交換の中で知っている人もいますし、当局としては、あのような事態にまで発展することは、非常に恐れているところだと思います。実際に、昨夜も北京の大学や各地で、こうした集会を呼びかけるような動きがあったのですが、下手に押さえ込もうとすると激しい不測の事態を引き起こしてしまいかねないので、警察を大量に各地に配備して、できる限り未然に防ぐ、というところに力を注いでいる状況だと思います」
Q.一方の政府は、習主席が決めたことだから“ゼロコロナ”はひっくり返せない、ということですか?
(森本記者)
「はい。中国では共産党が決めた政策を簡単にひっくり返すというのは、なかなか無いことだと思いますし、この“ゼロコロナ”という基本方針自体が、これで急にひっくり返るかというと、それはなかなか難しいと思います」
(「情報ライブミヤネ屋」 2022年11月29日放送)


