記事

インターパーク倉持呼吸器内科・倉持仁院長

【独自】進む“飲み薬” 開発 “鼻で吸う”ワクチンも!コロナ収束への切り札となるか!?治療最前線に立つ医師が解説

政府分科会の尾身会長が9月8日会見を行い、緊急事態宣言の解除基準について「今まで以上に医療ひっ迫状況を重視し、新規感染者数は条件としない」ことを提言としてまとめたことを明らかにしました。

一方、現在、開発が急ピッチで進んでいる“飲む”タイプの治療薬。開発の最前線ではどんな研究が行われているのか?日々、新型コロナ患者の治療にあたっているインターパーク倉持呼吸器内科、倉持仁(くらもち・じん)院長が独自解説しました。

大阪で10代男性コロナ陽性者が死亡

大阪で10代の“コロナ”感染者が死亡

大阪府の吉村知事は、大阪府内の10代の陽性者が亡くなったと発表しました。10代の男性は9月7日に亡くなりました。基礎疾患、そして複数の重症化因子があったということです。ワクチンは打っていませんでした。9月1日に救急搬送されその場で検査を行って陽性が判明、搬送時、既に重症だったということです。

Q.この大阪で亡くなった10代の男性について詳しいことはまだ分かりませんが、医療介入やワクチン接種を一刻も早くした方が良いということですか?

(インターパーク倉持呼吸器内科・倉持仁院長)
「このような残念なケースは本当に悲しいことですが、やはり早期診断というのが当たり前に必要なことです。今、現場ではできていないことが一番の問題だと思います。この方の経過は分からないですが、体調不良を感じたときに、すぐ医療機関にアクセスできていれば、もしかしたら…と思ってしまいます」

緊急事態宣言の解除基準案とは

緊急事態宣言の解除基準について

政府分科会で議論されたのは、“緊急事態宣言”の解除の基準について。政府がとりまとめた基準案は、「医療のひっ迫度」を重視し、かなり細かいものとなりました。まず、病床使用率と重症病床の使用率が50%未満。入院率が改善傾向にあり、重症と中等症の患者数が継続的に減少傾向にあること。このほかにも、自宅療養者の数などの基準もあげられました。一方で、これまで重視されてきた新規感染者の数は、あくまで参考とすることになりました。

政府分科会が解除基準の新提言

Q.尾身会長が会見で、緊急事態宣言の解除条件について、「今まで以上に医療ひっ迫状況を重視し、新規感染者数はあくまで参考」と話しましたが、医療のひっ迫状況と新規感染者数がリンクしている県も、していない県もあり各都道府県で違いますよね?

(倉持仁医師)
「場所によって全然違ってくると思います。大事なことは、『前向きの対策』を作っていかないと、ただ自粛をしてまた解除しますと、今までずっと同じことばかり見てきて、ちょっと辟易してしまいます。もうちょっときちんと医療供給がひっ迫しないような対策を思い切って打ち出していただきたいです」

Q.ホテル療養や外来で「中和抗体カクテル」を希望すれば、すぐにでも打てるという状況にしなければならない?

(倉持仁医師)
「全くそのとおりだと思います。今はこういう基準で解除を決めるというよりも、困っている患者さんに速やかに医療を届ける体制の構築が急務なのです。こういったことやっているのは2波、3波の時ならまだいいですけれども、5波に至ってまだこうなのは、正直言ってガッカリです」

東京の感染状況と行動制限の解除

東京の感染状況

Q.東京の感染者数は連日減っていますが、どうお考えですか?

(倉持仁医師)
「我々はいま、遺伝子の研究を東大の医科学研究所などと一緒にしていて、例えば、プレプリント(査読前の論文)で、今度出てくるミュー株にはワクチンが効かないとか、そういうデータが出てきています。だから、こういうふうに、新規感染者数が減っている時は、我々は次の変異株が出てくるのではないかと、早急にまた現場でキャパシティ(収容能力)を上げるような対策をしています。ですから、そういった『前向きの対策』をしていかないと。今後の最悪の事態にも耐えるし、最悪の事態を起こさない方法を、様々にとるということです。ワクチンだけでも足りませんし、色々と対策しなければなりません」

Q.倉持さんの病院での陽性率はどうですか?

(倉持仁医師)
「実は15%ぐらいに、8月よりはちょっと上がっています。幼稚園とか保育園とかに通う子どもたちが感染しています。ですから、その辺も気をつけてみていかなければいけないと思っています」

政府分科会が「ワクチン接種証明」活用法を議論

Q.ワクチンを打った者同士で、陰性証明を持っている4人以下で、感染対策をしっかりやっている店でご飯を食べるというように徐々に解除するのはどうですか?

(倉持仁医師)
「そういった方法は、非常にいいことだと思いますが、ワクチンだけ打っても抗体化が不十分であれば感染しますし、あるいは自分は重症化しないですが人にはうつします。我々の所でもそういう感染が出ていますから。やはりワクチン証明書、プラス検査など色々な方法を組み合わせていかなければ。あるいは衝立とか換気の基準の見直しなど複合的な対策をしないといけないと思います」

進む「飲み薬」と“鼻で吸う”ワクチン開発

コロナ治療薬「飲み薬」開発へ

世界で現在、開発が急ピッチで進んでいるのが「飲み薬」タイプの治療薬です。「飲み薬」には、軽症の段階で使用できたり、自宅で服用できるメリットが考えられます。そんな飲み薬「モルヌピラビル」の開発を進めるのが、アメリカの製薬大手メルク。メルクの日本法人MSD(エム・エス・ディー)は日本国内での治験を進めています。「モルヌピラビル」は、コロナウイルスの細胞を構成するRNAゲノムの一部に入り込み、本来の配列を崩します。それにより、コロナウイルスは活動や増殖ができなくなり、不活化し、死滅すると考えられています。実験レベルでは、変異株にも効果があることが認められています。

新型コロナの飲み薬を巡っては、各社がしのぎを削っています。ワクチン開発で世界をリードしたアメリカのファイザー社も、飲み薬の開発を行っており、海外ではすでに最終段階の臨床試験に入っています。国内大手製薬会社の塩野義製薬で開発中の飲み薬は、早い段階で服用することで体内のウイルス量を低下させ、症状の改善や重症化を防ぐ効果が期待できるといいます。塩野義製薬は、2021年7月、健康な成人男性75人を対象にした初期段階の臨床試験を開始。年内にも国内での最終的な大規模臨床試験を目指すとしています。

“鼻で吸う”ワクチン開発へ

また、三重大学とベンチャー企業「バイオコモ」が、共同開発している「鼻スプレーワクチン」ですが、鼻からワクチンを投与することで、体内に抗体を作るだけでなく、鼻やのどなどに「粘膜免疫」という抗体を作成し、ウイルスの侵入口である鼻・のどで防ぐことで、体に入るウイルス量が格段に減るとされています。針の痛みがないことや副反応が少ないことがメリットとして挙げられていて、開発チームは2年以内の実用化を目指すとしています。

Q.「飲み薬」や「鼻スプレーワクチン」が開発されていますが、どうお考えですか?

(倉持仁医師)
「こういう新しい期待が持てる前向きな取り組みは非常に大事なことですし、我々の施設でも塩野義製薬の新薬の治験に参加する予定です。出来るだけ早く結果を出して、早く、症状の軽い方に治療が届けられるようになるといいなと思っています。有用性が高まるから非常に頼もしい」

早期の実現化が待たれる「飲み薬」。コロナ収束への切り札となるのでしょうか。

(情報ライブミヤネ屋 2021年9月8日放送)

SHARE
Twitter
facebook
Line

おすすめ記事

記事一覧へ

MMDD日(●)の放送内容

※都合により、番組内容・放送日時が変更される場合があります。ご了承ください。

※地域により放送時間・内容が一部異なります。