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大麻成分に似た合成化合物が入った“大麻グミ”

【独自解説】“大麻グミ” 「人体実験に参加するような危険性」 搬送者続出するその成分は「大麻の数十倍の危険性」

 とある“グミ”を食べた複数の人が体調不良を訴え病院に搬送される問題が相次いでいます。そのグミの袋には、大麻の成分に似せた合成化合物の名前が書かれており、“大麻グミ”と呼ばれています。果たして、“大麻グミ”とはどんなモノなのか?その危険性は?元科捜研で現在は法科学研究センター所長の雨宮正欣氏が解説します。

相次ぐ緊急搬送…「よかったら食べない?」イベントで“大麻グミ”を配る男も

“大麻グミ”で救急搬送

 11月3日、東京・墨田区の押上駅でグミを食べた20代の男女4人が病院に搬送されました。「“大麻グミ”を食べた。具合が悪い」と話していたそうです。翌4日には東京・小金井市の公園で行われた「武蔵野はらっぱ祭り」でグミを食べた10代~50代の男女6人が体調不良を訴え、そのうち5人が嘔吐などの症状で病院に搬送される事態になりました。

「はらっぱ祭り」で男が配っていたのは“大麻グミ”

 この「はらっぱ祭り」で男性が配っていたのが、“大麻グミ”とのことです。捜査関係者によりますと、配っていたのは目が不自由で杖をついた40代男性で、「よかったら食べない?」と言って配っていた、ということです。駆けつけた警察官に男性は「普段から自分で食べているもの。おいしかったから配った」と話したそうです。当日、現場では「グミを配っている人がいるからもらわないで」というアナウンスもあったそうです。

体調不良を訴える人が相次ぐ

 さらに11月15日夜、東京・板橋区のマンションで“大麻グミ”を食べた男女2人が、手のしびれ・動悸を感じ病院に搬送されました。2人は、「グミは東京都内で購入した」と話しているということです。2人が食べた“大麻グミ”は、大阪市の会社が製造・販売したもので、11月3日に墨田区、4日に小金井市で配られていたものとも同じもので、グミの袋には大麻成分に似た合成化合物の名前が書かれていました。大阪市にあるグミの製造・販売会社には11月10日、大阪市が立ち入り調査を行っています。警視庁は、10月以降グミを食べ体調不良になる人を他にも確認していて、このグミの成分鑑定を進めているということです。

「規制が追い付いてないから“違法ではない”」取り締まりが難しい現状

そもそも“大麻グミ”とは?

 “大麻グミ”とは、大麻成分に似た合成化合物が配合されたグミです。グミ以外にも液体やクッキー・チョコレートなどに含まれているケースもあるということで、若者の間ではSNSなどを通じ良く知られているといいます。法科学研究センター所長の雨宮正欣氏によると「今まで規制されていた薬物よりも強い薬物が含まれている可能性があり、自ら人体実験に飛び込んでいくような危険な行為」だということです。

法科学研究センター所長 雨宮正欣氏

Q.この成分は規制されていないのですか?
(法科学研究センター所長 雨宮正欣氏)
「その物質の構造が規制薬物と比べて、水素が1つ多いであるとか、炭素が1つ多いだとかで、法律的には違うものだという扱いになってしまいます。そうしますと『規制薬物ではありません』ということになってしまいます」

Q.たった水素一つで「別の物質で違法ではない」という扱いなのですか?
(雨宮氏)
「ある程度似た構造のものはまとめて規制しないと“イタチごっこ”になるので“包括指定”というものができて、似たような構造のものは規制できるようになりました。しかし、それでも法の網を潜り抜けるものがどんどん出てきていますので、新しいものを指定するまでは無法状態になってしまうという、結局“イタチごっこ”の繰り返しになっています」

Q.“今は”違法ではないということですか?
(雨宮氏)
「合法というのではなく、規制が追い付いていないから“違法ではない”という状態です」

Q.“大麻グミ”はお菓子になるのでしょうか?医薬品になるのでしょうか?
(雨宮氏)
「いわゆる嗜好品になります。大麻の成分をグミに混ぜて簡単に成分を摂れるようにできています。例えばこの成分を注射液にして売ってもだれも買わないと思います。ところが、これをグミという形にしてハードルをうんと下げて、その物質を容易に摂れるように感覚をマヒさせているものです」

Q.医薬品ではないということは、臨床試験などはしていないのでしょうか?
(雨宮氏)
「医薬品であれば数年にわたる臨床実験などを行って、衛生管理も厳しいのですが、食品と同じなので『よく分からないけどとりあえず製品化してみました』で、事故が起きてから『危ないのでやめました』というようなことになっています。本当に人体実験に参加するようなものです」

パッケージに合成化合物と思われる名前

Q.大麻グミのパッケージに成分の名前が書いてありますが、もし体調が悪くなったときに、病院で治療法はすぐ分かるものですか?
(雨宮氏)
「本当にパッケージに書いてある物質が中に入っているかは怪しいところなんです。書いてある物質を信用して治療したら違う治療になってしまう危険性もあります」

Q.食べ物で健康被害が出ているわけですから、食品衛生法など別の法律で取り締まることはできないのでしょうか?
(雨宮氏)
「摂取した人の体調や性別、体格などで異常が出たりでなかったりしますので、そこをどう解釈して取り締まるかということですね」

Q.大麻グミとは訳の分からない危険なものなんですか?
(雨宮氏)
「今回見つかった物質は、大麻の危険な成分の数十倍の効果があるといわれていますので、このような事故が起こるのも頷けてしまいます」

(「情報ライブミヤネ屋」2023年11月16日放送)

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