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【直撃】中国の“試験代行業者”は「バレたことない」「替え玉受験は118万円」TOEIC重要視の日本が狙われる?不正受験サービスが広がる背景
2025年6月17日 UP
TOEICの試験会場で、京都大学大学院生で中国国籍の男が逮捕された事件。“替え玉受験”が発覚し、警察は組織的なカンニングがあったと見て捜査しています。番組は、中国の“試験代行業者”を直撃取材。見えてきた業者の闇とは?中国に詳しい経済ジャーナリスト・浦上早苗さんの解説です。
■TOEIC試験会場で“替え玉受験”発覚 中国国籍の男を逮捕
1970年代に日本人が開発したプロジェクト『TOEIC』は、合否ではなくスコアで評価され、「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能テストにより英語コミュニケーション能力がわかるものです。世界160か国以上、約1万4000の企業・教育機関で利用されていて、2024年の日本でのTOEIC受験者数は約210万5300人でした。
そんなTOEICで2025年5月18日、“替え玉受験”が発覚。きっかけは、TOEIC運営法人が「同じ顔写真の人が以前、違う名前で受験している。英語の試験会場なのに、中国語が聞こえる」と、警察に相談したことでした。
相談を受け、警察官が会場を警戒していたところ、一人の男が「受験票を忘れた」として、予備の受験票に他人の名前を記入。「本当の名前は?」と尋ねられると「なりすましをしました」と話したため、正当な理由がないのに試験会場に侵入したとして、京都大学大学院生で中国国籍の男を建造物侵入の疑いで現行犯逮捕しました。男は、「お金が欲しくてアルバイトを探していた」と容疑を認めたということです。
■学歴主義の中国「日本の大学院は入りやすい」
中国国籍の男は、「『英語の試験を受けろ』と中国語で指示を受けた。駅で偽造学生証を渡してきたのは中国人だった」と供述し、男のマスクには約3~4cmの小型マイクが仕込まれていて、“別の受験者に解答を教える目的”があったとみられています。また、男との関連は不明ですが、同じ会場の受験予定者の約3割が欠席したということで、警視庁は『組織的なカンニング事件』とみて捜査を進めています。
不正の背景について、中国に詳しい経済ジャーナリスト・浦上早苗氏は、「日本の大学を受験する際にTOEICのスコアが重要視されることもあり、受験生にとって高得点は魅力。そのため不正に手を染めてしまう人も現れる」との見解を示しています。
Q.中国は受験戦争が激しいので、TOEICを受けて日本の良い大学に入りたいと思って、不正に手を染めるという背景もありますか?
(浦上氏)
「大学院の入試はTOEICのスコア提出を求めたり、英語の試験をTOEICのスコアで代替したりする所が結構ありますから、恐らくTOEICの不正に手を染めるのは大学院に入りたい人が中心だと思います。実は、TOEICが重要視されるのは日本と韓国だけで、中国では名前も聞かない所もあるぐらいなので、コスパを求めて、大学院に入学するためにTOEICも替え玉でやってしまおうと考える人が、一定数いるのではないでしょうか」
Q.なぜ、そこまでして大学院に行きたいのでしょうか?
(浦上氏)
「中国は就職難で、学歴主義ということもあって、大学院の入学者数がすごく増えています。日本は逆に、少子化で定員割れが続いている大学院もありますから、10年ぐらい前から『日本の大学院は入りやすい』と、かなり言われています」
■1000人以上代行?“試験代行業者”を直撃
中国のSNSで「TOEIC」「得点保証」などと検索すると、「TOEIC800点以上」「日本のオンライン・オフライン、いずれも可」「目標未達、無料」などといった投稿が。
ネット上では、「TOEIC替え玉・カンニング代行・点数保証・安定通過」など、不正受験のサービスを堂々と謳う中国語のサイトも…。
この業者にメッセージを送ると、詳しい話を聞くことができました。業者によると、受験者に写真を送ってもらい、替え玉となる人物を選定するといいます。
-(試験代行業者)
-『オフライン、替え玉受験は5.9万元(約118万円)。まず半額を前払いし、担当の先生をマッチングします。スコア発表後に、残りの半額を支払ってもらいます』
-Q.先生とは誰ですか?替え玉のことですか?
-(試験代行業者)
-『そうです』
-Q.今までに、何人の代行を請け負ってきましたか?
-(試験代行業者)
-『1000人に上ります』
-Q.こんなにたくさんやってきて、試験主催者にバレたことはないですか?
-(試験代行業者)
-『ないですよ。バレたら、やっていけないでしょう』
どこか自信すらうかがわせる言葉…。質問を重ねると、この業者はさらなる内情を包み隠さず明かしました。
-Q.どうやって替え玉をそんなに多く確保しているんですか?
-(試験代行業者)
-『資本ですよ』
-Q.中国国内でも試験代行を行っていますか?
-(試験代行業者)
-『どんな試験でも、中国国内ではやりません』
中国国内では試験の代行をしない…果たして、その理由とは―。
■中国でカンニングは重罪「不正がないよう日本以上に徹底されている」
中国刑法284条の1『組織試験カンニング罪』には、「国家試験において、組織的に不正を行ったものは3年以下の懲役もしくは拘役(短期間の強制労働)もしくは罰金」とあり、情状の悪い場合は7年以下の懲役が科されます。
カンニングの背景として、浦上氏は「中国では全てにおいて性悪説で見ているため、不正がないよう試験会場は厳格に管理されており、カンニングは日本以上に徹底されている」「リスクが低く点が取れる方法があるとSNSでウワサが広まり、今回の事件のようになったのでは」とみています。
(「情報ライブ ミヤネ屋」2025年5月23日放送)


