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【独自解説】“統一教会”5度目の会見に、紀藤弁護士と鈴木エイト氏が『異議あり!』 教団が示す「改革の追加指針」は守られるのか?
2022年10月6日 UP
国が設置した、いわゆる“統一教会”をめぐる問題に対応する相談窓口に寄せられた調査結果について、法務省は9月30日、“統一教会”に関する電話相談の約7割、実に900件以上が、「金銭トラブル」だったことを公表しました。この異例の情報公開について、10月4日、世界平和統一家庭連合・教会改革推進本部の勅使河原秀行本部長が、教団の受け止めや今後の対応、改革の追加指針の説明する会見を行いました。消費者被害や宗教・カルトの法律問題に詳しい、紀藤正樹弁護士と、“統一教会”を20年にわたり取材している、ジャーナリストの鈴木エイト氏が徹底追及します。
“統一教会”に関して異例の情報公開…教団の受け止めは?
9月30日、関係省庁連絡会議が公表した「相談状況の分析」、消費者庁からの「消費生活相談の状況」に関する調査結果について、河野消費者担当相は、「公表することに社会的な公益性があると判断した」と述べ、異例の情報公開に踏み切りました。これについて、教団の受け止めや今後の対応、「改革の追加指針」の説明する会見が10月4日に行われました。
世界平和統一家庭連合の勅使河原本部長は会見の冒頭、「ご本人様、もしくはご家族様が国の相談窓口に相談せざるを得なかったということは、さぞかしその心の中に葛藤があったでしょうし、この間本当に心を悩ませながら時を過ごされたということを思いましただけに、本当に申し訳なく思っております。心からお詫び申し上げます」と述べました。
その後、勅使河原本部長はフリップを使い、教団に対する『金銭トラブル』の相談について、「“統一教会”に関する相談が合計で1317件あり、このうち『金銭トラブル』に関する相談が、919件だったと報告されています。教会がコンプライアンス宣言をした2009年以降に、政府に対する相談があった割合を合計すると35%という数字になり、少なくともに919件の35%である約320件程度が、『金銭トラブル』に関する相談だった、という風に受け止めております」と説明しました。
さらに、「消費者庁のデータでは、消費者センターへの『“統一教会”に関する相談』の1年間の合計件数は、2012年の229件から始まって、2021年は27件ということで、一貫して減り続けています。そして、『霊感商法に関する相談』の1441件中、“統一教会”のものが21件ですから、ざっくり1.9%、ほとんどが当法人とは関係のないものであり、圧倒的に少ないのが実態であるということがわかります。また、2021年の消費者センターへの相談の合計の84万6922件に対して、“統一教会”に関する相談は27件ですから、パーセントで言うと0.003%で、当法人が占める割合というのは極めて低いということが言えるかと思います。ただし、この安倍元首相の銃撃事件以降はマスコミの報道がありますので、数が急速に増えてきているような実情はあります」と述べています。
また、高額だと指摘された献金について、勅使河原本部長は「消費者庁のデータによれば、まず金額がわからないと言っている方が圧倒的に多く、次に多いのが0円のため、恐らく100万以上とか500万以上という献金が、全体の平均値を押し上げているということが想像されます。500万円という献金ですが、宗教で“ご利益”という考え方がありますが、それを得るために500万円以上献金するという方はほとんどないと思います。500万円あれば、ご利益を期待せずとも自分でいい新車を買ったり、欲しい物はだいたい買える金額であります。このレベルの献金が『自分の為』というのはなかなか説明ができないので、理念に共感し、個人の選択において献金をなされている方が、様々な疑問を抱くようになって、『やはりあの時のお金を返してほしい』というような相談ではないかというふうに推察いたします」と述べました。
そして、4つの「改革の追加指針」について説明も。①月収の10分の3(自己申告)を超えると思われる献金を捧げられた場合は、その資金の性質(給料、金融資産、家族の同意の有無など)を記録し、受領証等を発行する。②この記録に関しては、内部監査の対象として教区法務委員会、教会改革推進本部で定期的に記録類の検証を行う。③半年に1回は信徒に対する無記名アンケート調査を行い、「教会改革の方向性」で打ち出している各所の施策案が実行されているかアンケート調査で確認、必要に応じて指導、または処分を行う。④各教会に家庭相談員、各地区に家庭総合相談室を設置して、必要に応じて、組織的に信者家庭への支援を強化する、ということです。
紀藤弁護士「家庭の主婦からも献金させるのか?」 改革の問題点とは
Q.今回の会見を見て、どうお感じになりましたか?
(紀藤正樹弁護士)
「まず、異議があるのは、田中会長が出てこなかったことです。責任のある立場の人が出てこないで、ただ一方的な会見をされても問題が大きいという事と、改革案の中に月収の10分の3を自己申告するというのがありましたが、これはかなり難しいなと思うのは、収入のない家庭の主婦はどうするかというところです。“統一教会”の場合はそういった方がたくさんいらっしゃるんです。こういった人からも献金をさせるのでしょうか?『家庭総合相談室』というようなものを設置すると言っていましたが、以前から“ケア婦人”というのがいて、“ケア婦人”というのは、信条が落ち込んだ人を勇気づけて、献金させる役ですが、そういう人が同じようにケアをする役割を果たしたとしても、結局上手くいかないのではないかなと私は思います」
Q.消費者庁の“統一教会”関連の相談件数は、非常に少ないと会見でおっしゃっていましたが、これはどう考えますか?
(紀藤正樹弁護士)
「“統一教会”は、信者数からの割合を考えていません。全体の消費者件数というのは、日本の人口から見たものなのです。“統一教会”の被害相談というのは、“統一教会”の信者数を前提にしないといけないので、母数がそもそも違うわけです。その上、風化の問題や、相談員が聞き取れているかという問題もあります。“統一教会”とはカウントできていない案件の中にも“統一教会”が相当数紛れ込んでいる可能性があります。被害相談があるわけですから、最初に謝罪されたように、真摯に反省して、どうやって解決するかということを言えばいいと思います。統計値を欺瞞的にみるのはやめて頂きたいなと思います」
Q.山上容疑者の凶行は本当に許されることではないんですが、これをきっかけに相談件数が伸びてきたというのは、事実としてありますね?
(紀藤正樹弁護士)
「報道が大きくなれば、当然、その相談件数が伸びるに決まっています。2021年までを我々は『空白の30年』とも言いますし、風化が激しくなったのはこの20年で、2009年以降、特に激しいですから、それ以降の件数をあげてもよく分かりませんし、そもそも2015年に名称変更していますので、“統一教会”と気付かないで相談されたことも、結構あるんじゃないかというふうに私は思います」
Q.「500万円あれば新車を買うこともできるんだから、500万円も献金するのは宗教的理念に共感したんだ」という解釈がありましたが、どう考えますか?
(紀藤正樹弁護士)
「消費者被害の実情をあまりご存じないのかなと思いました。消費者相談は200万円を平均値で超える被害はほとんどなく、数十万円の相談が多いです。約270万円が平均値になるのは投資被害に匹敵するぐらいの高い数値です。他の被害も含めて、国民生活センター統計をきちんと精査した話ではないなと、こういうところ見ても思います」
鈴木エイト氏「今までやってきたことと全然違う」 教団の発言に矛盾点も
Q.会見を見て、どうお感じになりましたか?
(鈴木エイト氏)
「全体的に被害の矮小化と、自分たちの自己正当化に終始した会見だったなと思いました。当然、報道で掘り起こされたということも当然あると思います。でも、それをなぜ強調するのかと。『報道によって被害者が増えた。あくまで報道が悪い』みたいな、そういう方向に話をもっていきたいのかなと思いました。あとは、指導を徹底するとか、処分をするとかおっしゃっていましたが、ベクトルが逆だなと思います。相変わらず、『献金の指示などは現場の判断であって、自分たちは関係ない』と責任逃れをしている点が非常に悪質だと思います」
Q.教団は今後の方針を守ると思われますか?
(鈴木エイト氏)
「守る、守られないという以前に、今までやってきたことと全然違うことを言っています。教団側が、韓国からの指令で地区の教会や末端の信者に対して、献金の指令を、金額を決めて出しているのに、そういうことを全く認めないまま、現場の判断でやっている前提でずっと話して、その改善策を話していることのおかしさですよね。会見自体が絵空事で、まったく無意味だなと思います」
本当の意味での「教団改革」とは?
Q.質疑応答では、「2009年以前の過度な献金も相談に乗る」とされましたが、実際にお金を返すことはできるのでしょうか?
(紀藤正樹弁護士)
「大きな企業に不祥事が起きたときは本社ビルを売却して負債償却することはよくあることですが、今の日本の“統一教会”が唯一残されている財産は、各教会の本部の土地建物で、そういう所を売却する以外にはもう返す手がないですよね。“統一教会”が過去の被害にどう向き合うか、関連団体をどうするのか。関連団体はたくさんあって、近づかれる側から見たら正体を隠されて勧誘されているわけなので、こういうものをちゃんと整理していくということは口に出ないので、現時点では本当の意味での教団改革をしていないと思います」
(鈴木エイト氏)
「教団の日本のお金は今かなり枯渇していて、数か月もたないと言われていますが、韓国に毎年数百億円送っているお金が韓国ではプールされているので、改革するのであれば、これを韓国から返してもらえばいいと思います。それを被害者の救済に充てればいいだけであって、勅使河原氏は、“普通の団体で例外的に起こっている問題”みたいな言い方をされていますが、この教団の組織構造が、そもそもこういう問題を起こしているのであって、そこを改革しないかぎり、抜本的な改革はできないと思います」
Q.こういった会見にはもう田中会長は出ず、勅使河原本部長が一手に引き受けるのでしょうか?
(紀藤正樹弁護士)
「事実上、過去2回の会見で田中会長は韓国の“統一教会”の信用を失っているということが、明らかだと思います。そのこと自体より、田中会長は少なくとも勅使河原氏より古い信者ですので、“統一教会”の裏事情もご存じなわけです。だからポロポロと本当のことが裏側から出てきます。やはり知っている人が会見に応じて質疑をしなければ、“統一教会”の本当の意味での改革はできないと思います」
Q.記者からの「反社会性が強く疑われている教団が、“政界工作”を続けていくことに不安を持つ国民は多いと思いますが?」という質問に対して、勅使河原本部長は「国民の信頼を得ることが大事」と、激しい反論はされませんでしたね?
(鈴木エイト氏)
「そうでしたね。そもそも、国民の信頼自体がないと思いますが、非常にいい質問をされたと思います。それから、2世の相談にも積極的に乗るようなことをおっしゃっていましたが、そもそもその2世がなぜ人権侵害を受けているかというところが、その教義の中身であったり、教団の組織構造自体の問題であるので、葛藤を抱いている2世はそういうところに相談しないです。そういうところも、根本的に何かがずれていると思います」
(情報ライブ ミヤネ屋 2022年10月4日放送)