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元信者が語る旧・統一教会の実態

【独自解説】元信者が語る“統一教会”の実態 巧妙な勧誘、芽生える仲間意識、厳しい献金ノルマに「達成感」…脱会まで約10年の壮絶体験

 凶行の理由を「宗教団体への恨み」と語っている山上徹也容疑者。捜査関係者によると、山上容疑者の母親のこれまでの献金の総額は1億円に上るとみられています。「世界平和統一家庭連合(旧・統一教会)」はミヤネ屋の取材に対し「5000万円を返金した」ことを明らかにし、田中富広会長は「献金の強要は一切ない」と主張していますが、元信者の証言からは、驚愕の“献金ノルマ”と“家族崩壊への末路”が浮かび上がりました。旧・統一教会に約10年間入信していたという、ジャーナリストの多田文明氏が、“高額献金”の実態や、自ら体験した勧誘の方法などを明かしました。

教団の教え「人間は全員が堕落人間」

旧・統一教会元信者 ジャーナリスト 多田文明氏

Q. 山上容疑者の母親の献金額が1億円に上るということも驚きですが、当時の教団は「富を神様に返す」という教義の中で、特に「土地は悪である」と言われると聞きますが?
(旧・統一教会元信者 ジャーナリスト 多田文明氏)
「教団では、『生きている人間は全員が堕落人間だ。罪を犯した人間だから物よりも下の立場にいるのだ』と言って、『物を、特にお金や土地を神様のもとに返して初めて私たちは神の子になれる、神の国が創れる』と教えられます。教団はどうやって多額のお金をその人から神のもとに捧げるかを考えていて、財産、特に土地はお金になりますので、内部の方でそれを狙って、容疑者の母親にお金を出させるように仕向けていったのだと思います」

Q.お金がなくなって破産して脱会しても、また戻る方も多いのですね?
(多田氏)
「はい。『フラッシュバック』という言い方をするのですが、頭では辞めてはいるのですが、心の中に教団の教えが残っている方が非常に多いのです。私も言われましたが、『統一教会を辞めたら病気や事故にあう』とか、私も参加した合同結婚式でも、『もし結婚を破棄したら地獄に行く』などと言われているので、実際に辞めた後、自分が病気をしたり、ちょっとした事故にあったときに、『教団を辞めたから起こったのではないか』と思ってしまうのです。それでついつい『連絡取らなきゃ』と言って、教団に戻ることがあります」

「バレーボールに来ない?」入信への巧妙な“勧誘”

友人の誘いが入信に…

 多田氏が入信するきっかけは、友人からの誘いだったと言います。1987年、大学4年生の頃に友人を通じて、“統一教会”だと告げられないまま、「バレーボールに来ないか?」と誘われ行ってみると、全員が信者だったということです。バレーボールが終わった後に友人から、「自己啓発の勉強をしているんだけど来てみない?」と誘われ、ビデオを見ながら勉強したというのですが、実はそれが“統一教会”の教義でした。ビデオセンターでビデオを見た後、カウンセリングで感想文を書かされ、少しずつ教義を刷り込まれていったと言います。その後のセミナーで“統一教会”だと言われても、すでに思想が頭の中に入っているため、入信を拒否できない状況になっていて、全財産をささげて献身したということです。

Q.友人からの「バレーボール」の誘いだと、参加するハードルは低いですよね。これはよくあるパターンなのですか?
(多田氏)
「そうです。もともとこの友人はテニスを通じた友達だったので、スポーツが好きだということで、教団の中で私は『バレーボールだと誘える』というふうになっていたのだと思います」

Q.大学4年生という時期に「自己啓発」と言われると心が動きますよね?
(多田氏)
「私は丁度、就職に不安を抱えていたんです。4年生になってこれからどうしようと、当時はマスコミに行きたかったので、もう本来なら動いてなきゃいけない、いろんな知識を集めないといけないなと思いながら、たぶん彼にもそういう話をしていたのかもしれないです。その不安が利用されたのかなと思います」

Q.入信するとき、「おかしい」と思うことはなかったのですか?
(多田氏)
「唯一、あれ?と思ったのは、『聖書の勉強をするサークルだ』と言われたときで、若干の違和感は覚えました。しかし、そのときに向こうは必ず返しの言葉を持っていて、『これからは世界に向けて日本人は生きていかないといけないから、国際情勢も知らないといけない。君、知っている?世界で一番読まれている本は聖書なんだよ。聖書を知っておかないと外国人との交流はできないから、勉強しよう』と。ところがその内容が“統一教会”の教義だったわけです」

Q.“統一教会”だと言われても、入信を拒否できない状況になる期間には個人差があると思いますが、どれくらいの期間、勧誘するのですか?
(多田氏)
「普通の人は2日間のセミナーに行って、その後ライフトレーニングというのが2週間ぐらいあるのですが、その後に“統一教会”だよと言われるケースが多いです」

当時の教団の教え

Q.教義の中でも「恋愛感情は禁止」などは、若者なら反発しそうな気がしますが、そういう感情は浮かばなかったのですか?
(多田氏)
「ビデオを勉強している時、教団側に、『この人はどうやったら統一教会員になるか』『どういうところに悩みを抱えているか』など、情報が全部収集されてしまっているんです。信者になるころには個人情報のリストが出来ているので、もう反発はなかったと思います」

Q.入信すると仲間ができて抜けにくいということもあるのでしょうか?
(多田氏)
「おっしゃるとおりで、入信するといわゆる仲間意識、同じ思想の仲間の中で生きることの素晴らしさというか、感動みたいなものを感じます。みんなで一緒に歌って、神様のもとにこれだけの人やお金を集めるという達成感。そうしたものをどんどん味わっていってしまうので」

Q.下の人たちは仲がいいのでしょうね?
(多田氏)
「そうですね。ひどいときには上から、『献金しなかったら日本が沈没する』とか『地震が起きる』とか言われたりするんです。そんなことを言われたら、『僕たちが一生懸命、日本を救わないといけない』と本気で思って、みんな睡眠時間3時間とか4時間で街頭に行って、人を誘ったり物を売ったりして。下の人たち同士は、苦しい中で食事の時にちょっとしゃべるような小さな楽しみや、教団はスポーツイベントを結構開きますので、一緒にスポーツイベントをやったり、バーベキューをしたり、そういう思い出がすごく残っています」

ターゲットは「アパキンジョ」 厳しいノルマの実態

多田氏が語る「ノルマ」の実態

 7月11日の会見で、「世界平和統一家庭連合」の田中富広会長は「献金は本人の意思に基づいてされる。ノルマという扱いはしていない。破綻を知った上で、さらに献金を願う・要求することはない」と主張しています。それに対し多田氏は「教団内にいると、毎日のように『神の国実現』のための献金が求められた。思想を信じる人ほど、教団の願いに応えようと必死になる。『ノルマがない』という会長の言葉はありえない。“毎月がノルマ”の生活だった」と言います。

Q.毎月ノルマがあったということですが、具体的な金額は言われたのですか?
(多田氏)
「私が居たころは、月初めに出発結団式というものがあって、立場が上の人が『お父様(文鮮明氏)から今回、○○億円のお金を献金するようにと指示が来た。うちのブロックは○○万円献金する。お前たちは一体いくらできるんだ』と言って、地域のブロックごとにノルマが決められていきました」

Q.学生では、献金するお金の余裕はなかったのではないですか?
(多田氏)
「はい。お金のない学生は、『お金のある人を誘ってこい』と言われます。貯金のある人たちをいかに誘うかなのですが、私はいろんな人をとにかく誘っていて、お金のない人を連れてくると、『こんなお金のない人を連れてきてどうするんだ』と怒られたことがあります」

勧誘は「高額の貯蓄がある人を優先的に」

Q.街頭で声をかけて勧誘場所に連れて行き、アンケートで貯蓄額を書かせ、お金を持っている人を優先的に勧誘したということですが、どんな人がターゲットだったのですか?
(多田氏)
「“アパキンジョ”と言って、アパートに住んでいる・勤労している・女性という意味なのですが、“ギンインカンポ”と言う、銀行員の女性・看護婦・保母を指す言葉もあり、そういう人たちがより良いというふうにされていました」

教団のお金集めの手段

 旧・統一教会は、お金集めのために商品を買わせることを「経済」と呼び、高額な商品や珍味、ハンカチに付加価値を付け高額で売っていたといいます。多田氏は「土地を売ったり、カードを作らせたりしたエリアもあった。とにかく一日中お金集めをしていた」ということです。

Q.多田さんも色んな物を売り歩いたのですか?
(多田氏)
「世間で霊感商法が騒がれて、ちょうど終わった頃でしたので壺は売りませんでしたが、教団には着物や指輪などを売るお店があり、そこでイベントを開いたときに、誰かを連れていって売るとか、そのための電話がけをすることはしょっちゅうありました。私がこの中でちょっとおかしいなと思ったのは、ボランティアを語って家を訪問して『このハンカチの代金は、車いすを購入するのに使う』などと言ってハンカチを何千円かで買わせたり、セットにして1万円ぐらいで買わせたりしていたことです。疑問を持ってはいけなかったのですが、『そのお金はどうなるんですか?』と聞くと、『家賃だ』と言われました。教団には実際にボランティア団体はあったのですが、そこにはお金はいかないと内部の人は言っていました」

気付いた“矛盾”、そして脱会へ

多田氏の脱会のきっかけ

 多田氏は1996年ごろに教団を脱会しています。きっかけは、教団に親族も勧誘するように言われたことで、家族に会いに行くと、家族全員に泣かれ、教団の教えがどれほど家族を苦しめてきたのかに気が付いたのだと言います。

Q.家族が泣いて、はっと目が覚めたというところがあったのですか?
(多田氏)
「文鮮明氏が『実家に帰って親族を勧誘しなさい』と言ったので、私は仙台に帰ったんです。仙台の教会で活動して何年か経ったある日、親族がやってきて私と話す場を持ってくれました。私は講義をする立場だったので、彼ら全員を信者にするチャンスだと思って話しましたが、その中で親族がどんな苦労していたかを知ったんです。親族たちは、私が入信していた約10年間、必ず私を教団から取り戻すという思いをずっと持ち続けていました。しかも“統一教会”の教義の内容を全部知っていて、どうやって私に違法な活動をさせないようにするか考えていたと。私は、『教団に入ったら家族は幸せになる』と思っていたのですが、そうではなかった。逆に不幸にして、悲しませていたことが現実だったということにやっと気が付いて、“統一教会”の言う言葉の矛盾というか、理想と現実の矛盾に気付きました」

Q.ご家族の誰かが入信している場合、無理やり引き離すのは逆効果になる可能性もあるのでしょうか?
(多田氏)
「そうですね。私の親も、最初は無理矢理引き離そうしましたが、それは駄目です。それで失敗した後も、私のことを理解しようとして一生懸命やってくれたことにすごく感動しました。私以上に、私を理解しようとしているということですよね。家族の愛が、最終的にはこうした救いにつながっていくんだろうなとは思います」

Q.未だに家族が崩壊して苦しんでいる方もいるかもしれません。経験者として何を言いたいですか?
(多田氏)
「ご家族であれば、まず絶対に教団側には連絡を取らないでください。逆に入信させようとしてきますので。別の第三者に相談をすることは、詐欺を防ぐためにも非常に大事なんですけれども、紀藤弁護士たちがやっているような被害弁護団に連絡を取るとか、理解している人に聞くというのがすごく大事です」

Q.山上容疑者のやったことは決して許されることではないんですが、彼が例えば被害弁護団や多田さんなどに相談をしていれば、こういう凶行は避けられた可能性もあったのでしょうか?
(多田氏)
「おっしゃるとおりです。私は“統一教会”内で、騙して金をとる人たちを見てきました。辞めたときにそれに対して、もちろん憤りもあるけれど、これをもう繰り返してはいけない、こういうのを明かして防がないといけないと思いました。山上容疑者も誰かと話すことで、自分の違う道が見えてきたのではないかと思います」

(情報ライブ ミヤネ屋 2022年7月14日放送)

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