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会見する日本大学・林真理子理事長

【独自解説】“立証は困難”と「聞いた」大学と、「伝えてない」警察 日大アメフト部薬物問題で食い違う主張…空白の12日間は元検事の副学長の甘い判断が原因?

 8月5日、アメフト部の学生が覚醒剤取締法違反などの疑いで逮捕されるなど、騒動の渦中にある日本大学が8日、会見を開きました。そして、会見のあと行われたアメフト部の保護者会では、去年「部員が大麻を吸った」と自己申告したことについて、他の部員や保護者らに伝えていなかったことが分かりました。ほかにも、大学と警察で主張が食い違うなど、すでに様々な問題が浮かび上がっています。果たして大学の対応に問題や違法性はなかったのか?大学ジャーナリストの石渡嶺司氏と元検事の亀井正貴弁護士が解説します。

警察への相談めぐり、大学・警察で食い違う主張

「立証は困難」との回答について、食い違いが

 2022年11月下旬、アメフト部所属の学生1人から「大麻と思われるものを7月頃に吸った」
と自己申告がありました。これを受けて、日本大学アメフト部は警察関係者に相談したといいます。日大の主張は、「本人からの申告のみで物的証拠がなく、使用から約4か月の期間が経過していて大麻かどうか確認ができないので“立証は困難”」と警察関係者から回答があったので、学生に対しては“厳重注意”という対応をしたということです。しかし捜査関係者は、「相談は日大OBの警察官が個人的にされたもので、立証困難などという見解は伝えておらず、警察署に相談するよう促した」と話しています。

大学ジャーナリスト 石渡嶺司氏

Q.大学側の主張と話が食い違っていますよね?
(大学ジャーナリスト 石渡嶺司氏)
「こういった謝罪会見では、事実関係をちゃんと調べたうえで全部話すのが鉄則です。しかし今回、『警察に相談したが立証困難だといわれた』ということが事実でないことがわずか1日で判明したことは問題だと思います」

元検事 亀井正貴弁護士

Q.この対応をどうみますか?
(亀井正貴弁護士)
「内々で済まそうという意図が見えます。そして今回のことはここが分水嶺になっています。例えば『”ブツ“が無ければ事案にはならない、”なあなあ“で終わってしまう』と学生が認識してしまう可能性がある。自己申告をしてきた学生に対して、広がりや入手経路などを厳しく事実調査しておくべきでした。そこの対応を間違えてしまったことが、最初の失敗だと思います」

保護者向け説明会で新たな事実が

 8月8日、会見後に保護者向けの説明会が行われ、澤田副学長らが出席し改めて経緯を説明しました。アメフト部学生が“大麻使用”を自己申告したことについて、保護者から「申告した人がいるということは伝えたのか?」と聞かれると、大学側が 「いえ、伝えていません」「理由としては それが実証されるものではなかったから」と回答。日大は、自己申告した部員がいたことを他の部員・保護者らに伝えていなかったということです。

林理事長・澤田副学長ともに報告を受けず

 この事案について、林真理子日本大学理事長は「最近になって知った。私の方にあがる事案ではないと澤田副学長が認識したと思っている」と話しました。しかしその澤田康広副学長は「今回の調査を始めてから把握した。自分に伝わらなかったことについては、問題があるかもしれないので、今後連絡態勢を整えなければならない。理事長へ報告がなかったことが適切であったか否かは、今後さらに検討する」とコメントしていて、林理事長・澤田副学長ともに報告を受けていなかったということです。

Q.なぜこういう対応になったのでしょう?
(石渡氏)
「下手にアメフト部の中で共有してしまうと、犯人探しが始まってしまうので、部員や保護者に伝えないというのは理解できます。ただ、この件に関しては、アメフト部の方から澤田副学長へ報告を上げる事案だったと思います」

“空白の12日間”の対応について、「容疑を受ける状況になってくる」

林理事長・澤田副学長ともに報告を受けず

 日大の酒井健夫学長は、「7月6日の持ち物検査では、所有者不明の細かい茶葉のようなものが僅かに付着した小さなビニール袋と、内容が不明の容器といった不審物を発見した。発見した時点では、違法な薬物であるという確証がなくヒアリング調査を進めてからまとめて警察に相談しようと考えていた」と話しています。澤田副学長は「発見したものが明らかに大麻であるという風にははっきりとは分からなかった。ただ大麻の疑惑があるという事でカスなのかもしれないと思った。大麻であったのであれば、きちんと学生に自首をさせたいと考えた。大学本部で私の責任において保管した」と話しました。この対応は適切だったかの問いに、林理事長は「はい、(適切だったと)考えております」と答えています。

Q.澤田副学長は元検事ですが、同じ元検事の発言としてどう思いますか?
(亀井氏)
「率直に言って驚きです。大麻の存在について“未必の故意”(結果的に大麻であったとしてもかまわないとの思い)を認めている内容になっています。また、自分の責任で保管したということは、違法薬物かも知れないと認識して所持していたということですから、それ自体が犯罪になりえます。例えば、親が家の中で子供の大麻を見つけて、警察に持っていくまでの短い時間所持するのは正当な所持ですが、これが10日以上になると容疑を受けるような状況になってくると思います」

Q.まずは警察にというのが自然な流れだと思うのですが、今回の行為は隠蔽にはならないのでしょうか?
(亀井弁護士)
「まずは証拠物を警察に提出するのが基本です。しかも所持してはいけない違法薬物であり、かつ重要な証拠物ですので、外形上隠蔽になりかねないと思います。おそらく、澤田副学長は元検事なので『解明してやろう』という目的があったかもしれません。元検事だから警察も何もしないだろうという甘い判断があったかもしれません。また、大麻の場合は覚せい剤などと違って、微量であれば身柄の拘束はなく在宅捜査や不起訴の場合があるので、そういう感覚が残っていたのかもしれません。『大麻のカス』という用語も使われましたが、非常に甘い判断をしたのだと思います」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2023年8月9日放送)

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