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【侮辱罪】「ブタ子」「バケモノ」「ゴミ帰れ」どこで何を言ったらどうなる?法務省が生々しい中傷事例を公表 SNSの登場で厳罰化も、ネット上と日常生活の違いは?
2025年10月25日 UP
著名人に限らず、学校や職場など、個人の身近な人間関係においても多発する誹謗中傷事件。そんな中、実際に適用された中傷事例の一覧が公開されました。違反した場合、1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金などに問われる可能性がある侮辱罪。一体、どのような言動が適用されるのか?科せられた罰金額とは?元検事・亀井正貴弁護士の解説です。
■「金に汚い」「ゴミ女」「バケモノ」ネット上の中傷事例 罰金30万円も
法務省は2025年9月12日、2022年に侮辱罪が厳罰化されてから初めて“3年間の状況”を公表し、生々しい中傷事例と罰金額を掲載しました。今回は、その中の一部を紹介します。
まずは、SNSなどネット上での事例です。
事例①インターネット掲示板で、ある会社の社長について「金に汚い」「お客様を金としか見ていない」と掲載=科料9000円
事例②インターネット掲示板のスレッドに“△△(地名)であくどいやつ”として、「〇〇は学校の女子中の嫌われ者のゴミ女。気付けよ、バーカ。クソキャラ」と掲載=罰金10万円
事例③被害者の容姿がわかる画像を投稿し、「見た目からしてバケモノかよ」と掲載=罰金30万円
Q.科料と罰金の違いは?
(元検事・亀井正貴弁護士)
「金額の違いで、科料は1万円未満、罰金は1万円以上です」
Q.科料や罰金は、“相場”ということですか?
(亀井弁護士)
「一応、法務省が相場を示そうとしていますが、これらは実際の裁判で実際にあった事例が挙げられています。刑事罰なので、あくまで裁判所が『刑罰はこれ』と出して、もし払わなければ国が徴収するか、罰金の場合には留置します。これは被害者が受け取る金額ではなく、罰金として国が徴収する金額です」
Q.被害者には何もないんですか?
(亀井弁護士)
「被害者は別途、損害賠償請求をします。民事の請求です」
Q.事例①が科料9000円、事例②が罰金10万円と、かなり上がっている理由は?
(亀井弁護士)
「恐らく、名誉感情を害された程度の問題だと思います。事例②は、女子学生であれば学校の中が日常生活になるので、そこで晒されることの精神的ショックは大きいとみられます。ですが、会社の社長で『金に汚い』と言われても、そんなに大したことはないので、その差だと思います」
Q.罰金額が高いのは、SNSの拡散性が大きい影響もあるんですか?
(亀井弁護士)
「そうですね。もともと侮辱罪は、あまり適用されたことがないんです。というのも、侮辱罪は不特定もしくは多数である所によって成立するからです。ただ、SNSが流行ることで犯罪が成立することになり、SNSが出てきたから重罰化の傾向にいきました」
Q.SNS=公共の場、という考えなんですね?
(読売テレビ・野村明大解説委員)
「私もテレビに出て発言している以上、批判や時には侮辱的な発言がSNSに出ることがあります。それを見たのが自分ならやり過ごすことができますが、例えば思春期の子どもや、子どもの友だちが見たらどう思うだろうと考えると、SNSの拡散性は大きなポイントだと思います」
Q.SNSは便利ですが、“言葉の凶器”にもなり得るところには注意が必要ですよね?
(元日本テレビ解説委員・小西美穂氏)
「言った側は匿名でつぶやいて3秒で終わりかもしれませんが、言われた側はずっと悲しく悔しくて、寝られなかったり、ストレスが溜まったりします。場合によっては大量に拡散されたり、人が亡くなるケースまで出ていますから、やった側とやられた側の非対称性が本当に問題だと思います」
■日常生活での適用は?証拠保全の仕方も解説
一方、ネット上のみならず、日常生活での侮辱罪の実例も公表されました。
事例①スーパーマーケットで「デブ」「ブタ」と発言=科料9000円
事例②会議室で「おい、ゴミ」「ゴミ野郎」「ゴミ帰れ」と発言=科料9000円
事例③パチンコ店で「お前の顔、汚いな」と発言=科料9900円
事例④駅のホームで「バカ」「バーカ」「バカじゃねぇの」と発言=罰金10万円
事例⑤バスの車内で「アホ」「バカタレ」と発言=罰金10万円
事例⑥ポストに貼った名前シールに「ブタ子」と落書き=罰金10万円
Q.もちろん使ってはいけない言葉ではありますが、この前後に何が起きてこういった発言に至ったかというのは、問題になりますか?
(亀井弁護士)
「問題になります。だから、その事件によって量刑は違ってきます。ですが、法務省としては類型的なところをある程度出して、国民に『何をすればこうなる』という予測可能性を与える必要性があるということです」
Q.罰金に幅がありますが、これも精神的ショックを考慮しているんでしょうか?
(亀井弁護士)
「精神的ショックや被害の大きさ、拡散の度合いなどの伝播性だと思います。一般的にはSNS系は科料より罰金になりがちなんですが、現場の場合は一定限度に狭まっているので、もともとは科料でやっていました。SNSの登場により侮辱罪を重罰化した傾向で、こちらも重罰化はしているわけですが、科料が原則なんだろうと思います」
Q.ネット上なら証拠が残りますが、直接言われた言葉は残りません。訴える場合、証拠等はどうしたら良いですか?
(亀井弁護士)
「例えば、即時に『こう言われた』とメッセージアプリ等に流しておいて、『今、言われました』ということを保存しておく。また、『こういう状況である』ということを写真に撮る、一言ではなく言いっぱなしなら隠し録音をするなどして、証拠保全することが大切です」
(「情報ライブ ミヤネ屋」2025年10月8日放送)


