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猿之助さんの代役は市川團子さんと中村隼人さん

【独自解説】市川猿之助さん「若手を主役に、自分は脇に」独自の育成法 圧巻の演技で魅せた代役2人から見えた歌舞伎にかける思い 専門家が解説

 当初、市川猿之助さん(47)が主演を務めるはずだった舞台は、同じ澤瀉屋一門で市川中車さんの長男・市川團子さん(19)と萬屋の中村隼人さん(29)が代役を務める形となりました。代役の二人は連日圧巻の演技を見せているということです。2人の凄さと、今歌舞伎界が置かれている状況などを歌舞伎評論家・中村達史氏が解説します。

堂々の代役を務めた市川團子さん 鳴りやまない拍手

市川團子 堂々の代役

 明治座の公演を観たリポーターによると、会場はほぼ満員状態で、代役とは思えない素晴らしい圧巻の演技だったということです。場面が変わるごとに大きな拍手が起こり、感動的なストーリーというのも相まって、多くの人が涙していたといいます。セリフだけでなく、舞や殺陣での刀さばきも圧巻で「あっという間に時間がたった」とのことです。クライマックスの宙乗りで不死鳥のように舞う姿には、「澤瀉屋」という掛け声や拍手もずっと続いていたといいます。

歌舞伎評論家 中村達史氏

Q.市川團子さんなどは、ほとんど稽古もできていないと思うのですが、それで大役をこなすというのはすごいですね
(歌舞伎評論家 中村達史氏)
「歌舞伎役者の皆さんは、短い稽古で講演に挑むという状況に慣れています。歌舞伎は、一公演が1か月近く続きますが、一つの興行が終わって数日しか休まず、すぐに次の興行になることがとても多いのです。今回もそういった中で培われた対応力が活きたのだと思います」

Q.宙乗りは急にできるものですか?
(中村氏)
「宙乗りは、役者とスタッフとの連携が大切なので、スタッフの協力もあってうまく行ったのだと思います」

「若手を主役に、自分は脇に」猿之助さん独自の若手育成法 

猿之助さんの若手育成法

 市川猿之助さんは、屋号の垣根を越えて積極的にキャスティングし、若手を育てていく方針だということです。もともと今回の公演の最終日には、猿之助さんと中村隼人さんの役を入れ替えて演じる予定だったそうです。歌舞伎評論家の中村氏によりますと「他の歌舞伎役者さんだと若手役者を主役の次に重要な2番手や3番手の役につける。完全に主役に抜擢して自分が脇に回るという方法を取るのは、猿之助さんだけ」ということです。

Q.猿之助さんは家の名前ではなく、力のある人が主役を務めるべきだと言っていましたね
(中村氏)
「二代目の猿之助の頃からそういう考えがありましたので、それを受け継いでいるのだと思います」

Q.「 澤瀉屋というのは、常に新しいものを作り、伝統を守りながら破壊していかなければならない。会場も満員にしないといけない」という重圧が相当強かったのではないですか?
(中村氏)
「猿之助さんは、チケットの売れる役者でした。“コロナ禍”で客足が苦しく、ベテランの方々も衰えを感じるようになる中、猿之助さんの持つ力というのは大事で、今後も頼りにしていくべきものだったと思います。今回も絶対に復帰して、歌舞伎のために舞台に立ってほしいと思います」

主な10代の歌舞伎役者

 今10代の歌舞伎役者がたくさん出てきています。今回、猿之助さんの代役を務めている市川團子さん(19)。そして10代目松本幸四郎さんの息子の市川染五郎さん(18)。6代目中村勘九郎さんの息子の中村勘太郎さん(12)。13代目市川團十郎さんの息子の市川新之助(10)さんなどがいます。

Q.歌舞伎界も危機感を持って、若手を抜擢したり、スーパー歌舞伎などに漫画を取り入れたり、歌舞伎になじみのない若い世代にも劇場に足を運んでもらおうという試みをしていますよね。
(中村氏)
「若い人にも広げていかないと歌舞伎座が満員にならないという状態があって、それがコロナ禍でより顕著になったというのがあります。新しい観客を入れないといけないというのは、歌舞伎界全体にとっての課題であって、皆さんそれぞれのやり方で取り組んでいます」

Q.歌舞伎は難しいという先入観がありますが、ドタバタのコントのようなものもありますよね?
(中村氏)
「狂言を歌舞伎にしたものや、明治以降に作られた新作だと喜劇もたくさんあります」

市川團子さん“歌舞伎は世の中で一番面白い”猿之助さんに抱く思い

市川團子 歌舞伎への思い

 市川團子さんは、歌舞伎への思いについて「大学生活で歌舞伎以外のものを学ぶと、より一層『ああやっぱり歌舞伎は世の中で一番面白いな』と思うんです。『歌舞伎最高だな』と思いますね」と語っています。また、猿之助さんへの思いについて「僕にとっては憧れの人です。猿之助さんは本当にかっこいいという言葉に尽きます。花道から登場するときに猿之助さんの後ろを歩いていると、その背中がとても大きく感じました」と話していました。

Q.團子さんにとって猿之助さんは実質の師匠として稽古を続けてほしいと思いますが、今後どうなるのでしょう?
(中村氏)
「猿之助さんの今後は、團子さんが将来どうなるかということにも影響すると思いますので、猿之助さんにはぜひ復帰してもらって、その道筋をつけてもらいたいと思っています」

予定されている公演

Q.予定されていた猿之助さんの舞台ですが、ずっと代役でできるものなのでしょうか?
(中村氏)
「6月の公演は古典の演目なので代役もありえます。7月の昼の部の演目は猿翁さんの家の芸を猿之助さんが受け継ぐという形なので、猿之助さんが出られないとなると意味がない部分があります。猿之助さんが出られないのなら、演目差し替えもあり得ます。来年2月の「鬼滅の刃」も主演だけでなくプロデュースもしていますので、演目差し替えも視野に入れて検討していると思います」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2023年5月23日放送)

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