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どうなる?今後の戦況

【独自解説】ウクライナの反転攻勢は「もう始まっている」軍の狙いは「アゾフ海の奪還とクリミア橋攻撃」今後の戦況を専門家が解説

 5月9日の「戦勝記念日」は、第2次大戦で旧ソビエト連邦がナチス・ドイツに勝利したことを祝う記念日です。この日は、ロシア国民の愛国心が高揚する“最も重要な休日”とされ、ロシア国旗やソ連勝利旗の入場、プーチン大統領の演説や軍事パレードが行われ、夜にはモスクワ市の各広場から花火が打ち上げられます。しかし、今年の「戦勝記念日」の行事には、ある変化があったということです。その変化とは何なのか?そして、今後のウクライナとロシアはどうなっていくのか?元産経新聞モスクワ支局長で今年3月にウクライナを現地取材した、大和大学の佐々木正明教授が解説します。

なぜ?パレードで「不滅の連隊」中止

中止となった「不滅の連隊」

 今年の「戦勝記念日」のパレードには、特別軍事作戦に参加した兵士も行進したということですが、独ソ戦で戦死した親族の遺影を掲げ市民が街を行進して追悼する“毎年の恒例行事” 「不滅の連隊」は中止されたということです。ロシア当局は、中止を「安全上の理由」としていますが、アメリカの戦争研究所は「ウクライナ侵攻で死亡したロシア兵の数を隠すため」としています。

元産経新聞モスクワ支局長 大和大学 佐々木正明教授

Q. 2022年はプーチン大統領も父の遺影を持って参加していたということですが、なぜ今年は中止になったのですか?
(元産経新聞モスクワ支局長 大和大学 佐々木正明教授)
「人々は、独ソ戦に参加した祖父や曽祖父の遺影を掲げて『不滅の連隊』を歩くのですが、当然そうした人たちの家族も、ウクライナに行っている可能性があるのです。そうなると、その人たちが家族の遺影を持ってくる恐れがあります。今、ロシア軍は正確な戦死者数を発表していないのですが、ウクライナ侵攻での戦死者の遺影が大量に並ぶとなると、プーチン政権に打撃を与えかねないのです」

いつ始まる?ウクライナの反転攻勢

クレムリンにドローン攻撃

 5月3日、モスクワのクレムリン上空でドローンが撃墜されました。ロシア大統領府は「ドローン攻撃は、キーウ政権によって実行された」「プーチン大統領の命を狙ったテロ行為だ。ロシアは報復する権利がある」と発表しています。対してウクライナ・ゼレンスキー大統領は「我々はプーチンやモスクワを攻撃しない。我々の領土で戦う」と関与を否定しています。

Q.今回のドローンは、ロシアの自作自演説やウクライナの攻撃説もありますが、本当のウクライナの反転攻勢はいつ、どのような形で始まるのでしょうか?
(佐々木教授)
「私は、すでに反転攻勢に入っていると考えています。ロシア軍の石油基地や備蓄倉庫が攻撃されています。ザポリージャ州やクリミア半島での不審な爆発は、反転攻勢の準備だと思います。ウクライナ軍は、西側の最新兵器を使って、ザポリージャ州やヘルソン州を奪回する前の段階です。反転攻勢がいつ始まるかということではなく、もうその動きに入っていると思います」

注目はアゾフ海とクリミア橋

Q.ウクライナに最新鋭の西側兵器が入ってきて、今後の展開はどうなると思いますか?
(佐々木教授)
「今後注目するべき場所は、アゾフ海です。ロシア本国とザポリージャ州・ヘルソン州とをアゾフ海で分断して補給路を断つ。そして、クリミア半島を孤立させるというのが、ウクライナ軍の考えている作戦だと思います。そのためには、まず海の出口をつくるという目標があります。私は、アゾフ海にあるマウリポリ・ベルジャンシクという港を奪還できるかに注目しています。ウクライナとしては、2022年の2月24日のラインまで戻すのが大前提ですが、私がキーウで聞いた情報では、その前の戦闘において、ヘルソン州・ザポリージャ州へのクリミア半島からのロシアの兵站を断つために、その補給路であるクリミア橋を叩くのではないかと言われています。ウクライナ軍が『海まで到達できるのか』『クリミア橋を攻撃するのか』に注目していくと、反転攻勢の優勢・劣勢も分かります」

(情報ライブミヤネ屋2023年5月9日放送)

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