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フジが港氏・大多氏を提訴

【衝撃】フジ前社長らに賠償請求『50億円』の意味は?支払えなければどうなる?日枝氏の責任は?中居氏への訴訟はある?

 2025年8月28日、フジテレビは前社長・港浩一氏と元専務・大多亮氏に対し、50億円の損害賠償を求め提訴しました。なぜ50億円なのか?払えなかったら、どうなるのか?日枝久氏への責任追及や中居正広氏を提訴する可能性は?危機管理の専門家・増沢隆太氏&亀井正貴弁護士のダブル解説です。

■2人が『善管注意義務』を怠ったとして50億円の損害賠償請求

フジが50億円の損害賠償請求

 2023年6月に番組出演タレントとフジテレビ元従業員の間で生じた事案を巡る対応について、前社長・港浩一氏と元専務・大多亮氏が経営陣として果たすべき義務『善管注意義務』を怠ったとして、フジテレビは2人に対し50億円の損害賠償を求め提訴しました。

 2人が怠ったのは、『報告事案の事実関係を調査すること』『専門家的助言を収集し、原因を分析して対策を実行すること』『コンプライアンスやリスク管理などの内規に従い対策チームを設置すること』とされ、フジテレビに“損害”を与えたとされています。

危機管理の専門家・増沢隆太氏

Q.『善管注意義務』とは、どういう義務ですか?
(危機管理の専門家・増沢隆太氏)
「“組織の管理者が組織に損害を与えてはいけない”という、ざっくりとした概念と考えていただいていいと思います。『役職が就くと責任がある』ということで、ビジネスにおいてはよく使う言葉です。ただ、何をしたらダメという決まりがあるわけではなく、網羅的な概念です」

亀井正貴弁護士

Q.『善管注意義務』は、怠ったとされる3つの事柄全てにかかりますか?
(亀井正貴弁護士)
「全部にかかります。要するに経営を委託するので、経営を推進するにあたって、著しい過失ではなくても責任を負っていきます。今回の場合は、それぞれが責任違反になります。一番大きなポイントは、“こういう問題が起きたらコンプライアンス部に引き継ぐ”ということです。最終的には、ここに行きつきます」

トラブルを巡る対応

 2023年8月、港氏・大多氏の2人は、中居氏によるトラブルの報告を受けました。しかし、「プライベートにおける男女トラブル」の事案と認識し、事案の発生当初、コンプライアンス推進室への報告・共有を行わず、産業医などからの報告や意見を聞く機会もなかったということです。

 また、中居氏に対し事実関係の調査を行わず、番組出演を継続しました。2024年12月の報道後の2025年1月に港氏が一部メディア限定の会見を開き、その10日後に10時間超の“やり直し”会見を開いています。

Q.一番の問題は、どこにありますか?
(増沢氏)
「初動対応を間違ったことです。プライベートにおける関係だと矮小化し、事件を大事にしなかったという、“今の感覚”にアップデートできていなかったことが一番の発端です」

■損害額は約453億円で、なぜ50億円?支払える?

なぜ50億円?

 フジテレビは、2025年6月30日までに約453億円の損害を被ったとしていて、主にスポンサー料とみられています。亀井弁護士によると、「法律上は港氏と大多氏が等しく50億円の責任を負う。内部的には社長という立場のほうが責任を強く問われる傾向にあるが、2人を同列に扱っているので、どちらかが軽くなることはない」ということです。

Q.なぜ50億円なのでしょうか?
(亀井弁護士)
「損害額とされる400数十億円のうち、50億円を請求する意味は何なのかという問題です。株主に対する関係からすると、認められる損害賠償は請求しておかないと、現経営陣の責任を問われるわけです。かといって全額請求すると、裁判所に納める収入印紙だけで5000万円近く必要になってしまうので、現実的な数字を見ていったところで50億円だということです」

Q.どちらかが軽くなることはないんですね?
(亀井弁護士)
「連帯責任なので、認められたら各自が50億円の支払い義務を負います。ただ、過失の割合が、一方が7割で一方が3割だったら、後から内部調整します。内部の問題と、債権者に対する外部の問題は違うということです」

Q.株主の代表訴訟も行われていますが、株主が訴えるときに、裁判所は株価の影響を考慮しますか?
(亀井弁護士)
「今回の株主の代表訴訟は、会社に損害を与えた時点における損害を補填しているので、その後の株価の変動は関係ありません。今、代表訴訟でやっているのは、会社に与えた損害を、会社がしないから自分たちで回収するというものです」

支払えなければ?

 亀井弁護士によると、「払える・払えないは関係なく、個人でも50億円の賠償が命じられることはある」ということです。考えられる可能性として、『和解により賠償額を減らす』『役員保険に加入していれば負担が減る(40~50億円補填されるケースも)』『自己破産』があります。

Q.『役員保険』というものがあるんですね?
(亀井弁護士)
「今、取締役の善管注意義務違反について厳しい時代に入ってきていて、大企業だと巨額の賠償が認められる可能性がありますから、役員保険に加入する人が増えてきています」

Q.役員保険では代用できないようなケースはありますか?
(亀井弁護士)
「善管注意義務違反は、程度はともかく、認められた以上は支払い義務が発生します。保険会社側の顧問弁護士も、善管注意義務違反があるかどうか、判決と同じような精査をします。過失の軽重はあまり問わず、重過失でも軽過失でも、善管注意義務違反であれば支払い義務が発生します」

■日枝氏と中居氏へ責任は問えるのか?

日枝氏の責任は?

 1961年にフジテレビへ入社した日枝久氏(87)は、1983年~2017年まで40年以上の間、取締役として長年トップに君臨し続けましたが、トラブル後に退任しています。そんな日枝氏への責任を問う声も一部からは上がっていますが、増沢氏によると「多数いる取締役の一人である日枝氏の責任を問うのは難しい」ということです。

(増沢氏)
「日枝氏は影響力がありましたが、個別事案である不適切な関係について、どこまで知っていたかを説明・証明するのは、なかなか難しいのではないでしょうか。あくまで立場上は取締役の1人であり、日枝氏に大きな責任を問うのは難しいのではないかなと考えています」

(亀井弁護士)
「日枝氏は、取締役としては本件に関わっていないので、本件に関する責任は難しいと思います。こういう体制を作った、20年前の日枝氏に対する責任はあるかもしれませんが、それは時効で消えているわけです。現在は直接影響しておらず、あくまで“影の影響力”なので、法律上は責任を追及することができません。今回の件については、そもそも関与していないので、難しいでしょう」

中居氏への賠償請求は?

Q.中居氏へ賠償請求をする可能性はありますか?
(亀井弁護士)
「可能性はありますが、法的には難しいところもあります。中居氏が責任を負うとすれば、『不法行為責任』か『契約責任』の2つしかありません。『不法行為責任』は、今回被害女性とされる人に損害があっても、それは被害女性との直接の問題なので、そのことによって会社が損害を負うわけではありません。会社の間接損害になるので、認められることはまずないと思います。責任が認められるとしたら、フジテレビと中居氏の間に『契約責任』があるかどうかです。例えば、『不祥事を起こしません』というようなことが契約に明記されていれば、それに違反することになるので、それと因果関係がある損害は賠償する義務を負うことになります。フジテレビと中居氏との直接契約があるかどうかがポイントです」

Q.『不祥事を起こしません』という契約があるのですか?
(亀井弁護士)
「芸能プロダクションとタレントの間では、『不祥事を起こさない』と契約に明記することもありますが、テレビ局とタレントの間で結ぶことは一般的にはないと思うので、法的構成は難しいというのが私の感覚です」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2025年8月29日放送)

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