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消費者トラブルが急増

【独自解説】『8人に1人が被害者』増える消費者トラブル いま狙われている「高齢者の3K」、弱った心理につけこむ悪徳業者の実際の手口とは

 急増している消費者トラブル。いま狙われているのが「3K」と呼ばれる特徴を持った高齢者たちです。どのような事案が増加しているのか?そして、被害に遭ったときの対処法は?消費者トラブルに詳しい弁護士・荒井哲朗氏の解説です。

20代よりも増加 SNSで狙われる高齢者

SNSに関連する被害相談

 6月に政府が発表した「消費者白書」によると、2022年の消費者被害・トラブルの推計は既支払額・約6兆5000億円、件数・約1619万件で、約8人に1人がトラブルに巻き込まれている計算になります。そして、SNSに関するトラブルで最多となったのが、50代でした。50代の被害相談件数が20代を上回るのは、初めてだということです。

弁護士・荒井哲朗氏

Q.50代が一番多いのは、SNSの使い方がよく分かっていないからですか?
(弁護士・荒井哲朗氏)
「分からないというよりも、SNSが広まって、利用する人が多くなっているのだと思います。被害が50代に増えている理由は、業者側がお金に余裕のある、いわゆる”購買力がある層”に対する広告を入り口にする手法を取っているからだと思います」

ネット通販でよくみられる『定期購入』トラブル

 それに伴い、ネット通販における『定期購入』トラブルも増えていて、下記のような相談が寄せられています。
・『本来は5000円だが、500円でお試し購入できる』という商品を買い、しばらくすると2回目が届いたので定期購入だと知り、解約しようとしても電話がつながらない
・定期購入だと知った上で商品を申し込んだが、広告には「いつでも解約可能」と書かれていたにもかかわらず、解約しようとしたら「6回購入が条件だ」と言われ解約できない

Q.「6回購入が条件」などは、広告に小さく書いてあるのですか?
(荒井氏)
「書いてある場合もありますが、例えば『こちらの商品もどうですか?』と書かれたボタンをクリックしてページを進めてしまうと、もう元のページには戻れない仕様だとか、いろいろなケースがあり、『解約できない』とか『条件が違う』というトラブルに繋がっています」

有名デパートの名前を堂々と騙ることも

 さらに、偽サイトも横行していて、SNSで“有名デパートの広告”を見て商品を注文しても、商品が届かなかったり、違う商品が届いたりといったトラブルも増えています。

Q.有名デパートの名前を堂々と騙っているのですか?
(荒井氏)
「騙っています。こうなってくると消費者被害というより、ただの犯罪だと思いますが、平気で騙っていて、僕の所にも頻繁にメールが来ます」

狙われる高齢者、特徴は「孤独」「金」「健康」の『3K』

高齢者の『3K』とは

 荒井氏によると、狙われる高齢者の特徴は、「孤独」「金」「健康」という『3K』があるといいます。話し相手がおらず寂しい。老後の資金を増やしたい。そして健康でいたい、といったことを考える高齢者に、悪徳業者はつけ込んできます。「国民生活センター」には、こういった高齢者がターゲットになったさまざまな種類のトラブル相談が寄せられています。

“当選”した無料バスツアーで高額被害

 例えば、『無料バスツアーで販売勧誘された』ケースです。

 国民生活センターの資料によると、ある70代の女性が無料バスツアーに当選したというハガキを受け取り、心当たりはなかったものの、「無料だから」と参加しました。すると、ツアー中に立ち寄った敷物工場で60万円のシーツを勧められ、バスの出発時間が迫る中で強く迫られて断り切れず、慌てて契約してしまいました。

 このケースのポイントは、「その場の空気にのまれたり、旅という非日常の中で気分が高揚しているケースもあるので、冷静に見極めが必要」で、荒井氏によると、「長時間、同じ場所に滞在していて、何も買わないと居心地が悪くなり、つい買ってしまうケースもある」といいます。

Q.無料で参加しているので、「何か買わないと悪いのではないか」という心理になってしまうのですか?
(荒井氏)
「それもありますが、業者としては、ターゲットを閉鎖された販売勧誘空間に連れていきたいわけです。そのために『無料』や『当選』など特別感を演出して、連れ出します。正に『タダより高いものはない』だと思います」

格安クリーニングで“100倍”の請求

 また、80代女性は、格安だったはずの「エアコン・換気扇クリーニング」で被害に遭いました。

 ある日、クリーニング業者から家に電話がかかってきて、「お試し価格の3000円でクリーニングサービスを行っています」と言われました。「3000円なら」と女性は依頼することにしましたが、家に来た作業員に“汚れが付きにくくなるコーティング”を勧められます。最初は断ったものの、作業員に強く勧められて断り切れず、さらに風呂場や洗面台など頼んでもいない場所にまで作業は及び、最終的には、当初提示されていた金額の100倍にあたる30万円を請求されました。

 このケースのポイントは、「広告の料金で作業できるとは限らない」「追加料金が発生しないか確認が必要」だということで、荒井氏は、「悪い業者の場合、家に入られて生活状況を把握されることが、一番怖い」と警鐘を鳴らします。

Q.当初3000円と言われていたのに、勝手にされたコーティングも含めて30万円と言われたら、払わざるを得ないのですか?
(荒井氏)
「場合にもよりますが、契約は口頭でも成立しますので、『こうしておきます』と言われたのに対し『お願いします』と言ってしまうと、必ずしも料金の合意を得ていなくても、契約が成立するということはあり得ます。自分が頼もうとしていたことと違うことを提案された場合には、即断しないことが大切です」

Q.「悪い業者に家に入られると怖い」とは、どういうことですか?
(荒井氏)
「家に入られてしまうと、『財産の状況』『親族らとの交流状況』『家にある郵便物』『どんな電話がどんな頻度でかかってくるのか』『高額な商品がどの程度あるのか』など全ての情報を把握されてしまい、『このターゲットをどこまで追いつめても大丈夫なのか』『どういう勧誘に弱いのか』『助けてくれる人はいないか』という判断が容易にできてしまいますので、非常に怖く、危険です」

「自宅売却」でもトラブル

 さらに規模が大きい話になると、自宅売却にも注意が必要だといいます。

 ある日、マンションに住む高齢女性のもとに不動産業者が訪ねてきて、「自宅を1000万円で買い取ります。その後は家賃15万円で住めて、管理費や修繕費などはかかりません」と言ってきました。渋る女性に業者は、「早く決めないと売れなくなる」などと長時間に及ぶ勧誘をし、女性は契約してしまいます。しかし、契約書にサインした後、女性は「やっぱり15万円という高額な家賃を払えないので、契約をやめたい」と業者に伝えると、「売ると一度言ったものは解約できません」と言われました。

 実は、「消費者が不動産業者に自宅を売却する場合、クーリングオフができない」というルールがあるのです。

不動産売買に関する注意点

 荒井氏は、「向こうから持ち掛けられた勧誘は『何であろうと断る』習慣を。特に、生活の基盤を根こそぎ奪われる可能性のある『自宅の売買』には要警戒」だと警鐘を鳴らします。

おかしいと思ったら、いち早く「消費者ホットライン」

クーリングオフ制度

 「クーリングオフ」とは、一定期間であれば無条件で契約解除できるという制度です。一定期間とは、訪問販売・電話勧誘販売などは8日間、連鎖販売取引(マルチ商法)・業務提供誘引販売取引(内職商法)は20日間です。

まずは「消費者ホットラインに電話を」

 しかし、通信販売にはクーリングオフの制度がないので、返品のルールを事前にしっかり確認するなど、注意が必要です。荒井氏は、「『おかしい』と思ったら、まずは相談を。いち早く、消費者ホットライン『188』に電話し、事実を正確に伝えることが大切」だと話しています。

Q.188に電話をすれば、専門家がいるということですか?
(荒井氏)
「そうです。インターネットで調べる時間があるなら、すぐに電話をするべきだと思います。あと、『クーリングオフできる・できない』と『被害回復ができる・できない』は別の問題ですので、自分で判断することは避けるべきだと思います」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2023年7月5日放送)

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