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日大・林真理子理事長

「うみを出し切る」はずの日大、9か月前から情報提供あった…薬物発見後も警察相談まで2週間、元マトリ捜査1課長が指摘「尿中から覚醒剤出る約12日間、“置いていた”」

 日本大学・アメリカンフットボール部の寮で大麻や覚醒剤が見つかった事件で、8月5日に21歳の部員が逮捕され、部は無期限活動停止処分になりましたが、学内調査で大学側が薬物らしき錠剤などを見つけてから警察に相談するまでに、約2週間のタイムラグがあることが分かっています。さらに、2022年10月には部員の保護者から「調査してほしい」との依頼があったことも判明。なぜ、すぐに調査しなかったのか?そして、タイムラグの理由は?元厚労省麻薬取締部捜査第1課長・廣畑徹氏、大学ジャーナリスト・石渡嶺司氏のダブル解説です。

部員逮捕で無期限活動停止処分…海外を中心に流通する「錠剤の覚醒剤」とは?

日大アメフト部「無期限活動停止処分」

 8月5日、日大・アメフト部員の北畠成文(きたばたけのりやす)容疑者(21)が覚醒剤取締法違反の疑いなどで逮捕されました。アメフト部の寮で7月6日、「覚醒剤の成分が入った錠剤」約0.198gと「乾燥大麻」約0.019gを所持した疑いが持たれています。容疑者は逮捕前、任意の事情聴取に対し、「自分のものだ」などと話していたということで、警視庁は「個人で使用する目的で保管していた」とみて、入手ルートなどを調べています。

 生徒の逮捕を受け日大は、8月5日からアメリカンフットボール部の無期限活動停止処分を決定。「大学を挙げて、原因究明と再発防止に向けて、全力で取り組んでまいります。薬物使用の有害性・危険性・反社会性は明らかであり、厳正に対処する所存です」としています。

元厚労省麻薬取締部 捜査第1課長・廣畑徹氏

Q.「錠剤の覚醒剤」というのはあまり聞き慣れないのですが、売っているのですか?
(元厚労省麻薬取締部 捜査第1課長・廣畑徹氏)
「他国、例えばタイなどでは、たくさん流通しています。今回見つかった錠剤はそれかもしれないし、新種かもしれません」

錠剤の覚醒剤は「気軽に摂取してしまう」

 元埼玉県警科学捜査研究所・雨宮正欣氏によると、大麻は「気軽に乱用してしまうことで、薬物使用の心理的ハードルが下がって、興味本位で強い薬物に手を出してしまう可能性がある」、錠剤の覚醒剤は「粉末を溶かして注射する覚醒剤と比べて、注射痕が残らないため、気軽に摂取してしまう。薬物に手を出して間もない人が、よく使用する」ということです。

薬物発見から警察相談まで2週間近くタイムラグ…“尿検査対策”の隠蔽か?

逮捕巡る経緯に不可解な”時間差“

 今回の家宅捜索までの流れには、疑問点が指摘されています。発覚のきっかけとなった匿名からの情報提供を受け、日大は監督・コーチ・退部者を含む部員全員への聞き取りや、大学関係者がアメフト部の寮を立ち入り調査するなどの学内調査を行いました。そして7月6日、大学側はアメフト部寮内で「植物片」と「錠剤」を発見しましたが、警察に相談し薬物を押収鑑定されたのは19日で、そこには約2週間のタイムラグが存在します。

大麻や覚せい剤所持で日大側にも「犯罪性」

 この疑問点について弁護士の亀井正貴氏は、「大麻や覚醒剤は、所持しているだけで犯罪性が疑われる。学内で発見してから警察に提出するまでの間、日大側が所持していたら、日大側にもも問題が生じる」として、「場合によっては隠蔽を疑われる恐れもある」と指摘しています。

Q.なぜ、約2週間もかかったとみていますか?
(廣畑氏)
「尿中から大麻の代謝物が出るのは大体2~3日で、覚醒剤の場合は10~12日ぐらいです。私は捜査官として、“その期間、置いておいた”と思いました。つまり、尿検査をしても、もう出ないということです」

大学ジャーナリスト・石渡嶺司氏

(大学ジャーナリスト・石渡嶺司氏)
「大学は捜査機関ではないので、植物片と錠剤を見ても、すぐに薬物だと判断はできなかったかもしれません。ただし、『疑わしいものがあれば、すぐに連絡する』というのが一般常識です。約2週間も空いてしまったことには、合理的な説明がつきません。“隠蔽体質”と疑われても仕方がない事案かなと思います」

2022年から「大麻情報」把握か?

 さらに、日大側が“大麻情報”を2022年から把握していたのではないか、という話も出ています。捜査関係者への取材によると、日大アメフト部の保護者が2022年10月、「寮で部員が大麻を使用している」との情報をアメフト部の指導者に伝えた上で、「調査をしてほしい」と求めていたことがわかりました。同様の情報提供は2022年から警視庁にもありましたが、当時の捜査では違法薬物の所持は確認できませんでした。警視庁は大学側に適切な対応を求めたほか、2022年12月にはアメフト部員らを対象に「薬物乱用を防止する講義」も行ったということです。しかし、その後も同様の情報提供があり、警視庁が実態調査をするよう求めたところ、2023年7月6日になって大学が寮の調査を行いました。

Q.2022年10月の段階で、アメフト部の寮内の調査や聞き取りは、きちんと行われていたのでしょうか?
(石渡氏)
「詳しいことは今後明らかになると思いますが、現時点では、そこまで詳しい調査は実施していなかった、聞き取り調査程度に終わったとみられています」

「後始末に明け暮れる一年」初の女性理事長・林真理子理事長の改革

林理事長「うみを出し切る」

 林真理子理事長が日大の理事長に就任したのは、2022年7月のことでした。女性理事長は日大史上初のことで、林理事長就任後には、元はゼロだった女性理事の数が全理事の3分の1に当たる8人に増えるなど、改革を進めてきました。2023年7月11日、理事長就任1年の会見では、「後始末に明け暮れる一年だった。不正の洗い出しを進める調査委員会の最終報告が2023年10月に予定されており、うみを出し切る」と語っていました。

林真理子理事長、発言に“食い違い”

 しかし今回、林真理子理事長の発言には“食い違い”が生じています。林理事長は8月2日、「私どもは隠し立て一切する気はないですし、すぐ警察に届けています」と発言しました。ただ実際は、大学側が錠剤などを発見したのが7月6日で、警視庁に連絡したのは19日と、約2週間のタイムラグがあります。また、「違法な薬物が見つかったということは、一切ございません」と発言していましたが、その翌日である8月3日にはテレビ番組の取材に対し、「私が『一切ない』と言ったのは、不法な薬物が今のところ見つかっていないという意味です」と、発言を訂正しました。

Q.林理事長には全く情報が上がっていなかったのでしょうか?
(石渡氏)
「そうですね。林理事長の性格からして、7月6日の寮の調査で疑わしい物が見つかったということであれば、8月2日の会見でも、ちゃんとお話しされていたはずです。それを言わなかったということは、どこかで情報の目詰まりを起こしていた可能性が高いとみています」

「日本大学新聞」見出しにも変化

Q.林理事長は日大を改革するためにいろんなことをやってこられた方ですが、情報の目詰まりを起こしていたとすれば、まだ旧態依然とした体質、日大の悪い体制が残っているということですか?
(石渡氏)
「林理事長の改革路線はかなり進んでいて、風通しは良くなってきています。例えば、『日本大学新聞』という学生新聞の見出しに、日大のブランドイメージについて『学外から厳しい評価』と書いても良いと許可するなど、変わってきています。これは、以前の田中理事長体制のときには、絶対に考えられなかったことです。ただ、旧態依然とした体質、“隠れ田中派”的な職員が一定数残っていて、林理事長の足を引っ張るためにあえて情報を正しく伝えなかった可能性も考えられます」

林理事長、会見で何を話す?

Q.真面目にアメフトに打ち込んでいた部員たちや日大の生徒たちにとっては、大ダメージですよね?
(石渡氏)
「はい、真面目に取り組んできた部員たちにしてみれば、裏切られた気持ちだと思います。ただし、これが個人の犯罪なのか、他の部員も含めての組織的な話なのかというのは、今後の解明が待たれます。8日には林理事長が会見予定ですが、誰が何を知っていたのか、どこで情報の目詰まりを起こしたのか、なぜ大麻を約2週間も保管してしまったのか、そのあたりの真相を明らかにしてほしいと思います」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2023年8月4日・8月7日放送)

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