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【劇的】“ダサい”広告で国際交流⁉廃線危機の銚子電鉄×財政危機のナウル共和国 パクりから生まれた異色コラボの裏側
2025年8月31日 UP
千葉・銚子市の先端を走るローカル線・銚子電鉄に、“ナウル共和国駅”が誕生しました。コラボのきっかけは、SNSに投稿された“ダサダサ広告”だというのです。その再現ドラマに銚子電鉄の社長自らが出演し、迫真の演技を披露してくれました。さらに、公式ゆるキャラ・ナウルくんにも独自インタビュー。崖っぷち同士の友情が生んだ国際交流の裏側を追いました。
■廃線危機のローカル線に“ナウル共和国駅”が誕生⁉
東京から東へ約100キロ。JRがカバーできない千葉・銚子市の先端を走る、たった10駅の小さなローカル線が『銚子電鉄』です。自らつけた愛称は、『犬吠(いぬぼう)崖っぷちライン』。
銚子電鉄は創業100年を超えていますが、マイカーの普及などで乗客が激減し、慢性的な赤字経営でした。しかし、「売れるものは何でも売る」として自社で作った『ぬれせんべい』が大ヒット。運賃収入を大きく上回る経営の柱に成長させました。さらに、経営状況がまずいことからつけられた自虐ネーミングの『まずい棒』も大ウケし、2021年度には黒字に転じたのです。
しかし、2024年は再び赤字に転落。そんな廃線の危機と背中合わせの超崖っぷちローカル線が、驚きの策に打って出ました。それが、銚子電鉄・笠上黒生(かさがみくろはえ)駅の看板です。千葉県なのに、そこにはなぜか『ナウル共和国』の文字が…!
南太平洋に浮かぶ国・ナウル共和国は、日本からはるか5000キロ。国土は東京・品川区とほぼ同じ広さで、人口は約1万2000人という、世界で3番目に小さい国です。かつてリン鉱石の輸出で大儲けしましたが、資源が枯渇。リンが取れなくなったナウルの財政は一気に悪化し、財政破綻の危機に陥りました。
廃線危機と財政危機―崖っぷち同士が出会って生まれたのが、銚子電鉄・ナウル共和国駅です。
(銚子電鉄・竹本勝紀社長)
「SNSを通じた交流の延長線上で、駅名ネーミングライツという契約に至りました。まさか国名を冠したネーミングライツは恐らく全国初ではないかと思いますが、私どもも非常に嬉しく、光栄に思っています」
■きっかけは“ダサダサ系広告” 劇的な出会いを社長自らが再現
始まりは、銚子電鉄がSNSに投稿した、この画像でした。
(銚子電鉄の投稿)
『開業102周年の広告を作りたかったのですが、予算が厳しいので、社員が1時間で作りました』
この投稿の翌日…。
(銚子電鉄・SNS担当 馬上玲美さん)
「ああ!社長!ナウル共和国が…マネしてます!」
(竹本社長)
「な、な、なんと⁉」
これが、ナウル共和国が公開した、問題のSNS投稿です。
(ナウル共和国の投稿)
『万博パビリオンの広告を作りたかったのですが、予算が厳しいので、パソコンが苦手な職員が3時間かけて作りました』
(竹本社長)
「類似投稿だ…。早速、政府観光局に電話をお願いします」
(馬上さん)
「でんわ(善は)急げですね」
(竹本社長)
「特急で!お願いします」
頼んでもないのに、とんでもないおやじギャグが飛び出してきたので見逃したのかもしれませんが、要約すると「馬上さんが作ったダサダサ系ポスターを、独立国家・ナウル共和国がパクった」ってことですか⁉
■公式ゆるキャラが堂々“パクり”宣言!銚子電鉄にアプローチしたワケは?
そもそもナウル共和国政府観光局のSNSは、ネット界隈では超有名です。「Q.マクドナルドありますか? A.隣の国にある」などの自虐系の発信力が人気を博し、今やフォロワー数54万人の怪物SNSとなっています。
そんな“ナウルの顔”、公式ゆるキャラのナウルくんがテレビ番組に初登場し、取材に応じてくれました。
(ナウルくん)
「こんにちはー、ナウルくんです。銚子電鉄のチラシをパクりました!」
Q.一体なぜ、銚子電鉄にアプローチしたの?
(ナウルくん)
「ナウルも、あの…産業が少なくて、あと、ちょっと人口も少ないとか、あの、なんか、その…小ささっていうところで似ていて、大変さで気になってました」
ナウルくんの行動は早く、2日後には自ら銚子電鉄を訪問し、社長とのトップ会談で“ナウル共和国駅”誕生が実現しました。さらに、早速コラボグッズの缶バッジ(980円・税込み)を発表。ナウル共和国公式ショップ『ナウル屋』で売りだし、すでに50セット売れているということです。ナウルくんは、「銚子電鉄の名前を、ナウルの大臣はみんな知っていると思う」と話していました。
銚子電鉄が“パクり広告”の投稿に対し「銚子電鉄・犬吠崖っぷちラインはナウルに入りますか?」と反応すると、ナウル共和国が「安心して下さい。ちょうど入ってます」と返すなど、SNSをきっかけに親交を深めている銚子電鉄とナウル共和国。年内には『日本ナウル友好記念博物館』も完成予定だということです。
(銚子電鉄のSNS担当・馬上さん)
「102周年のダサいポスターから、こんな国とのつながりになるとは全く想像してなかったので、ビックリですけれど、良いことしかないなって思います」
ちなみに、“ナウル共和国駅”になるまでは違う駅名で、スカルプケア商品を扱う会社がネーミングライツを取得し、“髪毛黒生駅(元は笠上黒生駅)”となっていました。また、隣駅の本銚子駅は“上り調子 本銚子 京王京葉東和薬品”など、他の駅でもネーミングライツ契約が行われています。
「売れるものは何でも売る」というたくましい銚子電鉄とナウル共和国のコラボは、まさに“崖っぷちは崖っぷちを知る”―この先、一体どこに向かうのでしょうか。
(「情報ライブ ミヤネ屋」2025年8月15日放送)


