記事

門川市長「10年以内に財政破綻の可能性」

【独自解説】借金8400億円の京都市、373億円で新庁舎整備も年6億円の家賃発生、数百万円かけ新キャラやPR動画制作も…財政再建は成し得るのか?

 “実質的な借金残高”が約8420億円と、深刻な財政難に陥っている京都市で、また新たな問題です。373億円をかけて整備された新庁舎で“部屋不足”が発覚し、そのスペース確保のために、年間約6億円の賃料が発生することが明らかになりました。さらに、数百万円をかけた新たなキャラクターやPR動画の作製も行っています。果たして京都市は、収支改善が実現できるのでしょうか?京都市の財政に詳しい大正大学客員教授の村山祥栄氏と共に、検証します。

新庁舎にスペース不足発覚、年6億円の賃料発生

京都市の一般会計収支の推移

 2021年8月、京都市の門川大作市長は、「10年以内に京都市の財政は破綻しかねません」と深刻な財政状況を発表しました。その後、京都市は収支改善計画を実行。一般会計収支の推移を見ると、一見黒字になっています。しかしその裏には、将来の借金返済のための基金を当てて水増ししているという実態があります。村山氏は、「2021年度は、新型コロナ関連の『地方財政対策資金』が入るなどイレギュラーな一年だったので、依然危機的状況が続いている。将来の借金返済のための基金などが含まれる、『特別の財源対策』の使用は“禁じ手”だ」と警鐘を鳴らしています。

“税増収”に限界のワケ

 京都市は、固定資産税がかからない神社や寺などの宗教法人が多く、人口の1割が大学生で、さらに高齢者も多いため、納税義務のある人の割合が2021年度で43.5%と、政令指定都市で一番低くなっています。さらに、“景観保全”のために高層マンションが立てられないため、固定資産税が多く見込めないなど、財政に対しての悪条件もあります。

新庁舎に3000人分のスペースを確保

 そんな中、今回新たに新庁舎に“ある事実”が判明しました。2017年度当時、市庁舎では約2000人が働いており、それ以外に約1000人が民間のビルに勤務していたため、その賃料が年間約4億円かかっていました。その賃料を削減するために、373億円をかけて市役所の整備を行い、「分庁舎」の新築や他の庁舎の改修により床面積を2倍にして、3000人分のスペースを確保しました。

1000人分のスペース不足が発覚

しかし、業務効率化のために各区役所から本庁舎へ一部の部署を移動したため、新築後も約1000人分のスペースが不足することとなってしまい、年間約6億円の賃料が発生する事態となっています。京都市民からは「もう少し計画的に工事してくれたらよかったのに…」「無駄遣い。職員も多いのでは?」などの声が上がっています。京都市庁舎管理課は、「当初の目標の達成は、現時点で見通せないが、組織を再編するなどして、一人でも多くの職員が庁舎で仕事ができるようにしたい」とコメントしています。村山氏は、「効率化のために職員を集約化したのは良いことで、仕方のない部分もある。集約化により空いたスペースをうまく利用するなどの議論が必要になる」と提言しています。

数百万円をかけた新キャラやPR動画

約130のキャラクターが乱立

 他にも京都市には、キャラクターの乱立問題もあります。1996年以降、部署ごとにキャラクターを製作していて、現在約130のキャラクターが存在しています。そして2021年3月、広報誌に更なる新キャラクターが登場しました。

2021年登場の新キャラクター「京乃つかさ」

 名前は「京乃つかさ」といい、20歳で誕生日は10月5日、血液型はO型、趣味はカメラ・アニメ・特撮・ゆるキャラ、仕事はふるさと納税やワクチン接種などのPR活動、という設定で、製作費が250万円ということです。京都市の広報担当者は、「キャラクターはそれぞれ役割を持って作製しているが、今回は幅広い分野で活用できるキャラクターとして製作した」と語っています。

「テルマエ・ロマエ」とのコラボ動画を制作

 さらに今年の11月1日から、京都市の上下水道局が、人気漫画「テルマエ・ロマエ」とコラボし 制作したPR動画などを公開しました。期間は1年間で、事業費は600万円。そのうち200万円は国からの補助を当て、京都市は400万円を負担しているといいます。市の担当者は「水道事業の課題や、適切な水利用を知ってもらうために製作した。好意的な意見も多い」とコメントしています。これに対して村山氏は、「費用対効果は悪くないと思うが、財政状況が悪い中で行うのは、市民感情に寄り添えてないのでは?」と疑問を呈しています。

高さ制限の見直しに遺灰対策、財源増に繋げられるのか

高さ制限が人口流出の原因に

 京都市は、2007年に「新景観政策」として、山並みや京町家などの伝統的な建物との調和を図るため、市街地のほぼ全域で、建物の高さを10~31mに制限してきました。しかしこのために中心部の住宅価格が高騰し、“人口流出”が生まれるなど、「都市存続の足かせになっているのでは?」という意見もあります。実際に京都市は、2021年に「人口流出の多い市区」の1位となっています。

高さ制限の緩和案

 そこで今年10月、見直し案が公開されました。その内容は、京都駅の南側で、高さ制限が20m・25mとなっている地域の制限を31mに緩和し、地下鉄・山科駅~六地蔵駅間の高さ制限31mを無制限にする、というものです。市の中心部は、これまで通りの規制を維持するといいます。

高齢化などにより火葬件数が増加

 また京都市では、火葬の件数が高齢化などで増加しており、1989年度は1万640件だったのが、2021年度では1万8747件となっています。

“残骨灰”から抽出した貴金属を売却

 そのため、火葬・収骨後に残った骨や灰である“残骨灰”の保管場所が満杯になる、という問題も出てきています。この“残骨灰”は、戦前に「所有権を火葬場のものとする」という判例があるため、京都市は2021年4月~12月分の“残骨灰”約39tを、骨と灰などに分け、骨は約2tまで圧縮して再び保管し、灰などからは約35kgの貴金属を抽出し、売却することになりました。売却額は約1億2000万円になるということです。市の担当者は使い道について、「故人が残された大切ものなので、斎場の利便性向上や機器のメンテナンス費用に活用したい」と話しています。

市民サービスへの影響

 京都市の財政難は、市民サービスにも影響を与えていて、市バスの運賃や敬老パスの対象年齢と値段の引き上げや、地下鉄の初乗り運賃の値上げが予定されています。また、すでに市内191の施設では、入場料・使用料の値上げが行われています。市民の負担も増える中での財政改革、納得と理解が得られる市政が求められます。

(情報ライブミヤネ屋2022年11月2日放送)

SHARE
Twitter
facebook
Line

おすすめ記事

記事一覧へ

MMDD日(●)の放送内容

※都合により、番組内容・放送日時が変更される場合があります。ご了承ください。

※地域により放送時間・内容が一部異なります。