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市川猿之助容疑者 逮捕

【独自解説】歌舞伎界のため命削って追い込んだ猿之助 並外れた責任感のウラに先代の背中と観客の大きな期待?! 専門家が解説

 歌舞伎俳優の市川猿之助容疑者が逮捕されました。猿之助容疑者の「澤瀉屋」への思い、そして歌舞伎界に対しての危機感… 彼の足跡と見据えた“未来”と大名跡の“重圧” とは? 歌舞伎研究家の高木秀樹氏とスポーツ報知・デスクの高橋誠司氏が解説します。

猿之助容疑者 幼少期から異彩を放ち「次は自分が襲名する」

次の猿之助は自分だ

 高木氏によると「四代目猿之助容疑屋は先代に憧れ『次の猿之助は自分だ』と思い定めて生きてきた。周囲はその決意を知っていたので、襲名に異論は出なかった」といいます。

歌舞伎研究家・高木秀樹氏

Q.襲名は本人も覚悟していたということですか?
(歌舞伎研究家・高木秀樹氏)
「先代猿之助の得意としてきた芸を継承してきました。単に血縁だから襲名したわけではありません」

Q.子どもの頃にもすごいエピソードがあるということですが…
(高木氏)
「忘れもしません。昭和60年10月だったと思います。雙生隅田川(ふたごすみだがわ)という演目なのですが、三代目猿之助と今の菊五郎、そして当時の亀次郎(猿之助容疑者)が宙乗りするのですが、亀次郎は、高い位置に来るとわざとバランスを崩して落ちるふりをするんです。そうすると客席から『きゃー危ない』と悲鳴が上がるんです。10歳の亀次郎がわざとそういうことをするんです。なんてやつなんだと思いました」

「名前」で劇場を満席にできる特別な存在

猿之助と團十郎はその「名前」で劇場を満席にできる

 高木氏は、「猿之助と市川團十郎はその「名前」で劇場を満席にできる特別な存在だ」といいます。

Q.この二人がツートップですか?
(高木氏)
「実際に私もチケットを買って歌舞伎を見るのですが、猿之助と團十郎のチケットは手に入りにくいです。売り切れということもありますし、ファンも肌身で感じていると思います」

Q.猿之助容疑者にも集客をしないといけないというプレッシャーはあったのでしょうか?
(高木氏)
「それは猿之助だけでなく座頭・主役を張っている誰もが、『客席をいっぱいにしないといけない』というプレッシャーを感じています。それと猿之助の場合は客の『必ず面白い芝居を見せてくれる』という期待の大きさがプレッシャーだと思います。それは拍手だとかで肌身で感じます。猿之助はその期待にずっと応えてくれていました」

Q.今回のようなことが起こる兆しはありましたか?
(高木氏)
「猿之助がそんなに悩んでいたということは、全く知りませんでした。客席から舞台を見ている限りは悩みなんか感じられない素敵な舞台を毎回提供してくれますので、本人がそんなことになっているとは夢にも思いませんでした」

歌舞伎界の未来のため…追い込んだ猿之助容疑者

予定時間を超えてインタビュー

 今回の事件の10日前にスポーツ報知は猿之助容疑者に単独インタビューをしています。明治座「奮闘公演」の真っただ中で、公演終了後に設定されていました。予定時間は15分でしたが、3分オーバーの18分にわたって話したということです。次の歌舞伎座「六月大歌舞伎」での市川中車(香川照之)と團子の共演への意気込みと狙いをメインに、話を展開したということです。その中で猿之助容疑者は“歌舞伎の舞台に立つ覚悟”として「どこかで命を削っているのでしょう…」「人気回復のためには走り続けるしかない。猿翁さん(三代目猿之助)はもっと過酷だったはず」と語っています。また“当たり役”について「当たり役が定まるのは、そんなの死んでからでしょう。死んで世間が勝手に当たり役と呼ぶのであって」と話しています。スポーツ報知の高橋誠司氏は「自分を追い込むような完璧主義者の一面が垣間見えた」といいます。

スポーツ報知・デスク 高橋誠司氏

Q.猿之助容疑者は歌舞伎に情熱と人生をかけているということですか?
(スポーツ報知・デスク 高橋誠司氏)
「『六月大歌舞伎』が市川中車の久々の晴れ舞台だということで、澤瀉屋一門の将来もかかっている大舞台だったのですが、そこで自分も頑張らないといけないという意味で前のめりになって話していて、『命を削る』という表現をしたと思います」

Q.猿之助容疑者は演じるだけでなく、プロデュースも制作もしますよね?
(高橋氏)
「責任感がとても大きくて、澤瀉屋だけでなく歌舞伎界全体を考えて、自分が仕切らなければという思いに人並み外れたものがあったと感じます」

Q.歌舞伎がどう生き残っていくかという危機感が大きかったのでしょうか?
(高木氏)
「それはスーパー歌舞伎を始めた三代目猿之助の影響が大きいと思います。三代目は、古典歌舞伎を見てもらう前に入門編としてスーパー歌舞伎を始めたのですが、その精神を受け継いだのが四代目猿之助だと思います」

Q.猿之助容疑者は、相当ストイックな人物だと聞きますが…
(高橋氏)
「あまり派手に出歩かないですし、本もたくさん読んでいて、研究をかさねつつも新しいものを見せて、歌舞伎を知らない人にも受け入れてもらいたいという気持ちがとても強かっただけに、なぜ今回こういう正反対のことをしてしまったのだろうと首をかしげているところです」

Q.トレーニングにも気を使うという話ですが?
(高橋氏)
「あまり筋肉はつけたくないということで、筋トレはしないのです。女形の踊りなどもしますので、あまり男性的にならないようにしていると聞きました」

Q.大変惜しい才能だと思いますが…
(高木氏)
「役者としてもプロデューサーとしてもそうです。夢枕獏氏の『陰陽師』の新しいバージョンを猿之助自身が台本を書いたりしています。演出もしますし、役者以外の業績もありますし、私は早く帰ってきて欲しいと思っています」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2023年6月28日放送)

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