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【詳細解説】新たに4500品目以上が10月値上げ…いつまで続く?政府の対策は?専門家指摘「岸田政権の最大の欠点は、政策が総花的で小粒」
2023年9月26日 UP
10月からハムや冷凍食品、アイスクリーム、ペットボトル飲料など新たに4500品目以上の食品が値上げされます。いずれも家計を直撃するものばかりです。2023年に値上げされる商品は3万品目を超え、これは、バブル崩壊以降最大級の値上げとなるといいます。これから値上げはいつまで続くのでしょうか? 政府の経済対策は? 経済評論家の加谷珪一氏が解説します。
食品だけでなく、光熱費も…バブル崩壊以降最大級の値上げが続く
10月に、ハムソーセージなどの食肉製品・調味料・冷凍食品・“業務用”ビール・輸入ワイン・飲料・アイスクリーム・菓子類などの値上げが予定されています。2022年1年間で2万5768品目が値上げされたのですが、2023年は、10月までで早くもそれを超える3万1036品目、年末までには約3万5000品目が値上げされる見込みです。
Q.2023年は猛暑もあって野菜なども値段が上がっていますよね?
(経済評論家 加谷珪一氏)
「気象条件が厳しかったというのもあって、値上げ幅もそうなんですが、色んなものに波及したなという印象があります」
食品以外にも、郵便料金・振込手数料・東京ディズニーランド、東京ディズニーシーの1dayパスポート・電気料金・ガス料金なども値上げされます。加谷氏によると10月の値上げ要因は「海外の物価高騰と円安で企業の仕入れコストが増えたことと、4月の“大幅賃上げ”で企業の人件費が増大したこと」だということです。
Q.窓口での振込手数料の値上げは「ネットで振り込んでください」と言っているようにもみえますが?
(加谷氏)
「簡単に言うとそういうことになります。いまは、人手不足とコストダウンで、ストレートに言うと『あまり店舗に来ないでください』というのが銀行側の正直なところで、そういうことも値上げの要因の一つになっています」
Q.飲食店などは、やっとコロナ禍から抜け出したのに、原材料費に光熱費、人件費とトリプルパンチですよね?
(加谷氏)
「そうですね、家庭では食材の値段が上がって困っているのですが、飲食店にとってもコスト増加要因となり、かつ人件費も上がるし、光熱費も上がる。こういう形で、じわじわとあちこちで値上げが広がって行く図式だと思います」
10月から酒税改正、値上げされる“第3のビール”
ビール・発泡酒・“第3のビール”は、それぞれ税率が違うのですが、2026年にそれを1本化する動きが進んでいます。その中でこの10月、ビールの税率は下げて、発泡酒は据え置き、“第3のビール”の税率は上がります。ビールの税額は6.65円下がり、発泡酒の税額は9.19円の上昇となります。これによりお店によっては小売価格もビールは11~19円値下げ、“第3のビール”は13~19円値上げになるということです。
Q. 小売店も“第3のビール”を値上げすると客足が落ちて辛いところですよね?
(加谷氏)
「ス-パーなどは、店舗の一番目立つところにビールなどを激安で置いて客を呼び込んで、他の商品を買ってもらうという戦略をとっていましたので、ビール類は安く設定したいところです。お店も大変でしょうが、消費者もビール類は安く買いたいので、目玉商品としてのビール類の格安販売というのは継続してもらいたいです」
10月から増額やグレードダウン、受付終了も…「ふるさと納税」も規制強化
10月から「ふるさと納税」のルールが変更されます。まず一つ目は、返礼品の金額が、“全部の経費を含めて”寄付額の5割以下になります。今までは、返礼品と送料などの経費を含めて5割以下だったのが、ポータルサイトの手数料や寄付金受領書の発行手数料など隠れ経費とされていたものも含めることとなります。そのため10月からは、同じものでも寄付額を引き上げるか、返礼品をグレードダウンするなどの対応をとる自治体が増えると思われます。二つ目は地場産品の基準が“厳格化”されます。今までは、他の都道府県や海外からの材料を使っていても、その地域で加工されたものであれば“地場産品”として返礼品に使えましたが、10月からは、原材料も同じ地場産のものに限定されます。そのため9月30日を持って受付終了となる返礼品が出ています。
Q.何のための厳格化なのでしょうか?
(加谷氏)
「政府内部で、過度な返礼品競争は抑制しようという流れになっています。今後返礼品が拡大する可能性は少ないと思います」
メリットだけじゃないデメリットも…最低賃金大幅アップ その影響は?
10月からは、最低賃金が全国平均961円から1004円と初の1000円台となります。メリットとしては、収入増加により経済の活性化と格差是正が期待できます。しかし、企業にとっては、人件費の増加による業績の悪化や、雇用の減少などのデメリットもあります。加谷氏は「勤務先の企業がどんな対応をするのか注視する必要あり!政府による地方の企業の生産性を上げる支援が必要。自動化・IT化が即効性あり」としています。
Q.最低賃金が上がったことによって、働く時間を短縮させられる恐れもありますよね?
(加谷氏)
「本当はだめですが、特に地方で業績の悪い企業は、そういうことを考える可能性はあります。経営者はそういうことをしない方向で考えてほしいですし、政府も給料を上げられるような支援策をして、デメリットが出ないようにしないといけません」
Q.内部留保があるような大企業は良いですが、地方で頑張っている会社などは、人件費の増加は業績に響きすよね。
(加谷氏)
「都市部は、最低賃金を上回る賃金を提示しないと人が集まらない状態ですが、地方はそうではないので、企業に対する支援策とセットにしないといけないと思います」
Q.自動化・IT化すると人がいらなくなるのでは?
(加谷氏)
「そんなことはなくて、自動化・IT化することで、より儲かる仕事に人をまわすことができるので、企業の収益アップにつながるはずです」
高騰続くガソリン価格、補助継続も「岸田政権最大の欠点は、政策が総花的で小粒」
高騰が続くガソリン価格ですが、政府の補助金である程度抑えている状態です。岸田首相は、「10月中には175円程度の水準を実現したい」と発言しています。
Q.結局、税金を投入しているわけですよね?
(加谷氏)
「そうです。ガソリン税を取ってそこから補助という形で戻している状態ですが、10月中の175円は実現すると思います。最初は年内で補助は終了という話だったのですが、大型の経済政策で年明け以降も継続するという流れになっています。岸田政権の最大の欠点は、政策が総花的で小粒なものが多い印象な点です。国民にインパクトのある、柱のある政策を打ち出すと印象は変わると思います」
(「情報ライブミヤネ屋」2023年9月25日放送)


