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【独自】“コロナ”治療の最前線 現場の医師『重症化予防という意味では、ワクチン接種は意義がある』
2021年9月8日 UP
治療現場の医師が現状を解説
田村厚労大臣が9月7日に会見し、新型コロナのワクチンについてアメリカのノババックス社から、早ければ2022年初めから1億5000万回分の供給を受ける契約を結んだことを明らかにしました。
一方、モデルナ製ワクチンの異物混入問題で、自主回収の対象ロットであるワクチンを8月11日に接種した49歳の男性が、接種の翌日に死亡していたことがわかりました。同じロットのワクチンを巡っては男性2人の死亡が確認され、今回が3例目ですが、ワクチンとの因果関係はわかっていません。
そんななか、“コロナ”治療の現場で日々、患者に向き合っている、日本感染症学会の指導医でグローバルヘルスケアクリニック院長の水野泰孝(みずの・やすたか)医師が、治療現場の現状とワクチンの接種について独自解説します。
東京の感染はピークアウトしたのか?
Q.東京での感染はピークアウトした?
(グローバルヘルスケアクリニック院長 水野泰孝医師)
「実際の外来診療をやっていても、減ったなっていう感じはすごくあります。8月の中旬以降から、私の所でもやっぱり陽性率が減ったなという印象があって、9月になってから、熱のある患者さんが来られて、検査をしても陽性にならない方が結構目立ってきています。ワクチンを打っている方ももちろんですが、ワクチンを打ってない方でも陽性にならない方も散見されているので、東京都の感染者が減っているということに表れているのではないでしょうか。」
Q.東京で感染者数が減った要因は?
(水野泰孝医師)
「様々な要因が重なって、減ってきていると思いますが、ピークアウトと言えるかどうかは、なんとも言えないところがあります。8月13日の感染者数5773人というピークのとき、デルタ株はすごく感染が広がりやすいということで子どもたちの間に広がって、私も何人か赤ちゃんを含めた子どもの診療をやっていて、我々もデルタ株の感染力が強いということである意味危機感を覚えた。おそらく、国民の皆さん一人一人もある程度危機意識を持って、一人一人がしっかりとした対策をもう一度見直してやったことが、こういう風に表れているかなというふうに感じています。」
陽性率の減少…デルタ株の変化が原因?
Q.いま、デルタ株はすごく変化している?
(水野泰孝医師)
「私もその辺がすごく気になっています。いま私の所でPCR検査をやったとき、陽性になる方はほぼ100%デルタ株なんですが、それと同時に、Ct値が低い方が、少なくなってきた気もします。Ct値とは、いわゆるウイルスが増える回数を示す値ですが、このCt値が高ければウイルス量が少ない、低ければウイルス量が多いということで感染力が強いという理解になります。8月の上旬ぐらいは、小さいお子さんでも、Ct値10という低い数値、感染力が強いCt値の方が結構多くて、その家族は全員がPCR陽性となったんですけど、最近はCt値10というのはあんまり見られなくなった。これはもちろんワクチンの影響もあると思うのですが、お子さんでも低いCt値の方は、なんとなくですが少なくなってきた。これは科学的に証明されるかどうか分からないのですけども。きょうも濃厚接触者のご家族4人のうち1人の大人が陽性で、のこりの家族全員検査したら全員陰性だった。これが1か月前なら全員陽性だったと思います。原因は分からないが、ここ最近、陽性率が減ってきたなという実感はしています。」
ワクチンの効果について
Q.ワクチン接種も相当進んできたので、そろそろ効果が出るのでは?
(水野泰孝医師)
「ワクチンを打った方でも新型コロナにかかっている方おられて、特に1回接種だけの方は結構、陽性の方がおられます。2回打った方というのは、検査すると陽性になる方はそれほど多くはない。ただやっぱりご高齢の方はワクチンを打っていると、比較的軽症であるという印象があるので、重症化の予防という意味ではワクチン接種は意義があります。」
Q.従来のインフルエンザでも、ワクチンを打っても感染するブレークスルー感染している?
(水野泰孝医師)
「ワクチンというか、病原体によって、ワクチンの種類によっても違うんですけれども、ワクチンを打つことによって発症の予防がしっかりできるワクチンもあれば、インフルエンザのように発症してしまうけども重症化の予防ができるというようにワクチンも様々なので、どうやらこの新型コロナウイルスのワクチンは、発症してしまう可能性はあっても、重症化予防はできるといった位置づけになってくるのかなと考えます。」
病床使用ゼロ “幽霊病床”について
Q.人手不足や設備が不十分など様々な事情が各病院にありますが、即受け入れ可能な病床があり補助金も出ているのに病床使用がゼロという病院があることについては、専門家としてどう思いますか?
(水野泰孝医師)
「専門家でなくてもやっぱり疑問に思う。色々な理由はもちろんあるのですけども、こういった理由をはねのけて皆さんやっているわけです。もちろん事情はあるから分からないですが。私も実際に一人でやっています。ワクチンも検査もやっているし、発熱患者も診ていますし、普通の診療もやっているので。やはりお金が出ていますので、これが出ている所はしっかりと実績報告を公表していただきたいですよね。」
ワクチン接種後の抗体量減少について
「ワクチンについては、発症、重症化予防効果は抗体量が減っても一定効果が見込まれるが、感染予防効果は減少すると考えられる。どれぐらいの抗体量があれば十分な感染予防効果が見込めるのか研究が必要」という見解を示した水野医師。ファイザー社製ワクチンを2回接種し、自らの抗体量の減少について調べました。2回目の接種直前の抗体量は14.4で、1週間後は284。2回目の接種から2週間経つと大幅に上がって1770。この後は減少して行きます。1か月経つと1160、そして2か月経つと795という数値になりました。
一方、藤田医科大学の8月25日の発表では、ファイザー社のワクチンを接種した209人の抗体量を調査しました。1回目の接種後は11.8。2回目の接種後は大幅に上昇して245.4。しかし1回目の接種から3か月経つと4分の1の65.9まで下がりました。土井教授は『2回目の接種後に出来る抗体価はとんでもなく高く、4分の1に減ったからといっても自然感染でできる免疫からすると十分高い抗体値だ。』と述べています。
Q.ワクチンを打って出来る抗体量は日が経つと減っていくのは自然なこと?
(水野泰孝医師)
「ワクチンによる抗体というのは、やはり時間が経てば減っていくということは他のワクチンでも言えることです。ただ実際にこの新型コロナのワクチンは初めて開発されたワクチンなので、そういったことは分からなかった。藤田医科大学の先生方のされた調査でこういった結果が出てきて、数値は実際に私の計っている試薬と藤田医科大学の試薬が違うし、他にも試薬があるので、数値を単純比較はできないのですが、ただやはりこういった減衰の経過というのは、ある意味類似しているのかなと考えます。ただ、これで値がいくつ出たから安心だと判断するのは時期尚早です。」
抗体カクテル療法について
Q.“抗体カクテル療法”の抗体カクテルは、水野さんの病院には来ていますか?
(水野泰孝医師)
「実際に外来治療ということですが、いわゆるベッドがある入院設備のある病院の外来での治療ということなので、いわゆる無床診療所とか簡易診療所ではできない。ただ、ホテル療養とか酸素ステーションなど、24時間体制で医療従事者が常駐しているところで出来るような方向になっただけで、いわゆる開業医レベルで、診療所レベルで使えるわけではないです。今、本当に問題なのは、自宅療養者をいかに早く救命するか、重症化しないかなので、こういった初期の治療はできるだけやはり門戸を広げて、どこでも使えるようにしていただきたい。」
抗体カクテルについても、“待ったなし”の現場での運用が急がれています。
(情報ライブミヤネ屋 2021年9月7日放送)


