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在位70年「プラチナ・ジュビリー」を記念して撮影されたエリザベス女王の近影(提供:イギリス王室)

【独自解説】エリザベス女王「国葬」のウラ側 ジョージ王子とシャーロット王女の参列が示した『イギリスの未来』、チャールズ新国王に求められることとは

 9月19日、イギリス・エリザベス女王の国葬がロンドンのウェストミンスター寺院で執り行われ、棺は最愛の夫、フィリップ殿下が眠るウィンザー城の礼拝堂に納められました。世界中から多くの要人が参列した国葬のウラ側とチャールズ新国王の今後はどうなっていくのか、英国王室に詳しいジャーナリストの多賀幹子氏が解説します。

世界が見守った“最後のお別れ” 「国葬」のウラ側

 エリザベス女王の国葬は、ウェストミンスター寺院で日本時間の9月19日午後7時ごろから約1時間にわたって執り行われました。寺院での君主の国葬はジョージ2世以来、262年ぶりだということです。トラス首相などの聖書朗読や2分間の黙とう、国歌斉唱、女王専属のバグパイプ奏者による追悼の演奏なども行われました。

 警備体制は史上最大規模となる約1万人が動員され、ロンドンオリンピックの1日の警備を上回ったということです。アメリカのバイデン大統領ら各国の元首など2000人以上が参列し、天皇陛下と皇后雅子さまも出席されました。天皇の立場で外国の王室の葬儀に出席するのは異例のことですが、皇室との3代にわたる交流を踏まえての出席となりました。

バイデン大統領は14列目?座席の意味とは

 また、バイデン大統領は「イギリスとアメリカは特別な関係だ」と日頃から語っていましたが、その座席は女王の棺から数えて14列目、ポーランド大統領やカナダ首相よりも後ろの位置でした。参列者の座席は、女王の棺のすぐ近くにロイヤルファミリー、そのすぐ後ろにイギリス連邦諸国の指導者、その後ろにカナダ、オーストラリアなど旧植民地の国々、そのさらに後ろがその他の国の要人らの座席となり、ここにバイデン大統領も入っていたということです。この座席の位置の意味をイギリスメディアの「テレグラフ」紙は「女王の葬儀では、たとえ小さな国や影響力の弱い国であっても、“イギリス連邦諸国”の政治指導者が、他の国の指導者より上位になる。計算された政治的判断ではなく王室の儀礼により決定される」と報じています。

英国王室に詳しいジャーナリスト 多賀幹子氏

Q.エリザベス女王ご自身も計画に参加されたということですが、女王が亡くなられてから国葬まで11日間、国民とのお別れの時間をこれだけ取られたというのは、改めてすごいことですね?
(英国王室に詳しいジャーナリスト 多賀幹子氏)
「逆に言えば、これだけの時間が必要であるということかもしれません。ひとつひとつのステップを踏みながらお別れに向かって歩んで行くという…。急であっては心が付いていかないということもあるでしょうし、こういう過程が必要だったのかもしれません」

Q.お父様のジョージ6世はウィンザー城の礼拝堂でお葬式をされていましたが、エリザベス女王はウェストミンスター寺院で行いたい、という気持ちがおありになったのでしょうか?
(多賀氏)
「そうですね。やはりウェストミンスター寺院は、世界遺産で非常に格調高くて、王室の冠婚葬祭は一手に引き受けるというようなところでもありますので。エリザベス女王自身が結婚式を挙げ、戴冠式を挙げ、そしてお葬儀ということで、非常にゆかりの深いのがウェストミンスター寺院ですね」

 ウェストミンスター寺院を後にした女王の棺はロンドン市内を回り、ウェリントン・アーチまで行進しました。約4000人の軍人が隊列を組み、長さは2.4kmにも及んだということです。その後、棺は霊きゅう車に移され、ロンドン郊外のウィンザー城に移動しました。

Q.女王の通られたルートは、「より多くの方と最後のお別れをしたい」という女王のお気持ちと、ロンドンを象徴するような風景、イギリスの威厳や優雅さがふんだんに盛り込まれていましたね?
(多賀氏)
「まさにおっしゃるとおりで、良いところずっと通られたという感じです。バッキンガム宮殿の前やザ・マルというプラタナスの並木が非常に美しいところも通られました。官庁街も通られましたし、何かロンドンの観光をさせて頂いたような気がするぐらい、素晴らしいところばかりを通られていました。お天気が良いということもとても良かったと思います」

 ウィンザー城では、夜に女王の家族だけが非公式で集まり、棺は礼拝堂の一角に、夫のフィリップ殿下と並んで埋葬されました。

Q.「ウィンザー城でフィリップ殿下と眠りたい」というのは、約束でしたね?
(英国王室ジャーナリスト 多賀幹子氏)
「そうですね。本当に良いご夫婦だったということです。70年以上ご夫婦でいらっしゃいましたが、『亡くなった後も一緒に居たい』という、13歳の初恋を貫いたということで、素晴らしい夫婦愛だと思います」

Q.多賀氏が女王の国葬で注目したシーンはどういったところですか?
(多賀氏)
「ジョージ王子とシャーロット王女が参列している場面です。君主が亡くなったということで、大変寂しい思いをしたり、辛い思いや不安を持つというようなこともありますが、王位というのは継承をきちんとしていくことが最も大事です。不安定なことなく、次の継承、また次の継承とできることが安定につながっていきますので、たとえ女王君主が亡くなられても若い世代、次のロイヤルが立派に育っているということが国民の安心感でもあります。『イギリスの未来が、ここにちゃんとありますよ』ということです。『女王が亡くなられたことは悲しいことですが、安心して下さい、王室は安泰です』ということを言わず語らずのうちに見せていると思います」

チャールズ新国王に求められる“求心力”

Q.新しい国王となられたチャールズ新国王についてはどう思われますか?
(多賀氏)
「やはり、つい思い出してしまうダイアナ元妃の悲劇なんですね。どうしてもカミラ王妃と並ぶと、イギリスでは『ゴーストがちらつく』と言う方もいらっしゃって、そういうようなものを消してしまえるような、非常に魅力的な施策といいますか、アイデアというものをどんどんチャールズ新国王に出していただきたいですね」

Q.「君主制はもういいじゃないか」という若い人も、少なからずイギリスにはいて、これからも君主制を続けていくことの意味を新国王はどう説明するのか、もっと言うとイギリスの連邦制から抜けて共和国になるという国も出てくる可能性があります。チャールズ新国王に求められることとは何でしょうか?
(多賀氏)
「チャールズ新国王は必ずしも全国民の人気を把握しているというわけありません。まず、王室のスリム化ということに取り組むとおっしゃっていました。スリム化ということはもうスウェーデンなんかがやっていますが、皇太子時代から主張していらっしゃいましたので、今こそやられたらいいと思います。やはりロイヤルの数を減らしていくと税金もかからないということで、国民の皆さんにアピールすれば、応援する国民が多いと思います」

(情報ライブミヤネ屋2022年9月20日放送)

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