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【独自解説】尖閣諸島で中国公船“領海侵入”が常態化 習主席の “国内向け筋肉ショー”か⁉ 公安トップに元部下起用は主席交代の布石?
2022年6月29日 UP
異例の3期目を視野に入れる中国の習近平(しゅう・きんぺい)国家主席。そんな中、政治の中枢で習近平派の“失脚”が相次いでいるといいます。はたして3期続投への影響はあるのでしょうか?そんな中、尖閣諸島周辺では、中国がこれまでにない“強硬”な姿勢を見せています。日本の領海で一体何が起こっているのか、中国事情に詳しいフリージャーナリストの福島香織(ふくしま・かおり)さんが解説します。
中国国内に向けた示威行動!? 中国の“強硬”な行動のワケ
海上保安庁によると「尖閣諸島」に中国の海警局の船が、6月26日時点で72日間連続で接近していて、6月21日未明~23日午後8時頃にかけては64時間もの間、“領海連続侵入”があったということです。これは過去最長で、中国による“領海侵入”が常態化しています。中国海警局の船は尖閣諸島の接続水域に常に4隻滞在し、月に一度そろって領海に侵入するということで、これは中国国内に向けた“示威行動”とみられています。
Q.この中国海警局の船は、武器なども搭載しているのですか?
(フリージャーナリスト 福島香織さん)
「はい。海警船と呼んでいますが、この船の指令系統は海軍です。軍の先兵のようなもので、軍事行動だと捉えていいと思います」
福島さんはこの海警船の動きを「日本の防衛力強化への反発、存在感を高めるアメリカへのけん制、さらに国内向けに習主席が“軍を掌握している”とアピールしたい思惑もある」と指摘しています。
Q.秋の中国共産党の党大会に向けて「軍は掌握しておきたい」という習主席の思惑があるのですか?
(福島さん)
「そうですね。国内向けの『筋肉ショー』というか、“軍を掌握している”ということが非常に大きな影響力を持つので、自分がいかに強いかを見せつけているというところがあると思います」
Q.仮に習主席が3期目続投ならずとも軍のトップを抑えておけば…ということもあるのでしょうか?
(福島さん)
「江沢民(こう・たくみん)政権のときは、総書記を引退した後も中国共産党中央軍事委員会・主席の座というのをしばらくキープしていました。そのことが院政といわれる長老政治を強くして、胡錦涛(こ・きんとう)政権を苦しめたという前例がありますから、軍を掌握するということは『引退しても権力を維持できる』という一つのポイントではあります」
また、海だけにとどまらず、6月23日には中国軍の爆撃機3機が沖縄本島と宮古島の間を通過しました。領空侵犯はなかったということですが、緊急発進した航空自衛隊の戦闘機が監視したところ、爆撃機には対艦ミサイルのようなものが搭載されていたということでした。さらに6月12日以降に中国の艦隊4隻、15日以降にはロシアの艦隊5隻が、それぞれ日本列島を時計回りに1周するような動きがあったということで、中露合同で連携し、日本を威嚇しているのではと言われています。
6月17日には中国3隻目の空母「福建」が進水しました。艦載機を加速して発進させることができる電磁式のカタパルトも装備しているということですが、これはアメリカの海軍の最新鋭原子力空母「ジェラルド・R・フォード」に搭載している新技術で、中国メディアは「完全に自主設計により建造された」と強調しています。また、この「福建」という名前は習主席が命名した名前だということで、福島さんは「かつて習主席が省のトップを務めた福建省は、台湾に向き合っており、台湾統一への強いこだわりの表れともいえる」と分析しています。
Q.最新の空母に「福建」という名前を付けたということは当然、台湾統一に対しての言及が増えてきますよね?
(福島さん)
「そうですね。秋の党大会もやはり台湾に対する政策攻略がどういうものになるかということが一つのポイントだと思います。今年は台湾断交の50周年という節目の年でもありますし、そういう意味では台湾とどう付き合うか、ということを中国としては打ち出さなければならないです」
Q.中国側は「偶発的に戦争は始まる」とよく言いますが、中国の指導部は、たくさんの飛行機が台湾の領空に一度に入ったら、「台湾側と戦争が始まるかもしれない」というようなことは想像しないのでしょうか?
(福島さん)
「想像していると思います。解放軍内には、それを怖がる声もあるんですが、それは押し込められています。習主席としては非戦争軍事行動というもののイメージを今、一生懸命研究しているところだと思います。戦争には至らないが、相手にダメージを与える軍事行動、あるいは威嚇行動が、どのぐらいまで可能かというのを実践中なのだと思います」
Q.もし台湾統一をするならば、非軍事で「うちはこんなに戦力ある」と誇示して、諦めさせることが習主席としては理想的なやり方なのでしょうか?
(福島さん)
「そうです。また、アメリカが本気で戦う気があるのかどうかというのも、恐らく水面下で探っているのだと思います。先日、中国・外交部が『台湾海峡は国際水域ではなく内海だ』ということを言いましたけれども、その後のアメリカの出方などを色々と調べているのだと思います」
公安トップに“側近” 主席交代の布石?
福島さんによると「習主席は自分の権力掌握のために国家機構改革を行い、自分のお気に入りの官僚を抜てきしてきたが、その多くが失敗している」といいます。例えば、習主席肝入りの「ウイグル人政策」を巡って、政策を引っ張ってきた陳全国(ちん・せんこく)氏は、2021年に降格されたとみられています。次期、政治局常務委員入り確実とみなされていた人物ですが、2021年にアメリカが陳氏を制裁対象にしていて、人権問題への批判をかわす狙いではないかと言われています。さらに、「親ロシア外交」の旗振り役、楽玉成(らく・ぎょくせい)氏という人物は6月、左遷されたとみられています。楽氏は習主席お気に入りの外交官で、次の外相と目されていた人物ですが、海外メディアは「楽氏はロシアを公然と擁護していた。中国は国際社会にロシアと距離があると示す必要があった」と、左遷の理由を報じています。
その一方で、習主席は「中国・全人代」常務委員会で6月24日、習主席の側近で福建省に勤務していた時の部下である、王小洪(おう・しょうこう)氏を公安(警察)トップに起用しました。
Q.まず「軍」を抑える、それから「公安」を抑えるということは、習主席にとっては権力の源になることは確かですよね?
(福島さん)
「そのとおりです。同時に軍と公安さえ抑えておけば、総書記を譲って引退した後も影響力は保てます。また、習主席が一番心配している“引退した後に汚職で摘発されて完全失脚すること”も公安のトップが自分の子分であれば、摘発されるリスクというのは非常に少なくなるわけです。そういうことも含めて色々な対策を習主席側が打っているということだと思います」
(情報ライブ ミヤネ屋 2022年6月27日放送)


