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尹政権に数々の問題発生⁉

【独自解説】韓国最大野党代表が検察出頭、ウラにある大統領“批判逃れ”の思惑と「元徴用工問題」「北朝鮮の領空侵犯」問題山積の尹政権を専門家が解説

 韓国で、最大野党の代表が検察に出頭するという、韓国憲政史上初の事態が起きています。その背景には、「元徴用工問題」「夫人を巡る疑惑」そして「北朝鮮のドローン侵入」など、尹政権にまつわる数々の問題があります。韓国でいったい何が起きているのでしょうか?コリア・レポート編集長の辺真一氏が解説します。

討論会が大荒れに!「元徴用工問題」

“元徴用工訴訟”の経緯

 日韓最大の懸念である「元徴用工問題」ですが、1月12日の公開討論会で、韓国政府が賠償を肩代わりするなどの解決案を提示し、韓国外務省高官が「日本企業の賠償と謝罪は困難だ」と発言したこともあり、討論会は大荒れとなったようです。

「コリア・レポート」編集長 辺真一氏

Q. 韓国外務省高官の「日本企業の賠償と謝罪は困難だ」という発言は大変大きいことですね。
(辺真一氏)
「極端に言うと、『諦めろと』いうことなんでしょう。しかし、元徴用工側から見ると『この7か月間どういう交渉をしてきたんだ。日本の主張を受け入れただけではないか』と見えてしまいます。特に徴用工側は、日本企業からの資金の支出と謝罪が不可欠だったわけですから、ゼロ回答になるわけです。このままでは国内の反発を受ける恐れがあります」

Q.最後は尹大統領の政治判断だと思いますが、今回は大丈夫でしょうか?
(辺氏)
「今回だけでなく他の徴用工のこともあるので、国会で予算を通さないといけないのですが、国会で過半数を占める野党が反対していますので、そもそも予算を通すのも難しいと思います」

尹大統領の策略か?最大野党代表が検察出頭

最大野党代表が収賄疑惑で検察に出頭

 1月10日、最大野党代表の李在明氏が検察に出頭しました。これは韓国の憲政史上初の出来事だということです。容疑は、李代表が城南市の市長を務めていたときに、市のサッカーチーム「城南FC」への後援金として18億円を集め、その見返りとして建築の許認可などの便宜を図った疑いです。

Q.李代表もいろいろ疑惑が言われていましたが、このサッカーチームの疑惑は初めてですね
(辺氏)
「これは7~8年前の李代表が城南市長時代に追及されていたもので、李氏にすれば一旦終わった話なのです。それをまた蒸し返すというのは、政治的な報復ではないかととらえていると思います」

 1月12日に会見を開いた李代表は、「野党抹殺戦略をやめることを願う。政府は政敵叩きに没頭している」と主張しています。一方、「李代表をターゲットにした捜査は妥当か」と聞いたアンケート調査では、54.5%の人が「法に基づいた捜査だ」と回答しています。辺氏によると「『共に民主党』は、国会で多数を占めている。少数与党の『国民の力』は、来年4月の総選挙で勢力を逆転させたいところ。そのために尹大統領は、自身への批判の矛先を変えようと、李代表をやり玉に挙げているのではないか」と話しています。

尹大統領の狙いは?

Q.選挙に向けて李代表をターゲットにしたのですか?
(辺氏)
「李代表が大統領選挙に負けた後、引退していればここまでやられなかったのですが、最大野党の党首になって、次の大統領選に出てくる可能性があるので『この際叩いておけ』ということです。代表が起訴されると、このままでは選挙が戦えない、ということになります。最大野党『共に民主党』の中には4つの派閥がありますので、尹政権としては、野党が内紛を起こして分裂するのを狙っているのでしょう」

尹大統領にも批判噴出

 一方、尹大統領にも、12月に行われた梨泰院(イテウォン)事故の四十九日の追悼行事に尹大統領が参加しなかったことに、野党議員からは「実に非情な大統領だ」との批判の声がでています。また、警察幹部などが逮捕されるなか、尹大統領の側近である行政安全部長官の責任は問われず、「尹大統領がかばっている」との批判もでています。そして、金建希夫人も「株価操作疑惑」「論文盗作疑惑」「資産申告漏れ疑惑」などが言われています。野党「共に民主党」は、金建希夫人の疑惑を追及するための、特別検事推進タスクフォースを発足して、疑惑の徹底追及をする方針です。

Q.尹大統領は「不正は許さない」という姿勢もあって大統領になったのに、身内には甘いのでしょうか?
(辺氏)
「私が見てもそう思います。今回、李代表の夫人も、法人カードの流用疑惑で調べられています。しかし金夫人に関しては、いろいろ証拠が挙がっていて黒に近いという話もあるのに、一度も検察に呼ばれていないのです。それで野党は、今の尹大統領の息のかかった検察ではどうにもならないので、国会内に特別検事推進タスクフォースを作って、うまくいけば逮捕まで追い込みたいわけです」

射撃するも撃墜できず!北朝鮮のドローンが領空侵犯

北朝鮮のドローン5機が韓国に侵入

 また、北朝鮮との間にも緊張が走っています。12月26日、北朝鮮のドローン5機が韓国に侵入し。うち1機はソウル付近を約3時間飛行、大統領執務室を撮影された可能性も指摘されています。飛行したドローンは、翼幅が約2m、時速100km程度で飛行し、2017年に発見された北朝鮮製のドローンに類似していると言うことです。韓国軍は100発あまり射撃しましたが、撃墜することができませんでした。尹大統領は「ドローン対応の訓練もまともにせず何もしていなかったのか!」と激怒したということです。

Q.時速100㎞というのは、軍事用としては相当遅いのですが、これが見つけられなかった原因ですか?
(辺氏)
「レーダーで探知できなかったのは、あまりにも小さかったからです。韓国のレーダーは、ミサイルを探知するためのものだからです」

韓国軍のドローン対策

 このことを受けて警戒を強めた韓国軍ですが、今度は鳥や風船をドローンと間違えて戦闘機を出撃させてしまっています。今後ドローン対策として、イヌワシを訓練して領空を守る案を検討しているということです。実際にインド軍やフランス空軍なども、ドローン捕獲用にワシを訓練しているそうです。

 今回このドローンに細菌などの生物兵器が搭載されていたら、ソウルは甚大な被害を被ったと予想されています。辺氏によると、この事態に尹大統領は、北朝鮮からの攻撃には1000倍の報復ができる体制の構築を命じているといいます。

Q.尹大統領は、対日ではなく、対北朝鮮に強く出るということですか?
(辺氏)
「北朝鮮に強い姿勢を見せることで、保守の結束を高めようという考えもありますし、北朝鮮に譲歩しない強い大統領だというところを見せたい、というのもあります。また強く出ることで、北朝鮮を自制させようという狙いもあるようですが、逆に金正恩総書記の反発を招くことになるかもしれませんので、野党は『大統領の“戦争も辞さない”などという発言は望ましくない』と牽制しています」

南北軍事合意に効力停止の可能性

 韓国と北朝鮮は、2018年に平壌で締結された南北軍事合意で、国境地域の地上・海上・空中での北朝鮮の体制批判を行う「ビラ散布」や、韓国の歌やニュースを流す「拡声器での放送」などの敵対行為を禁止していますが、北朝鮮のドローンによる領空侵犯を受け、尹大統領は1月4日、「北朝鮮が再び領土を侵犯する挑発を起こしたら、南北軍事合意の効力を停止せよ」と指示したそうです。

Q. 南北軍事合意の効力を停止してしまうと、悪い方向に一歩踏み込んでしまいませんか?
(辺氏)
「南北軍事合意は、軍事衝突や紛争を避ける防波堤です。韓国政府がビラ散布や拡声器での放送を再開してしまうと、過去にあった北朝鮮からの砲撃などがまた繰り返される恐れがあります。そうなると大変な事になると危惧しています」

Q.北朝鮮は、核ミサイルだけでなくドローンも脅威ですね。
(辺氏)
「これまでは偵察用のドローンだったのですが、ドローンで生物化学兵器をばら撒いたり、自爆機で原子力発電所を狙ったりすることも考えられます。実際に韓国と北朝鮮が軍事衝突した場合、韓国は核ミサイルの前にドローンの脅威にもさらされてしまうというのが現実です」

(情報ライブミヤネ屋2023年1月13日放送)

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