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国立大学病院の赤字400億円超へ

【深刻】高齢者の医療費負担1割→3割へ本格議論も、医療自体が存続の危機⁉国立大学病院が過去最大400億円赤字へ…高市改革は崩壊を止められるのか?

 2024年度の医療費は48兆円(厚労省による概算)で、4年連続で過去最高を更新。うち4割を占める75歳以上は一人あたり年間97万4000円で、これを賄う現役世代の負担が年々大きくなっています。そして今、病院の赤字経営・倒産が相次ぎ、医療の存続自体が危ぶまれる危機に直面しています。高市内閣に求められる対策は?日本医師会・松本吉郎会長、医療ジャーナリスト・森まどか氏のダブル解説です。

■国立大学病院“過去最大”赤字で医療崩壊の危機

400億円の赤字見込み

 2025年10月3日、『国立大学病院会議』は会見で、国立大学病院の赤字額が『2023年度=60億円、2024年度=286億円、2025年度(見込み)=400億円超』と発表し、大鳥精司会長は「過去最大の危機を迎えると言っても過言ではない」としています。

施設・設備費を減らすしかなく…

 赤字の要因は支出増加で、『医療費=258億円増、光熱・水道費=9億円増、人件費=325億円増、業務委託費など=89億円増』(前年度比)となっています。そんな中、76億円減っているのが『施設・設備費』で、大鳥会長によると「新たな医療機器が買えない。98%の医療機器等が更新できない状況」ということです。

検査できない状況が起こる恐れ

 患者への影響について問われた東京科学大学病院・藤井靖久病院長は、「人工呼吸器やECMO(エクモ/人工心肺装置)は更新している。ただ、画像診断装置・CTなどは直接患者に影響がないので、長く使う。患者の検査ができないという状況がいつ起こってもおかしくない」と答えました。

日本医師会・松本吉郎会長

Q.都心部もですが、地方ではすでに医療崩壊が起こっていますよね?
(日本医師会・松本吉郎会長)
「完全に医療崩壊が起こっています。経営努力はしていますが、物価高騰や人件費の上昇で経営が立ち行かなくなり、支出・経費が膨らんで、どこも大幅な減益になっています」

■医療機関の倒産件数が過去最多…影響は?

医療機関の倒産相次ぐ

 2024年度、大学病院(国立・公立・私立)は508億円の赤字、病院は約6割で赤字(日本医師会調査:1211病院から回答)、診療所は約4割が赤字(日本医師会調査:6761医療機関から回答)でした。『帝国データバンク』の発表によると、医療機関の倒産件数は2025年度上半期(1~6月)35件と過去最多で、病院9件・診療所12件・歯科医院14件が倒産したということです。

医療ジャーナリスト・森まどか氏

Q.今までなら助かった命も、助からない場合が出てきますよね?
(医療ジャーナリスト・森まどか氏)
「ほころびが徐々に始まっています。赤字の病院がいくつもあることによって医療の質自体が落ちますし、病院が1つがなくなると救急の搬送が遅れることもあると思います。また、病院は地域の雇用も生み出していますので、影響は医療だけに留まりません。地域に病院がなくなることを、重く考えていく必要があると思います」

病院がなくなる影響は

Q.病院がなくなれば、地域にかかりつけ医を見つけて、何かあったら大きな病院に行くというシステムもできなくなりますよね?
(日本医師会・松本会長)
「大きな病院がなくなればそういうことはできませんし、逆に診療所がなくなっても、良くなった患者を戻す場所がなくなるので、本当に崩壊が起きてくると思います」

■『診療報酬』改定で国民負担増?高市首相の考えは

診療報酬とは?

 『診療報酬』とは保険サービスに対して支払われる報酬のことで、国が決めた公定価格のため、物価が上がっても価格を変えることはできません。2年に一度見直しが行われています。2024年度の診療報酬は、全体で0.12%引き下げとなりました(次回2026年度)。

Q.前回引き下げられたのは、国民の負担が大きいからですか?
(日本医師会・松本会長)
「それが、かなり大きな要因だったと思います。ただ、前回の改定までは世の中がデフレ基調でしたが、今は急激なインフレになっていますので、この何回かの診療報酬の改定とは全く違う局面になっていくと思います」

政府の考えは…

 高市早苗首相は「診療報酬・介護報酬について、報酬改定の時期を待たずに前倒しで補助金を措置する」と話していて、上野厚労相は「補正予算の中に盛り込めるよう努めていきたい」としています。一方で、診療報酬が引き上げられると病院の収入は増えますが、患者の医療費・保険料の負担も増えるため、「丁寧に議論を重ねたい」とも話しています。

(日本医師会・松本会長)
「年を越せない医療機関が出ています。ぜひ早急に補助金を出していただいて、その後は安定した財源である診療報酬の改定に結び付けていただきたいと思っています」

■維新案で『医療費』年間4兆円削減へ?日本医師会・会長の思い

維新は医療費削減へ意欲

 日本維新の会は基幹政策として、現役世代の社会保険料を一人当たり年間6万円引き下げるため、財源として国民医療費を年間4兆円以上削減したい考えです。そのため、医療費削減に向けて様々な案を出しています。

3つの維新案

 維新案①は『OTC類似薬の保険適用除外』です。自民と維新は合意書を基に、「制度設計を今年度中に実現」としています。維新案②は『病床を11万床削減』、維新案③は『75歳以上の医療費の窓口負担を、一般所得以下1割を原則3割に』となっています。

 ここで、慶応義塾大学大学院・武田秀太郎准教授が、「抜本的なことを考えた時に、日本でも医療をサービス化・事業化する考えもなくてはならないものになるかもしれない」と指摘しました。

Q.医療=商品という考え方は、日本医師会としてはどうですか?
(日本医師会・松本会長)
「『自身の負担だけものすごく払ってください』というのは、ちょっと違うのではと思います。日本は、国民皆保険の下で、国民の安心安全に繋がるような医療政策をずっと行ってきました。財源でいえば税金・保険料による共助と自己負担の3つで成り立っていますので、それをバランス良く考えていくしかないのではないでしょうか。医療のない所に人が住むことはできませんので、ぜひ今の日本の国民皆保険を守っていただいて、国民がどこでも安心して暮らせるような現状を続けていただきたいと思います」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2025年10月30日放送)

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