記事
【独自解説】誤送金返還のウラに“荒業”!?業者が恐れる「国税徴収法67条1項」とは?阿武町に多数のクレーム、一方で10倍に激増したモノも…専門家が解説
2022年5月27日 UP
山口県阿武町(あぶちょう)が、新型コロナ対策の臨時給付金4630万円を誤って振り込んだ問題で、5月24日阿武町が会見を開き「約4300万円を確保できた」と発表しました。また差し押さえ時、決済代行業者の口座に3社で600万円の残高があったことが判明しています。
阿武町側代理人の中山修身弁護士によると、「この600万円が全て田口容疑者のものかどうかはわからず、ほかの客のお金が入っている可能性もある」とのことです。これまでの返金に至った経緯やその方法などを三井住友銀行の元支店長・菅井敏之さんと現地を取材した読売テレビの西山耕平ディレクターが解説します。
Q.日本は世界で4番目にネットカジノを使っているとのことですが、それだけたくさんの人が使っているのに、決済代行業者3社の口座に600万円というのは少ないと思いませんか?
(元銀行支店長 菅井さん)
「振り込まれた“円”を5千ドル分とか1万ドル分とかのコインにする取次ぎをしているだけなので、手数料だけが残っているということです。逆に滞留しているとおかしいんですよ。入ってきたお金はどんどん動かすものです」
Q.田口容疑者は国民健康保険税を払ってなかったということで、このことが返還に至る大きな要因になったとのことですが?
(西山ディレクター)
「この国民健康保険税の滞納を取り立てるために、田口容疑者が入金した3つの決済代行業者の口座に対して差し押さえを行いました。この差し押さえの根拠となったのが『国税徴収法47条』で、『督促状』を出して10日以内に滞納者が完納しない限り、財産を差し押さえなければならないことになっています」
Q.実際にどういう動きをしたのですか?
(西山ディレクター)
「中山弁護士によると、『5月19日に東京に出張して3つの決済代行業者の事務所にも行って、“差し押さえ”と“即時に払え”という“取り立て命令書の紙”を置いて帰った』とのことです。その後20日に入金があったのですが、中山弁護士は『なぜ決済代行業者が振り込んできたかを私は知りません。回収法は“示談”でも“民法上の取引”でもない』と言っています」
Q.中山弁護士は「私は知りません」と言っていますが、なぜすんなりと業者が返金に応じたと思いますか?
(西山ディレクター)
「亀井正貴弁護士によると、『国税徴収法67条1項をチラつかせたんじゃないか』と言います。これは『滞納額100円を取り立てるために、滞納者のどの財産でも処分して良いとする“荒業”的な手法を認める法律』で、『警察の捜査が入ることと同じくらい嫌がられる』とのことです」
Q.阿武町の住民の反応は?
(西山ディレクター)
「『諦めていたお金が返ってきたのはホッとしている』や『阿武町の職員はよくやっているが、仕事量が多くてかわいそうだ』という意見とともに、『お金が返ってきたからチャラではない。体制の抜本的見直しを』という厳しい意見もありました」
Q.阿武町役場には、毎日クレームの電話が入って対応に大忙しという話です。ほかにも増えたものがあると聞きましたが?
(西山ディレクター)
「事件が発覚した後、阿武町の“ふるさと納税”が、前年度と比べて10倍に増えたということです。阿武町を応援するコメントも添えられていると言います」
(情報ライブミヤネ屋 2022年5月26日放送)


