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【北朝鮮】男女のラブロマンスに汚職まで…“異例ずくめのドラマ”が国民的人気に!?踏み込んだドラマ放送の背景にある金政権の思惑
2025年8月25日 UP
今、北朝鮮では、生々しい男女のロマンスや、官僚主義の変革などを描いた“異例のドラマ”が国民に大人気だといいます。当局が厳しく監視しているとみられる国営メディアで、踏み込んだドラマが放送された背景には何があるのか?『コリア・レポート』編集長・辺真一氏の解説です。
■“異例ずくめのドラマ”が高視聴率で国民に大人気⁉
朝鮮では『白鶴(ペクハク平原の新しい春』というドラマが『朝鮮中央テレビ』で放送されました。2025年8月3日の『東亜日報(電子版)』によると、あらすじは貧しい農場で、腐敗と官僚主義に立ち向かい戦う、党・下級幹部が、村を社会主義の理想郷に変革していく内容で、『朝鮮日報』によると、2025年4月16日~6月24日の間に22話放送されたということです。そして、北朝鮮対外宣伝用月刊誌が「高視聴率を得た」と報道したということです。
Q.「高視聴率を得た」ということですが、北朝鮮で視聴率は分かるんですか?
(『コリア・レポート』編集長の辺真一氏)
「北朝鮮には、世論調査機関や会社というのはないんです。世論調査をやったなんて話は聞いたことはないですが、おそらく、この番組を北朝鮮のメディアや新聞や雑誌が大きく取り上げたことで、これはもう“好評を得ている・視聴率が高い”という判断なのではないかと思います」
■男女のロマンスや賄賂・横領…放送されるワケ
ドラマでは社会的格差のある男女の交際が描かれていて、「朝鮮日報」は、「体制の宣伝目的が強く、個人の内密な感情表現に乏しい北朝鮮作品の中で、愛と別れを前に苦しむ青年たちの感情を真っ向から取り扱っている」と報じました。
(辺氏)
「一昔前は、男女の恋愛というのは、それはもう『とんでもない』という受け止め方がされていましたが、金正恩政権になって、変わってきました。これが本来あるべき姿なんですが…。逆に言うと北朝鮮も少し余裕が出てきたのかなと感じます」
さらに官僚への賄賂のタバコや、告発手帳をもとに、不正を糾弾するシーンがあるといいます。2025年7月27日の『ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)』は、「都市と農村の格差、腐敗した党幹部への不信など、北朝鮮社会の現実を反映している」と評価しています。
(辺氏)
「官僚主義というのは、昔も今も変わりません。金正恩総書記は、現地指導や工場を視察するたびに、幹部たちを怒鳴り散らしています。その最大の理由は、幹部が慢心しているからです。それを実際に、こういう形で映像化しているんだと思います」
さらに、エプロンを付けた父親が母親と娘に食事を用意するというシーンもあり、これは北朝鮮では大変珍しいということで、2025年7月22日の『朝鮮日報(電子版)』は、家父長的な認識の根強い北朝鮮で、男性が家事や育児に参加する家庭的な父親の姿を演出しているとしています。
北朝鮮の文化事情ですが、7月22日の『朝鮮日報』によると、2020年に韓国の映画などを見た者に、最大で懲役15年の刑を宣告するという『反動思想文化排撃法』を制定しています。
そんな中での“異例のドラマ”放送の理由について、2025年7月27日の『ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)』は、「脱北者によると『従来のプロパガンダ(政治宣伝)番組は現実離れして敬遠されている』ということで、ロマンス関連の演出を強化したのではないか」としています。
Q.少し前の北朝鮮のドラマは、西側諸国の資本主義に染まりかけている人たちを皆で叱って、「やっぱりこの国が最高だ!」みたいなものでしたよね?
(辺氏)
「そういったドラマは非常にマンネリ化していて、しかもリピート放送が多いので、見飽きていると思います。汚職や賄賂が描かれていますが、実際に入学や就職する際、あるいは労働党員になるときに、賄賂が必要だと指摘されています。こういったところが今の北朝鮮の問題点です」
また、党内の引き締めもあるのでは、という分析もされています。2025年4月28日の『KOREA WAVE/AFPBB News』によると、農村発展をけん引する地方幹部の模範像を提示することで、党内の規律を正す狙いがあるといいます。また今年は、『国家発展5か年計画』の最終年ということで、党幹部に奮起を促す狙いもあるのではないかということです。
(「情報ライブミヤネ屋」2025年8月5日放送)


