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“ニセ警察官”詐欺急増

【急増】ニセの警察手帳に逮捕状、存在しない誓約書まで…ビデオ通話で巧みにだますニセ警察官詐欺の手口 警察庁も「本物はメッセージアプリで連絡しない」注意喚起

 いま、“ニセの警察官”をかたる詐欺が急増し、新たな手口も続々と出てきています。だまされないために気を付けるべきこととは?特殊詐欺に詳しいジャーナリスト・多田文明氏が、実際にあった被害ケースを基に解説します。

■“言葉”ではなく“視覚”でだます?急増する『ニセ警察官』詐欺

ニセ警察官詐欺の新たな手口

 警察庁によると、2025年1月から3月までの特殊詐欺の被害額は約276億円で、そのうち、“ニセ警察官”をかたる詐欺の被害額は171億円にのぼり、増加の一途を辿っています。

 手口としては、ニセの警察官が出てきて、ニセの警察手帳や逮捕状をビデオ通話で見せてきたり、新しい手口では『守秘義務命令書』などと実在しない書類を見せてきたりするとのことで、これらは、被害者が家族に相談しないようにする目的があるとみられています。

ジャーナリスト・多田文明氏

Q.今は、あえて顔を晒すようになっているんですね?
(ジャーナリスト・多田文明氏)
「そうですね。おらくAIなどで作った顔なんだと思います。これまでは、電話をして“言葉”でだましていましたが、今はLINEなどを通じて、ビデオ通話をさせながら“視覚”でだますようになり、これまで警戒心のなかった30代から50代の若い世代も被害にあっているんです」

■“ニセ警察官”詐欺の被害ケース①:劇場型詐欺

被害ケース①劇場型詐欺

 実際にあった被害のケースを見ていきます。

 2025年4月8日、岩手県盛岡市在住の30代の男性に、ニセの“大阪府警の刑事”を名乗る人物から非通知で「逮捕した犯人グループがあなたの口座を使用していた」という電話がありました。さらに“警部”を名乗る別の男からも電話があり、LINEのビデオ通話に誘導され、その男にニセの警察手帳を見せられました。

 そして、今度は“大阪地検の検察官”を名乗る男が出てきて「来週までに資金調査を終えなければ逮捕される。指定の口座に入金すれば調査後に返金する」と言われ、男性(30代)は、無実を証明する資金調査という名目で、約50万円をATMで振り込んでしまったといいます。

 しかし、その後、不審に思い大阪府警に問い合わせたところ、“詐欺”だと判明したということです。

■“ニセ警察官”詐欺の被害ケース②:資金洗浄を強要

被害ケース②資金洗浄を強要

 2025年5月12日、大分県中津市に住む40代の男性の元に、“徳島県警の捜査2課”を名乗る人物から「詐欺事件の被疑者が持っていたキャッシュカードのうち、あなたの口座が犯罪に利用されている。口座を止めて資金洗浄する必要がある」と電話がありました。

 この件でも、同様にLINEアカウントを交換し、ビデオ通話をすることになります。そして、ニセの警察手帳を見せられ、信用してしまった男性(40代)は、指定された口座にお金を振り込み、約300万円をだまし取られました。

Q.なぜ、被害者が住んでいる場所から遠い場所の警察を名乗るのでしょうか?
(多田氏)
「私が取材した東京在住の方は、ニセの岩手県警から電話がきて、『すぐに出頭できますか』と言われたそうですが、遠いとすぐには行けないですよね。そういう所を上手くついて、LINEでやり取りするという流れになるんです」

■“ニセ警察官”詐欺の被害ケース③:受け渡しに“紙袋”

被害ケース③受け渡しに“紙袋”

 また、警察官をかたる詐欺でも最近急増しているのが、受け渡しに“紙袋”を使うというものです。

 被害に遭ったのは、宮城県大河原町(おおがわらまち)に住む70代の女性で、2025年4月上旬、被害女性の自宅に“総務省職員”を名乗る男から、「個人情報が漏れ不正に携帯電話を契約されている。2時間以内に被害届を出さないと通信サービスが止まる」と、電話がありました。

被害は約3100万円に…

 その後、ニセの“警察官”の男から「押収した被害女性名義の通帳の預金が、犯罪収益かどうか識別してもらう必要がある」と連絡がありました。
 
 男の指示を受け、被害女性は紙袋に現金1400万円を入れ、自宅の物置に置き、それを男が持ち去りました。その後も連絡は続き、被害女性は紙袋に現金1700万円を入れ、物置に置き、再び男が持ち去ったといいます。被害女性の家族が警察に相談したことで被害が発覚し、被害金額は約3100万円にのぼるとのことです。

Q.犯罪収益かどうかは現金を見ても分からないと思うのですが、そこでおかしいと気付かないものなんでしょうか?
(多田氏)
「本人をパニック状態に陥らせて、こういう話を信じさせているんだと思います」

全国で相次ぐ被害…“受け子”は外国人?

 “お金を入れた紙袋を置く”という同様の被害は、全国各地で相次いでいて、2025年5月には、福岡市で“郵便受けの下”、福井県鯖江市では“自宅のガスボンベの裏”、同年3月には、秋田県大館(おおだて)市では“自宅の前”、鹿児島県日置市では、“コンビニの敷地内にビニール袋に入れて置く”というものもあったといいます。

 そして、2025年5月16日には、マレーシア国籍の35歳の男が、関西空港から出国するところを逮捕されました。複数人と警察になりすます詐欺の“受け子”とみて警察が捜査していて、男は、鹿児島県南さつま市で、自宅の前の路上にバッグを置くように指示し、現金2800万円を持ち去った疑いがもたれています。

Q.外国人を“受け子”として雇うケースが増えているのですか?
(多田氏)
「今、日本では闇バイトの募集は、若い人たちに注意喚起がされているので、なかなか人が集まらないんだと思います。“受け子”でも、お金を直接受け取る場合は、日本語を話せないといけませんが、紙袋を取りに行くだけなら言葉を話せなくてもいいので、わざわざ来日させて“受け子”にさせるという手口も出てきています」

■突然かけられた嫌疑に謎の『守秘義務誓約書』

突然、国際電話がかかってくる

 ある女性にかかってきた国際電話。自動音声の誘導に従うと、繋がった相手は“携帯電話会社カスタマーセンターのヒラモト”と名乗る人物でした。

(携帯電話会社カスタマーセンター・ヒラモトを名乗る人物)
「携帯電話の不正利用・不正契約というものをされている可能性があります。ご自身が契約された記憶や心当たりがないのであれば、警察の方に被害届と無関係証明書を発行された方がいいと思うんですよ」

 男は、福男県警へ電話を繋ぐと説明。そして、新たに出てきたのは“福岡県警捜査2課のサトウマサル”を名乗る人物でした。

嫌疑がかけられていると説明

 ここからLINEでの通話を促し、ビデオ通話で警察手帳を見せた上で、マネーロンダリングで逮捕された『フジイ』という人物の押収物の中から、女性名義の通帳やキャッシュカードが見つかり、女性にも嫌疑がかけられていると説明します。

(福岡県警捜査2課・サトウマサルを名乗る人物)
「今、事件を水面下で調べている途中ですので、絶対に口外しないでください。『守秘義務誓約書』というものをPDFで送りましたので確認してみてください」

地元警察に相談すると伝えると…

 サトウを名乗る人物は女性に『守秘義務誓約書』を読み上げさせた上で、捜査のために口座情報を教えるように要求してきたため、女性は不安に感じ、「最寄りの警察に行く」と伝えると、態度は一変。

(福岡県警・サトウを名乗る人物)
「話をあまり理解されていなかったですか?“守秘義務”って意味が分かります?」

さらに上司も登場

 さらに“上司のオオノ”を名乗る人物も登場し、脅しともとれる言葉を口にしてきます。

(福岡県警捜査2課・オオノを名乗る人物)
「他の警察官に管轄外にもかかわらずお話しして、逮捕・勾留とか身柄の拘束をされている人もいるので、あまり軽く考えてほしくないんですよ。この守秘義務」

「銀行員の方は信用してほしくない…」と指示

 最後に『査察調査』の名目で、指定した口座へ金の振り込みを要求し、ここでも細かい指示がありました。

(福岡県警・オオノを名乗る人物)
「銀行員の方は信用してほしくなくて、振り込みの内容を銀行員の方から聞かれるかもしれないんですけど、ご自宅のバリアフリー設備のリフォームという形でお伝えしていただけたら特に問題ない」

Q.こういった電話は、海外からかかってくるんですか?
(多田氏)
「国内からだと摘発されるのと、同時並行的に大人数でやっていると思うので、海外から電話をかけている可能性はあります」

■警察庁も注意喚起「警察手帳や逮捕状の画像は送らない」

ニセ警察官にだまされないために…

 警察庁はニセ警察官にだまされないために注意を呼び掛けています。

本物の警察官は…
●電話で『捜査対象』と伝えません
●メッセージアプリで連絡しません
●警察手帳や逮捕状の画像を送りません
●守秘義務の誓約書は存在しません
●個人のスマホに突然ビデオ通話しません

 もし、警察官を名乗る連絡があった場合には、相手に『所属』『担当部署』『氏名』『内線番号』を確認し、最寄りの警察署に連絡してほしいということです。

(「情報ライブミヤネ屋」2025年5月21日放送)

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