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【独自解説】北朝鮮 国境封鎖から3年半… いよいよ“開放”のときか 裏に金総書記が掲げる一大プロジェクト
2023年8月18日 UP
3年半にわたり国境が封鎖されている北朝鮮ですが、先日テコンドーの世界大会に向けて代表団が中国へ移動し、人的往来が本格再開するのでは?と言われています。今後どういう動きになるのでしょうか?龍谷大学の李相哲教授が解説します。
北朝鮮から国外に人の移動 “国境開放”の兆し?
北朝鮮から国外へ人の動きがありました。テコンドーの選手団数十人が、カザフスタンで開催される世界大会に派遣されたのです。選手団は14時間かけて北京に行き、そこから飛行機でカザフスタン入りしたと思われます。現在中国の北京にある北朝鮮大使館内の宿舎にいる留学生など300~400人が北朝鮮に帰国し、その後をテコンドーの選手団が使ったとみられるそうです。
Q. 北京の北朝鮮大使館には400人も宿泊できる施設があるのですか?
(龍谷大学 李相哲教授)
「昔から宿泊施設があります。北京を経由してほかの国に行く外交官などは、必ず大使館に宿泊します。今回、100人近い選手団が行くので、その分、今いる人を出さないといけないのだと思います」
8月11日中国の旅行会社コリョ・ツアーズはホームページに、北朝鮮からの情報として「まもなく“国境開放”する」と伝えました。対象者は「当面北朝鮮国民のみ」で、国境封鎖から3年半以上国外に滞在している労働者・留学生・外交官など数千人が帰国できるということです。その後に、海外の要人、最後に観光客になるということです。北朝鮮ツアーを扱う丹東の旅行会社は「この辺は同業者が多かったが“新型コロナ”以降かなり潰れた。7月か8月に国境が開放されると聞いていたが、今のところ変わらない」と話しています。
Q.国境開放が遅れた理由はコロナ対策だけなのでしょうか?
(李教授)
「多くの専門家がそこを疑問に思っています。考えられるのは、国内の締め付けをコロナを理由に強くしているのではないか、ということです。コロナを理由に外から入って来るのを制限するだけでなく、国内でも規律を厳しくして、移動や外出の制限をして、“コロナ禍”の3年半を乗り越えていると見られています」
平壌開放のポイントはロシアと中国に
北朝鮮は、2020年の1月に他国と比べて早い段階で国境封鎖を行いました。その後しばらくは国内の感染者ゼロを主張し、大人数が集まる“密”な状態でも誰もマスクをしていませんでした。しかし2022年5月、国内初の感染者を確認。金総書記も異例のマスク姿を見せていましたが、およそ1週間後には、発熱者の累計が148万人を超えるという報道がありました。そして、ことし7月になって住民のマスク着用義務が解除されたのか、ノーマスクの映像が公開されました。また、7月27日の戦勝記念のパレードには、ロシアと中国からショイグ国防相、李政治局員など要人が平壌を訪問しています。李教授によると「コロナ後初めての海外から人を受け入れたことで、これを機に“国境開放”の動きが始まったとみられる」ということです。
Q.北朝鮮がいち早く国境封鎖を行った理由は?
(李教授)
「北朝鮮は、国民の栄養状況も良くないですし、医療体制も十分ではありません。そんな中にコロナが蔓延してしまうと収拾がつかなくなるという恐怖感があったと思います」
Q.ロシアのショイグ国防相が平壌を訪れたということがポイントでしょうか?
(李教授)
「今回、ショイグ国防相は、代表団を携えて平壌入りしたのです。これまで北朝鮮が、一番コロナを警戒していたのは平壌です。地方は、確認できませんが大量の死者が出ていると思われます。今回、中国からも代表団を平壌に入れているので、平壌を解放することに決めたのは、国境開放に向けて重要なポイントではないでしょうか」
今年6月に中朝国境で貨物トラックが運行を再開したということで、中朝貿易が本格再開かといわれています。また、9月開催の中国・杭州アジア大会に北朝鮮が200人ほどの選手団を派遣するのではないかともいわれています。そして前回はコロナを理由に予選を途中棄権した、サッカーワールドカップですが、2026年大会はアジア予選出場の意向を示しているということです。もし北朝鮮が出場すると、平壌で日本代表と対戦するかもしれません。
金総書記“国境開放”へ向けての最大の目的
李教授は、「“国境開放”へ向けての最大の目的は、金総書記が掲げる一大プロジェクトの実現」のためだといいます。
Q.一大プロジェクトとは?
(李教授)
「コロナ前、北朝鮮は食糧難にあえぎながらも大型プロジェクトをたくさん行ってきました。例えば、元山地域に70億ドルの大型プロジェクトをやりかけたのですが、“コロナ禍”で止まってしまいました。他にも金正恩総書記がしようとしたプロジェクトはすべて失敗しています。今回、国境を開放して中国資本を入れて、元山地域のリゾートで中国資本とカジノの独占契約を結んで、運営は任せてマージンをもらおうとしているようです」
(「情報ライブ ミヤネ屋」2023年8月17日放送)


