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【緊急取材】長引く“コロナ後遺症” 若者や無症状でも…思考力が低下する「ブレーンフォグ」とは?
2021年7月13日 UP
“コロナ後遺症”に苦しむ患者
“新型コロナ”に感染した後で、“コロナ後遺症”に苦しんでいる人たちがいます。若者や無症状だった人でも、長く後遺症に悩まされているケースもあるといいます。
(神奈川県在住の女性(49))
「1年以上経っていて、倦怠感は発症から今も抜けなくて、ほとんど日中は寝ているような状態」
新型コロナの感染者増加と共に、いま増えているのが“コロナ後遺症”です。国の調査によると、新型コロナで入院した患者に診断から半年後の症状を聞いたところ、21%で疲労感・倦怠感、13%で息苦しさ、11%で思考力・集中力の低下の症状などが残っていることがわかりました。
後遺症の専門外来をおこなっている医師は後遺症について…
(ヒラハタクリニック・平畑光一院長)
「最近統計を取っていて気になるのは、30代の方がだいぶ増えてきたこと。おそらく若い方が感染して後遺症になるパターンが最近は多いのではないかなと思っています」
クリニックを訪れた後遺症患者のうち、20代と30代が全体の半数近くを占めているといいます。さらに、その症状にはある特徴が…
脳の霧?「ブレーンフォグ」とは…
(ヒラハタクリニック・平畑光一院長)
「一番重要なのは、やはり倦怠感とブレーンフォグなんですね」
ブレーンフォグ。直訳すると“脳の霧”。その名の通り、脳に霧がかかったように思考力が落ち、記憶障害も出るといいます。
(ヒラハタクリニック・平畑光一院長)
「何をしようとしていたかわからなくなるとか、考えがまとまらないとか。書いてある字はわかるけど、どういう内容か読み取れない、そういったことが起きます」
神奈川県内に住む49歳の女性も、ブレーンフォグに悩まされています。
(神奈川県在住の女性(49))
「スーパーで買い物してレジに行ったら、同じものが2個入っているんですよ。レジ通している時に、なんで卵2つあるんだろうみたいな」
去年3月、新型コロナとみられる症状が出ましたが、当時はPCR検査を受けられませんでした。2か月後にようやく検査を受けられたものの、結果は陰性。しかし、この1年間、ひどい倦怠感や全身の痛みに悩まされているといいます。
立ったままでいることが難しく、食事の支度も座って行います。1日のほとんどを横になって過ごし、外出も必要最低限。さらに、これまでには考えられなかったことが起きているといいます。
(神奈川県在住の女性(49))
「一番ひどかったのは、自分の服がわからなくなっちゃったとか。家で洗濯していて『これ誰の服だっけ?』って。家族に聞くと『ママのでしょ』って言われちゃうような。前の日に着ていた服が自分の物だってわからないような状況とか」
(神奈川県在住の女性(49))
「自分の動きをうまく制御できない時があって、フライパンに油を入れたいのに、お肉に油をかけようとしていて、ダメってわかっているのに止まれないとか、結構ビックリしましたね」
様々な検査を受けたが、原因がわからなかったという女性。2020年12月、コロナ後遺症の専門外来を受診したところ、ある病が原因であることがわかりました。
(神奈川県在住の女性(49))
「症状的にも経過的にも後遺症で間違いないし、筋痛性脳脊髄炎、MEってやつですね、これに移行している可能性が高いと」
理解が進まない病…ME/CFSとは?
ME/CFS【筋痛性脳脊髄炎(きんつうせい・のうせきずいえん)/慢性疲労症候群(まんせいひろうしょうこうぐん)】という病気。半年以上にわたって強い疲労感が続き、睡眠障害、認知機能障害を伴います。頭痛、関節痛、発熱なども現れるといい、ウイルスなどの感染症をきっかけに発症すると言われています。
実際に、この女性を診察した国立精神・神経医療研究センターの山村医師によりますと…。
(国立精神・神経医療研究センター 山村隆 特任研究部長)
「全体として筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の患者さんというのは、新型コロナを発症した方の中の5%~10%といったことが推定されるかと思っています」
悪化すると寝たきりになる可能性もあるという、この病気。しかし、発症の詳しいメカニズムはわかっておらず、異常を見つけにくいといいます。
(国立精神・神経医療研究センター 山村隆医師 特任研究部長)
「患者さんが病院に行って『あなたはMRIで異常がないから仕事をしなさい』と言われたことを信じて仕事に行ったら、1週間もしてすごく悪化してしまって寝たきりになって…。はたから見ていて、ますます理解できないということで、患者さん本当に困ってらっしゃるんですね」
49歳の女性も、実は、20歳の娘が同じく後遺症だと診断されたのだが…。
(神奈川県在住の女性(49))
「診断がついて、娘はその時ちょっと泣いていましたね。嫌でじゃなくてホッとして、後遺症と言っても誰も認めてもらえないし、『精神的じゃないの?』とか『違うんじゃない?』みたいな言われ方をしていたらしいので、(診断がついて)ホッとした部分が」
(神奈川県在住の女性(49))
「手伝ってもらわないと自分だけではどうにもできないような体調なので。『何やってんの、こんなのもやらないで』って、家事とか主婦の方だとあると思うんですよ。家族の理解とか職場の理解はとても大事ですね」
つらい症状に加え、周囲の理解が得られにくいことで、さらに苦しむ人も多いというコロナ後遺症です。
長引く“コロナ後遺症” 専門家が解説
岡山大学病院のコロナ・アフターケア外来で多くの症例を見てきた大塚文男(おおつか・ふみお)副病院長に話を聞きました。
Q:今回の49歳の女性患者の場合は、コロナに感染してもなかなかPCR検査を受けられなかったが、やはり早期治療は大事ですか?
(岡山大学病院・大塚文男副病院長)
「このケース非常に難しいと思うんですけれども、こういったME/CFS(筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群)、こういった倦怠感というものを中心とする症状というのが、実は感染があって起きた場合と、それ以外の場合もありますし、感染が本当にこのコロナのPCR検査の陰性陽性っていうのが、どの程度までこの状態を当時捉えていたかと、こういったことも判断が非常に大事、難しいところだと思いますね。ですからやはり早期にこれを診断して疑っていくというのは後遺症を少しでも短くする、軽症化するという点でも大事だと思います」
Q:決定的な治療はない?
(岡山大学病院・大塚文男副病院長)
「決定的な治療は難しい。データに基づくと、ワクチン接種により改善する可能性は期待できると思います」
Q:大塚先生が診察している外来では、どういう症状を訴える方が多い?
(岡山大学病院・大塚文男副病院長)
「来院45人に93症状を聞き取ったが、倦怠感、嗅覚障害、頭痛、不安感、味覚異常、脱毛など。これらの症状が1か月ほど続いていたら、かかりつけ医や外来などに相談を」
Q:患者に、どのような対応をしている?
(岡山大学病院・大塚文男副病院長)
「『医療面接』という、しっかりと問診して話を聞いていく必要がある。もともとどういうご病気があって、そこでどうコロナの感染症になってしまったのか。あるいは、コロナの闘病生活はどうであったか。だいたい1時間くらいかけて話を聞き、情報を収集していくのが大事」
Q:どんな症状が多い?後遺症の期間は?
(岡山大学病院・大塚文男副病院長)
「ブレーンフォグ(脳の霧)と言われるもやもや感、立ちくらみ、頭重感などの症状が5~6月から増えている。後遺症の期間は、数か月か、いつまで続くかは分からない」
Q:無症状でも後遺症を患うということは、自分が“新型コロナ”感染者だと気づかないまま後遺症状に悩まされている人がいるのでは?
(岡山大学病院・大塚文男副病院長)
「後遺症を疑う場合は、かかりつけ医に相談を」
“新型コロナ”後遺症の相談窓口としては、東京都には「コロナ後遺症・相談窓口」、大阪府には「新型コロナ受診相談センター」があります。
倦怠感が続くなど、後遺症かなと感じたら各自治体の相談窓口へご相談下さい。
(情報ライブミヤネ屋 2021年7月12日放送)


