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【独自解説】ついにバナナも!?値上げラッシュは「最低でも2~3年続く」一方ディズニー・ニトリなどで値下げも…「“企業淘汰”が進んでいる証」専門家が分析
2022年6月13日 UP
日銀・黒田総裁による“値上げ受け入れ発言”の波紋が広がる中、なんと年内の食品値上げが、1万品目を突破することが分かりました。“物価の優等生”と言われる「バナナ」にも、フィリピン政府から異例とも取れる値上げの要請が!一方、相次ぐ値上げラッシュの中、あえて“値下げ”に踏み切る企業もあるといいます。その裏には一体どんなワケが?経済評論家の加谷珪一(かや・けいいち)さんが解説します。
止まらぬ“値上げ”ラッシュ、ついにバナナにも
大手企業から続々と値上げが発表されています。ユニクロでは秋冬の定番商品を1000円値上げし、定番のフリースは2990円になるということです。またコカ・コーラ ボトラーズ ジャパンでは、10月1日出荷分以降、一部の商品を除き最大18%値上げするということで、500mlのコカ・コーラが、税抜き160円になってしまうということです。エスビー食品でも、9月1日納品分から計229品を値上げし、セブン-イレブン・ジャパンでは、7月4日からコーヒーなどが最大40円の値上げになります。
Q.企業も値段を上げざるを得ないという状況になってしまったということでしょうか?
(経済評論家 加谷珪一さん)
「はい。今はありとあらゆる価格が上昇していますので、企業からすると“もう利益が取れない”という状況ですから、値上げをしないとやっていけないというところまで追い込まれているのだと思います」
そんな中、6月8日に駐日フィリピン大使が開いた緊急記者会見で、フィリピン政府は日本の小売業界などに「バナナを値上げして適切な価格で販売して欲しい」と訴えました。この7年間ずっと横ばいだったフィリピン産バナナの小売価格について、なぜこのような“異例のお願い”があったのでしょうか?実は今現地では、燃料代の高騰などで上昇した生産コストが農家の負担となり、利益が出ない状態になっているからだというのです。
Q.日本のバナナの多くはフィリピンから輸入していますよね?
(加谷さん)
「日本のバナナは基本的に輸入でまかなっていて、約8割がフィリピン産です。現地からすると、燃料代や肥料代が上がっているのもありますし、ここ数年で経済水準も非常に上がっているので、人件費も1.5倍~2倍に上がってしまっているんです。そのため、にっちもさっちもいかないというのが正直なところではないでしょうか」
Q.フィリピンで優良なバナナを育てるためのノウハウを日本企業が持っていって、日本企業がまとめて買ってくるということですから、恐らく日本企業主導、買い手市場になっている中での、フィリピン政府の切実なお願いということですよね?
(加谷さん)
「やはりフィリピンからすると、日本は優良なお客さんということになりますから、なんとか状況を理解して欲しいということなのだと思います」
企業側の苦悩…コスト高の「価格転嫁」の実情
今回の値上げについては、企業側も苦悩しています。企業に“コスト高を価格に転嫁できたもの”がどれくらいあるか?を聞いたアンケートでは、「多少なりともできた」と回答する企業が73.3%あるものの、「すべて価格転嫁できている」と答えた企業は6.4%止まりです。そして、「全く価格転嫁できていない」と答えた企業は、実に15%という結果でした。
さらに、今回のアンケートをもとに調べた価格転嫁率は、44.3%でした。例えば、仕入れコストが100円上がった場合に、本来なら販売価格にそのまま100円乗せたいが、実際には44円しか価格転嫁できなかった、つまり企業側が56円かぶっているということです。水産食品業者は、「秋には再度値上げしないと採算が取れない」と答え、自動車運送業者は、「大手にお願いしても、『代わりの運送会社はいくらでもある』と言われ、転嫁してもらえない」という実情があると言います。
Q.運送会社の方は、また大変らしいですね?
(加谷さん)
「日本は商習慣に問題があり、お客さんのほうが強すぎるということがあります。特に企業には系列があって、元受けの会社は下請けの会社をたたいてしまうんです。ある意味ではコスト削減になりますが、これからはそういう意識も変えていかないと、価格転嫁できなくて本当に苦しい状況になりますから、商習慣を見直す一つのチャンスではないかなと思います」
あえての値下げも…裏に潜む“企業淘汰”の進行
Q.このような“値上げ”はいつまで続くのでしょうか?
(加谷さん)
「これまでの値上げは去年後半から続く原油高によるものです。今月以降の値上げは円安とウクライナ情勢が加わった物価高ですので、この3つの要因が好転しなければ、安くなることはないです。最低でも2~3年は続くのではないかと思います」
そんな中、あえて“値下げ”する企業もあります。オリエンタルランドは、6月下旬から8月末までの期間、「夏の東京ディズニーランドを楽しんでもらうため」ということで、4~11歳までの幼児・小学生について、東京ディズニーランド・ディズニーシーの1デーパスポートの価格を半額にします。さらに、バーミヤンでは、「コロナ禍で外食を控えていたお客様に、手ごろな価格帯で外食を楽しんでほしいから」という理由で、人気メニュー16品目を値下げします。ニトリは6月20日まで、最大425アイテム値下げするということです。「商品の販売だけでなく、商品企画や材料調達などを自前で一貫して行っているため」値下げできるということです。加谷さんによると「今値下げができるのは、体力があり、利益を出している企業。値下げすると、最初は利益が少ないが、最終的に販売数量を稼ぎ十分な利益になる」のだと言います。
Q.値下げは嬉しいのですが、どこもかなり体力のある企業ですね?
(加谷さん)
「そうなんです。消費者からすると良い話なんですが、しかし逆に言うと、企業の中で“淘汰が進んでいる”ということです。体力のない企業はこれから厳しい状況に置かれてしまう、ということの裏返しになるのです」
(情報ライブ ミヤネ屋 2022年6月9日放送)


