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勅使河原秀行本部長の会見に「異議あり!」

【独自解説】“統一教会”会見に「異議あり!」紀藤弁護士と鈴木エイト氏W解説

 9月22日に行われた“統一教会”の三度目の会見で、教団による被害の現状や献金方法などについて改革の方向性などが示されましたが、教団追及の急先鋒は、この会見をどのように見たのでしょうか?紀藤弁正樹護士と鈴木エイト氏の二人が解説します。

違和感①冒頭の謝罪 「被害者のことを考えていない」

紀藤正樹弁護士

Q.なぜ田中会長は出てこなかったのでしょう
(紀藤弁護士)
「いろんな質問が飛び交うので、田中会長では力不足と思われるのと、謝罪の中で“日本国政府”という言い方をしている点から、教団本部のある韓国からの指示の可能性が高いと思います。韓国から見たときの、田中会長の指導力に、疑問符が付いた可能性があると感じます。『田中会長が2回会見をしても、報道も日本国政府の動きも止まらないじゃないか』と、韓国の本部が焦りを持っているのではないかと思います」

ジャーナリスト 鈴木エイト氏

(鈴木氏)
「教団内部の音声が出た、週刊誌報道の影響もあると思います。そこを突っ込まれたくないんだと思います」

冒頭の謝罪

 会見の冒頭、勅使河原氏は「安倍元首相の銃撃事件以降、様々な報道を通じて世間を大変お騒がせしましたこと、並びに日本国政府、そして国会議員の皆様に、大変なご迷惑をおかけしましたこと、心からお詫び申し上げます。大変申し訳ありませんでした」と述べ、「あくまでも個人的な思い」と前置きした上で、「山上容疑者の家庭連合に対する恨みが、今回の犯行の動機であると話していることを聞いて、私は大変胸が痛みました。また一連の報道を通して、日本国政府が調査に乗り出すという事態まで招いていること、そして、国会議員の先生方が一人一人、当法人との関係があったのかをメディアから詰問されるような事態を招いていることを、大変申し訳なく思っております」とコメントしました。

Q.冒頭から違和感があったということですが
(紀藤弁護士)
「韓国の本部から見ると、日本国政府に対する謝罪であって、被害者の事は毛頭も考えていなく、被害者への謝罪ではないのが冒頭の言葉によく表れていて、違和感を覚えました。全体を通じて、過去最大級の不誠実な会見だと思います。」

違和感②改革の方針 「ベクトルが信者に向いている」

“統一教会”改革の方向性

 会見ではその後、勅使河原氏から改革の方針について、2009年のコンプライアンス宣言時からの指導である「①民事裁判等で問題とされた、献金と先祖の因縁等を結びつける、または、威迫・困惑を伴うような献金奨励・勧誘行為はしてはならない。②信者への献金の奨励・勧誘行為は、あくまでも信者本人の信仰に基づく自主性及び自由意思を尊重し、信者の経済状態に比して過度な献金とならないよう、十分配慮しなければならない。③伝道活動において、勧誘の当初から“家庭連合”であることを明示すること」を再度徹底すると説明がありました。

Q.改革案にも異議があるということですが
(紀藤弁護士)
「具体性がありません。プラットフォームを提示しただけで、一種の目次ですね。どうやって救済するかということが全くありませんし、献金と物品を分けていません。つまり、物品を伴う霊感商法を解決する気がないように見えます。また、関連団体には触れていません。伝道活動は、関連団体からの勧誘などもあるんですが、関連団体の勧誘をどうするかという、具体性がないんです。『当法人の関連団体は関係ありませんよ』という風に見えます。また、過度な献金をどう判断するかについても、『教会のスタッフなどで決める』と言っていますが、第三者の目を入れなければいけないと思います」

教団が主張する改革

 また勅使河原氏は「献金が、ある意味度を過ぎて、信者の家庭やご家族が通常の生活を送るのを害するような過度なものになってはいけない。この観点に関しても、十分に指導していきたい」としています。

Q.どこを向いて指導しようとしているんでしょうか?
(鈴木氏)
「ベクトルが信者の方を向いています。献金は、韓国の教団本部から指令が来ているわけですから、そこを改革しないといけないのに、下の信者の方に向いています」

Q.信者が勝手にやっていることを指導していく、という風に見えますが…
(紀藤弁護士)
「勅使河原氏というのは、特別扱いの信者なので、現場の実態を知らないというのが、この会見に現れています。そういう人に改革ができるとは思いません。また日本の“統一教会”は『改革する』と言っていますが、韓国の“統一教会”が改革しないと、結局は韓国の“統一教会”に直接献金するというルートがあるので、高額献金の被害はなくならないと思います」

勅使河原氏「世界本部も了承」

Q.勅使河原氏は、「今回の改革は、世界本部にも了解をもらっている」と言っていますが、本当にそこまでできるんですか?
(鈴木氏)
「勅使河原氏がどんな権限を持っているかわからないんです。通常なら田中会長が最初に、『勅使河原氏にこういう権限を与えて、こういう事をさせます』と言わないといけません。もし世界本部からの了解があるのなら、上の立場の人でも処分できるのでしょうか?できれば大したものですよね」

「“左翼弁護士”が国民をミスリード」と主張

 さらに勅使河原氏は「“家庭連合”に対する献金を『収奪する』『騙しとる』『搾取』と言った単語で表現されているが、あくまでも献金は“尊いもの”であって、本人の自由意志だ。このような表現は、腹立たしい内容だ。報道と、それを主導していると思える“左翼弁護士”が、国民をミスリードしているのでは…」と語りました。

Q.なぜ“左翼弁護士”と言われるのですか?
(紀藤弁護士)
「彼らから見ると“左翼”は敵なんです。“統一教会”はこういった言い方で、“思考停止”するんです。この会見でも、被害のことは『知らない』『わからない』と言うのですが、被害者が書いた手記や本を読めばわかることなんです。しかし、被害のことを勉強しようとしないんです。教義に疑問を持つことが『罪だ』『サタンのささやきだ』『地獄に落ちるかもしれない』ということで疑問を持てないこともあり、この会見は極めて信者的に見えます」

違和感③13年間損害賠償請求ない 「実際にあった」

福本弁護士「2009年以降損害賠償請求はない」

会見に同席した福本弁護士は、「2009年に『コンプライアンス宣言』を出して、信者が経営する会社における物販活動・開運商法については、一斉に無くなっています。これ以降に、霊感商法だといって“統一教会”を訴えて損害賠償を求めたものは、この13年間ありません」と説明しました。

Q.2009年以降、本当に霊感商法はなくなったんですか?
(鈴木氏)
「ありました。2014年に印鑑販売の相談を受けて、その領収書も見ています。『霊感商法をやめるように』という指示が行っても、同時に『献金を収めろ』という指示も行っているので、信者はどうしたら良いかわからなくなって、在庫で持っているものを売るしかないんです」

Q.では、損害賠償を求めた訴えはなくなったんですか?
(鈴木氏)
「あります。2014年に印鑑販売の被害を受けた方は、2009年以降に壺も買わされて、返金の交渉をしています」

福本弁護士 質問の中断を求める

この後福本弁護士は、記者からの「なぜ安倍元首相銃撃事件が起きたのですか?」という質問に対し、「あの事件のお母さんが献金されたのは、1990年代です。それが20年以上を経て、それが山上容疑者の恨みとしてあのような形となったわけでありますけども、90年代の話であって、『コンプライアンス宣言』以前、はるか以前の問題です。もう切ってください!」と質問の中断を求める場面もありました。

Q.山上容疑者の母親の件は、はるか以前の問題ですと言っていますが…
(鈴木氏)
「1億円以上の献金を受けて、5000万円返したと言っても、5000万円以上を教団が手に入れているわけです。その重大さを分かってないと思います」

違和感④過度な献金への対応 「構造を変えない限り不可能」

献金の目標や過度な献金についてのコメント

 献金の目標について勅使河原氏は、「今後は本部で決めていくというよりは、現場の実情に合わせて、現場主導の自主目標を考えていくという、方向の転換を議論する」と言い、過度な献金の線引きについて「『高額』と言うのは、信徒の経済状況によって変わる。1万円・2万円だって高額だと感じる人も大勢いるでしょうし、1000万円・1億円だって高額でないという人もいるのが実情では…」と話しました。

Q.現場に合わせた献金の自主目標は立てられるのですか?
(鈴木氏)
「現場で『献金したい』という声はほとんどないので、現場主導だと献金0になります。実際は、年間数百億円のノルマが韓国の教団本部から流れてきているので、そこを末端の意見で変えられるのかということで、そもそもベクトルが逆です」

Q.教団には、かなりの高額な事業計画が数多くあると聞いていますが、大丈夫なのでしょうか?
(鈴木氏)
「この改革が実行されるのであれば、成り立たないですね」

“過度な献金”の確認方法「詳細まで決めていない」

 そして、過度な献金の確認方法に関して勅使河原氏は、「各教会長・スタッフが判断する。本当に大丈夫なのか、家族の合意が取れているのか確認する、という程度で、詳細まで決めていない」と語りました。さらに、過度な献金への罰則については、「2012年ごろ、就業規則が出来上がった。宗教法人としての在り方・人事評価の在り方・罰則規定がある。訓戒から懲戒免職まである」としています。しかし、罰則規定の詳細は明かしませんでした。

Q.献金の確認は、実行できるのでしょうか?
(鈴木氏)
「中身が決まっていないというのは、そもそも空っぽなんです。発言とやっていることに齟齬があります。『上の指示で末端の信者が献金を収めている』という構造を変えないと、改革になりません。改革が本当なら、2023年5月までに納めなければならないと言われている、一家庭当たり183万円の献金も、『しなくていい』ということになります」

Q.教団が作った「罰則」というのは、どのような規定なのでしょうか?
(鈴木氏)
「これは、教団の内部情報を漏らした人に対する罰則規定です。今は、教団の内部文章にはシリアルナンバーが振られていて、誰がいつ漏らしたかわかるようになっています。教団の正常化のための規定ではありません」

安倍元首相銃撃事件後の返金や脱会について

 また、安倍元首相銃撃事件後の献金の返金や脱会について勅使河原氏は、「今日(会見の日)の朝までで、返金すべきと判断して114件に対応したが、何%返金したかは詳しく知らない。脱会を表明したのは、私の記憶では何十件かある」と話しました。

Q.返金の基準があるのですか?
(鈴木氏)
「『返金すべきと判断』とはどういうことか?と思います。教団が『返金すべき』と判断していない被害が、もっとあるはずです。細かい点は明かしていませんので、ウソも多いと感じました」

会見を見た元信者のコメント

 この会見を見た、元信者の石原早苗氏は「解散命令が出ないように、対策本部を慌てて作ったなと思った。記者から突っ込まれても答えられなかったところも多かったし、中身がない。勅使河原本部長は、真実が分かっていないのかなと感じた」とコメントしました。

Q.宗教法人であることを守るための会見だったのでしょうか?
(鈴木氏)
「そうですね。しかし、こういった訴訟を多く抱えて、多くの問題を持った団体が公益法人である宗教法人だということに、異様さを感じます」

Q.例えば“統一教会”の宗教法人の法人格をなくしたら、被害はなくなるのでしょうか?
(鈴木氏)
「なくならないでしょう。先ほど紀藤弁護士も言っていましたが、韓国に直接行って何十万円・何百万円を収めるシステムがありますので」

(情報ライブミヤネ屋2022年9月23日放送)

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