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【独自解説】急増する熱中症、発症場所で一番多いのは室内?『かくれ熱中症』も?救急救命士が対策を解説「子どもの応急処置は氷に注意」
2023年5月22日 UP
季節外れの暑さが続く中、各地で熱中症とみられる救急搬送も発生しています。熱中症にならないための対策、熱中症になったときに注意することなどを、30年間救急救命士として勤務していた奥元隆昭氏が解説します。
季節外れの暑さに熱中症増加
5月8日~14日の1週間、全国で308人が熱中症で病院に搬送されたということです。そのうち約半数が高齢者でした。初診時に中等症以上という人は3割近くいて、発症場所で一番多かったのは住居・室内となっています。
Q.室内で発症している割合が高いのはなぜですか?
(元救急救命士 奥元隆昭氏)
「一日行動した後に家に居る時に疲れが出て、熱中症の症状が出るということがあります。救急の現場にいたときも、日中炎天下で仕事などをしていて、帰ってから自宅で体の状態が悪くなり、救急隊が行ったらかなりの重症だった、ということが多くありました」
5月に入ってからの全国の都道府県ごとの熱中症の搬送者数を昨年と比較すると、埼玉県・東京都・愛知県・大阪府などが昨年より多くなっています。全国でみると、昨年の748人に対して今年は803人と50人以上増加しています。
5月の熱中症を避けるには、運動や入浴で汗をかいて、汗をかきやすい体にしていくこと。時間を決めてこまめな水分補給をすること。日ごとの寒暖差が大きいので、天気予報をチェックして服装などでうまく調整すること。空気が乾燥していて日陰に入ると暑さをしのぎやすいので、こまめに日陰で休むことなどが大切です。
Q.水分補給は時間を決めて行うのが良いのですか?
(奥元氏)
「熱中症の予防には水分補給が大事なのですが、喉が渇いてからでは遅いので、決められた時間に水分を補給するというのは良いと思います」
気づきにくい「かくれ熱中症」にも注意
かくれ熱中症にも注意が必要です。①手のひらが冷たい②舌が渇いている③つまんだ皮膚が戻りにくい④親指の爪を押して赤みが戻るのが遅い、この中で1つでも当てはまったら隠れ熱中症の可能性があります。
Q.手のひらが冷たくなったり、爪の色が戻らなくなったりするのはなぜですか?
(奥元氏)
「手のひらが冷たいのは、体の表面で体温を調整しようとして冷たくなっているのに、体の芯には熱を持ったままの状態だということです。また、体の末端の血液の循環不全で爪の色が戻らなくなります」
また、今の時期大事なのが「暑熱順化」です。「暑熱順化」というのは暑さに体が慣れることで、これができていないと、体が冬のまま熱をため込みやすい状態で熱中症なりやすいということです。「暑熱順化」ができていると、汗をかいたり血管を広げたりすることで、熱を逃がすので熱中症になりにくいということです。
Q.汗腺を鍛えて、汗をかきやすくするということですか?
(奥元氏)
「軽く汗をかくだけで違ってきます。プロの消防士でも、これからの季節は防火服などに熱がこもるので『暑熱順化』のために運動をして、汗をかく訓練をしています」
子どもや高齢者の熱中症について注意ポイント
奥元氏によると子どもの熱中症の応急処置をするときには、氷を直接当てないことと、氷の当てすぎに注意が必要だということです。
Q.これはなぜですか?
(奥元氏)
「体の小さな子どもの動脈の太いところに直接氷を当ててしまうと、血管が収縮してしまい、逆に熱がこもる危険があります。氷は直接体に当てないで、タオルなどで包んでワンクッション置いて冷やすのが大事です。また、大人の感覚で氷を当て過ぎると逆に冷えてしまいます」
Q.具合の悪いお子さんを運ぶときにも注意があるということですが?
(奥元氏)
「意識がはっきりしている人は、おんぶで運んでも良いのですが、意識の有無が怪しい場合は、意識を失うと体が前かがみになって空気の通り道を塞いでしまいます。また、おんぶで運ぶと顔色が見えませんし状態の変化も掴みにくいので、おんぶは避けてください」
また、高齢者はのどの渇きを自覚しにくい、高血圧の薬などで水分不足に陥りやすい、体で最も水分を含んでいる筋肉の量が減っている、頻繁にトイレに行くのを嫌う、介護者に気を使って水分を取らないなどの理由で、熱中症弱者と言われていて、注意が必要です。
熱中症の疑いがあった場合の対応について厚生労働省のチャートによると、症状があって呼びかけに応じない場合はすぐに救急車を呼ぶことが重要です。そして救急車を待っている間に涼しい場所に移動して体を冷やしてください。呼びかけに応じる場合でも、水分を自力で摂取できない場合は医療機関に相談するようにしてください。
(「情報ライブ ミヤネ屋」2023年5月17日放送)


