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【独自解説】“ジャニー氏・メリー氏であらゆることを決定”に専門家「取締役の義務果たしていない」ジャニーズ事務所の性加害問題 藤島ジュリー景子社長が謝罪
2023年5月16日 UP
かつてジャニーズ事務所に所属していた歌手のカウアン・オカモトさんが4月12日、記者会見を開き、15歳の頃、当時の社長で2019年に亡くなったジャニー喜多川氏から性的被害を受けたと告白しました。この問題に対して5月14日、ジャニー喜多川氏の姪の藤島ジュリー景子・現社長が初めて公式見解を発表し、謝罪しました。法的な問題と今後について亀井正貴弁護士が解説します。
なぜすぐに会見を開かなかったか?
元ジャニーズ事務所所属の歌手カウアン・オカモトさんが4月12日、日本外国特派員協会で会見を開き「15歳のころ、当時の事務所社長 故ジャニー喜多川氏から下半身を触られるなど性的被害を受けた」と主張しました。退所するまでの約4年間で15~20回の被害だったということです。またオカモトさんは「ジャニーさんには今も個人的に感謝の気持ちを持っています。一方でジャニーさんが、当時15歳の僕やその他のジュニアに対して行ったことは悪いことだと思っています。事務所自体に認めてほしい」と語りました。
これに対して、ジュリー社長は、「世の中を大きくお騒がせしておりますことを心よりおわび申し上げます。何よりまず被害を訴えられている方々に対して、深く深くおわび申し上げます。そして関係者の方々、ファンの皆様に大きな失望とご不安を与えてしまいましたこと、重ねておわび申し上げます」と謝罪のコメントを発表しました。
今回の謝罪のなかで、「ジャニーズ事務所はなぜすぐに会見を開かなかったか?」という質問に対してジュリー社長は「まずは事実を確認し、責任を持って対応すべきだと考えました。個人のプライバシーにも関わる非常にデリケートかつセンシティブな問題であったため、カウンセラーや弁護士など専門家の協力を得ながら、慎重に進めておりましたことから、広く皆様にお伝えするまで時間が経ってしまいました。」と答えています。
また、「カウアン・オカモトさんの告発は事実か?」という質問について、「会社としても、私個人としても、そのような行為自体は決して許されることではないと考えております。一方で、当事者であるジャニー喜多川に確認できない中で、私どもの方から個別の告発内容について『事実』と認める、認めないと一言で言い切ることは容易ではなく、さらには憶測による誹謗中傷等の二次被害についても慎重に配慮しなければならないことから、この点につきましてはどうかご理解いただきたく存じます」としています。
Q.当事者であるジャニー喜多川氏が亡くなっている中で、このことを事実と認める、認めないというのは難しいものですか?
(亀井正貴弁護士)
「一方だけでなく、両方から話を聞いた上で事実認定していきますので、事実と認めるのは難しいですね。ただ、告発の数がある程度出てきて関係者の供述が得られるのであれば、一定の事実認定はできると思いますが、当事者がいない段階では事実の確定、発表は難しいと思います」
ジャニー喜多川氏の性加害を知らなかったのか?
「ジャニー喜多川氏の性加害を事務所、またジュリー社長は知らなかったのか?」という質問に藤島社長は「知らなかったでは決してすまされない話だと思っておりますが、知りませんでした。私は取締役という立場ではありましたが、長らくジャニーズ事務所は、タレントのプロデュースをジャニー喜多川、会社運営の全権をメリー喜多川が担い、この二人だけであらゆることを決定していました。この二人以外は私を含め、任された役割以外の会社管理・運営に対する発言は、できない状況でした。また、管轄外の現場で起きたことや、それに対してどのような指示が行われていたのか等も全社で共有されることなく、取締役会と呼べるようなものも、開かれることはありませんでした。会社運営に関わるような重要な情報は、二人以外には知ることのできない状態が恒常化していました」としています。
Q.これだけ大きな企業で、ジャニーさんとメリーさんの二人だけであらゆることを決定していて、取締役が発言できないというのはいかがですか?
(亀井弁護士)
「中小のオーナー企業ですと、取締役会が機能していない、株主総会もしていないということはあるのですが、利害関係人が非常に多くなってきた企業に関しては、リスク管理は取締役会がしなければいけません。この答えを聞くと、当時の取締役は、代表取締役への監督責任もはたしていないし、取締役として管理者の注意義務もはたしていないといえます」
ジュリー社長は、自身の経営責任について、「今すべきはこの問題から逃げることなく、被害を訴えてこられた方々に向き合うこと、さらにこれから先、二度と同様の問題が起こらないよう、既に着手し始めている経営改革、社内意識の抜本的改善をやり抜くことだと考えております」とコメントしています。
第三者委員会を設置して徹底調査をしないのか?
何故、第三者委員会を設置して徹底調査をしないのか?という質問には、「本件でのヒアリングを望まない方々も対象となる可能性が大きいこと、ヒアリングを受ける方それぞれの状況や心理的負荷に対しては、外部の専門家からも十分注意し、慎重を期する必要があると指導を受けたこともあり、今回の問題については別の方法を選択するに至りました。既に告発された方、また今後新たな相談をご希望される方のために、外部のカウンセラーや有識者、弁護士や医師の指導のもと、相談をお受けする外部窓口を月内に設置致します」と答えました。
この返答に関して亀井弁護士は、「第三者委員会は、会社の意向を無視して調査結果を公表できるのでプライバシーの問題で懸念はあるが、運用段階で調整できるのではないか。そこが守られるのであれば第三者委員会を設置すべきだ」としています。
(亀井弁護士)
「第三者委員会でないと、どんなに調査しても内部調査であれば企業の意向が反映されてしまいます。第三者委員会であれば、独自の判断で独立が保たれます。透明性や信用性を確保すると言う点で第三者委員会が良いと思います」
Q.今までは、企業の不祥事の調査などで第三者委員会が設置されることが多かったと思うのですが、今回のような事案で第三者委員会が調査をして、未成年者の人権やプライバシーが守れるのでしょうか?
(亀井弁護士)
「それは第三者委員会の構成員の選任の問題です。第三者委員会でこういうセンシティブな問題を扱うことは少ないのですが、そういう専門家を入れればいいのです。そして第三者委員会の独立性の程度についても、話し合いながら決めていくことができます。社内の調査機関を設置しても調査内容は同じですし、今回のケースは社会的影響も出ていますので、第三者委員会を設置した方が良いと思います。プライバシーの問題については、運用段階で調整ができます。第三者委員会と企業との契約の中で、プライバシー問題の運営指針を設定すれば実現できると思います」
(情報ライブミヤネ屋2023年5月15日放送)


