記事
【独自解説】高齢者ドライバー事故を防ぐには? 橋下徹氏「免許に年齢制限を、ライドシェアが普通になれば」
2021年11月19日 UP
89歳運転の車が踏み違え事故
11月17日、大阪狭山市のスーパーマーケットに車が突っ込み、3人が死傷した事故。 89歳の容疑者は事故直前、パーキングブレーキをかけずに路上で停車していたとみられることがわかりました。相次ぐ高齢ドライバーの事故。防ぐ方法はあるのでしょうか?ミヤネ屋のコメンテーター陣が議論しました。
事故が起きたのは、11月17日正午すぎ、大阪府・大阪狭山市のスーパーマーケットです。この事故で、岡田博行さん87歳が亡くなりました。さらに、90代の女性と77歳の女性2人が重傷となっています。
車を運転していた89歳、無職の男を過失運転致傷の疑いで現行犯逮捕。容疑者は、「車内でトランクを開ける操作をしていたら、車がゆっくりと前に進み出しました。慌ててブレーキをかけようとして間違ってアクセルを踏んだ」と話しています。
路上駐車していた容疑者の車はパーキングの状態にせず、パーキングブレーキもかけていなかったとみられます。急に車が発進し、アクセルとブレーキを踏み間違え、敷地内に入り、スーパーの入口付近まで前進。その後、猛スピードでバック。再び前進して、店の壁に激突した、ということです。
(事故を見た男性)
Q.ぶつかる様子は見ていましたか?
「見ました。猛スピードでした。たぶんフル(アクセル)で踏んでいたと思う。」
(事故を見た女性)
「音が耳に残っているんですけど、すごい ゴーっていう音だったので。40~50キロじゃなくて、もっと出ていたのかな。」
防犯カメラの映像は“異常な動き”
現場の防犯カメラには、事故の様子が映されていました。画面下から侵入してきた車。店の敷地に乗り上げ歩いていた通行人をはね、さらに自動販売機をなぎ倒しました。その後も スピードを緩めることなく店の入口の方まで突進すると、今度は猛スピードでバック。止まっていた自転車をなぎ倒し、防犯カメラが設置された街灯に激突すると再び前進。店の壁に衝突して停止するまで、約25秒の出来事でした。何度もぶつかった衝撃からか、前方のボンネットは激しくひしゃげ、側面にはこすりつけたような大きなキズも確認できます。
逮捕された男は、事故を起こす前に近くに停めた車の運転席で妻の買い物が終わるのを待っていて、座席に座ったままトランクを開ける操作をしていた時に車が進み出したということですが、その際、車を停めるときに使う「パーキング」の状態にせず、「パーキングブレーキ」もかけていなかったとみられています。その様子をとらえた防犯カメラの映像には、路上に駐車していた容疑者の車がゆっくりと動きだしたと思いきや突然、加速していく様子が残っていました。
交通事故鑑定人の中島博史さんによりますと、スーパーの入口まで進んで止まったあと、車が後退しています。これが不自然だと言います。車には、進行方向を変えるときブレーキペダルを踏んでいないとギアの切り替えができない仕組みが組み込まれており、今回は明らかにブレーキペダルが踏まれていて、ブレーキランプの点灯でも確認できます。しかし、ブレーキランプが消えると同時に急速な後退、アクセルをベタ踏みするように急加速が始まっていて、通常の“踏み間違い事故”では考えられない“異常な動き”をしていると指摘しています。
事故の被害者の遺族は…
事故で亡くなった被害者の遺族は、「突然のことで亡くなったことがまだ実感できていません。悔しいです。もっと生きられたはずだと思っています。孫の面倒も見てくれたりしていましたし、とても良いおじいちゃんです。何で死なないといけなかったのか、わかりません」と話しています。
現場に、手を合わせに訪れた女性は―
(亡くなった岡田さんの知人)
「きのうから食事もとれない、胸がいっぱいで。いつも奥さんの代わりに買い物に来ておしゃべりしていた。いい方でね~。」
岡田さんとはボランティア仲間でもあり、趣味で作ったネックレスをプレゼントしてもらったといいます。
(亡くなった岡田さんの知人)
「ボランティア一生懸命でしたわ。すごくいい方で、あんな方が亡くなるなんて。」
誰にでも優しく、社会のためにボランティア活動に励んでいたという岡田さん。近所の人によると、80歳で自動車の運転免許を自主返納したといいます。
容疑者を知る人は…
一方、事故を起こした男について、近所の人はー
(容疑者の近所の人)
「親切で優しくて、奥さんが買い物すると言ったら車で送り迎えしていましたし。料理も好きみたいで、いろんなもの作って、うちへ『おすそわけ』と言って、持ってきてくれた。」
その運転技術についてもー
(容疑者の近所の人)
「おふくろなんかも乗せてもらっているが、『安全が第一』って言ってはる人に何が起こったのか。病院の帰りにばったり会ったりしたら『乗って帰り~』と気さくに言ってくれたりして、その運転がものすごく丁寧やったと。」
いつも安全運転だったという評判がある一方で、本人も年齢的な不安は抱えていたようです。
(容疑者の知人)
「『年も年やしな~』というような話はこの間、ひょこっとなさっていましたけど、免許を返納するとか、そんなんは聞いていない。」
高齢者の“踏み間違い事故”相次ぐ
相次ぐ、高齢者による踏み間違い事故。10月、東京・練馬区のコンビニに70代男性が運転する車が突っ込み、店内で買い物をしていた女性客がガラス片で負傷。11月11日には、新宿・歌舞伎町のラーメン店に80代男性が運転する車が突っ込み、客5人が負傷。周囲は一時、大混乱となりました。
警察庁が発表した、2021年6月までの半年に起きた交通死亡事故の主な要因では、アクセルとブレーキの踏み間違いなど“操作ミス“による事故では、75歳以上が 35.7%なのに対し、75歳未満は 14.1%と、年齢による差が表れています。
交通事故鑑定人の中島博史さんによると…
(中島博史さん)
「踏み間違えは高齢者だけでなく、若い人も結構起こしてはいるが、リカバリー操作が早いので大きな事故に至っていない。高齢者の場合は“ブレーキを踏まなくては“と思ってはいるけど、筋力の低下や踏み直すための時間がかかることが、高齢者の踏み間違え事故が目立つ理由。」
高齢者の免許自主返納率は、年々上がってきています。65歳以上の免許の自主返納は右肩上がりで、増加傾向となっています。2011年は、6万9805件でしたが、2019年は、57万件を超えています。
自動車事故を防ぐためにやるべきことは?
高齢者に限らず、車の事故を防ぐために様々なシステムが導入されています。1つは自動ブレーキ。カメラやレーダーで追突の危険性が高まった場合、ブザーなどで警告します。自動でブレーキが作動する機能もあり、11月から国産の最新モデルには搭載が義務化されています。
もう1つは、踏み間違い急発進抑制装置。前方と後方にセンサーが取り付けられていて、 アクセルとブレーキを間違えて強く踏んでしまった場合に、ブザーで警告音がなります。 急発進、急加速を抑制するもので、車種によっては後付けが可能です。
Q.大阪狭山市は住宅地で高齢化していて、スーパーに買い物に行って荷物持つのも大変、病院に行くのも大変なので「では、車で」となりますよね?
(元大阪府知事・橋下徹さん)
「僕は、免許には年齢制限が必要だと思います。年齢が若い方には、18歳以上っていう年齢の下限の制限があるじゃないですか。17歳の時にどんなに運転が上手くても、免許が取れない訳ですよ。ですから『事故の確率が高い歳』というのを科学的にしっかりと検証して、その歳以上は取れないと。ただ例外として、本当に足が必要な地域などでは、一人一人個別に能力をしっかり見た形で、特別免許を交付するとか。原則は、やっぱり年齢制限を入れていかなきゃいけない時代になっていると思います。」
「もう1つは、ウーバーをはじめ、ライドシェアみたいな仕組みが日本には無いわけですよ。これはタクシー業界から、自分たちの業界を守るために『白タクは認めない』という声があり、ライドシェアが広がっていない。ライドシェアが広がって、みんなが自家用車を使いながら、空いた時間に自家用車で料金をもらって運ぶ、ということが一般の社会制度になれば、こういうことに関しても一定のサポートになると思うんですけどね。」
Q.地方に行くと、巡回バスとかあるじゃないですか?ただ大阪狭山市は、都心からちょっと離れた郊外で人口も多い。一人一人のニーズに応えながら巡回タクシー、巡回バスを出していくのはなかなか大変だと思うんですけど?
(橋下徹さん)
「僕は、巡回バスは、大阪市で全部廃止しちゃったんでね。都心部だから税金がものすごくかかるんですよ。だからそれは、地下鉄を使ってくださいと。また巡回バスは、使いたい時に使えないから非常に便がよくないんですね。それはライドシェアにするのか、何かそういう形でやっぱりやらなきゃいけないんじゃないですかね。」
Q.これからの日本社会はライドシェアにしても、若い人が全然いない所が沢山あるんですよね?
(外交ジャーナリスト・手嶋龍一さん)
「そうですね。したがって、タイムシェアも1つの解決策ではあるんですけど、もう1つはやっぱり自動車メーカーと共同開発して、ブレーキとアクセルの問題を解決して、安全装置がある車でなければ、お年寄りは無理っていうふうにすべきかもしれません。」
Q.スーパーに関していうと、若い人ほどネットショッピングをやって届けてもらっている。高齢の方こそ、スーパーはどこでもネットショッピングやっているわけだから、そのやり方をご家族とか自治体で教えてあげるのも、一つの方法だと思いますが?
(総合内科専門医・おおたわ史絵さん)
「新しいことを学ぶのはなかなか、特にネットというのはハードルがすごく高い。70代とか80代とかには難しい。」
(橋下徹さん)
「どんどん簡単なやり方が出てくればいい訳で、日本はライドシェアがダメっていうのと同じように、例えば、本人確認についてマイナンバーカードを使わない形でのシステムをIT企業がやろうとすると、総務省がそれはダメとか言うのです。日本ではダメダメダメダメとなるから、いいサービスが生まれないんですよね。企業の自由な活動を認めて、いいサービスを生み出して、こういう高齢者の方にサポートできるシステムができる、そういう社会になってほしいですよね。」
(情報ライブミヤネ屋 2021年11月18日放送)


