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岸田首相が調査を指示

【独自解説】「民意が反映されてきている」鈴木エイト氏と紀藤弁護士も期待する政府の動きと永岡文科相の発言、心配は「スピード感」と「教団の証拠隠滅」

 岸田首相は10月17日、“統一教会”に対し「質問権」を行使して調査を行うよう指示しました。質問権が行使されるのはこれが初めてで、調査の結果次第では、“統一教会”に対する解散命令の請求につながる可能性もあります。消費者被害や宗教・カルトの法律問題に詳しい紀藤正樹弁護士と、“統一教会”を20年にわたり取材を続けるジャーナリストの鈴木エイト氏が解説します。

質問権の検討開始に「スピード感が必要」

 「質問権」とは、宗教法人法に定められた規定で法令違反などが疑われる場合に、文科省などが宗教法人に対し聞き取りや、同意があれば立ち入り調査を実施し、業務や管理運営に関し報告を求めるものです。文科省は、「質問権」を行使する基準を予め設けるため、10月25日にも検討を開始するということです。また今後は、「宗教法人審議会」に諮問し、“統一教会”の業務など調査を行う予定です。

紀藤正樹弁護士

Q.これはまず、「宗教法人審議会」を立ち上げないといけないのでしょうか?
(紀藤正樹弁護士)
「宗教法人審議会はすでにあるのですが、質問権を行使する基準を予め設ける『専門家会議』を作ると言っているので、私は悠長だなと思いました。宗教法人審議会にかける前に検討会を設けるということは、その分質問権の行使が後ろに遅れますよね。手続き上は完璧を期すわけですが、重要なのはスピード感と質問の内容だと思います。質問の内容は確かに検討しなければなりませんが、スピード感も大事なので、25日からの検討会では、1週間程度で質問を練って頂いて、すぐにその質問を宗教法人審議会にかけて頂きたいなと思います」

Q.25日に検討開始では遅いのでしょうか?
(紀藤弁護士)
「そうですね。指示された時点で質問を考えられていないといけないと思います。岸田首相の答弁は事前に相当準備されていたようで、かなり精緻な回答をされていました。そのため一定程度は、文科省の中で調査は終わっているのだと思います。質問権の行使について改めて検討会を作るというのは、将来にとっては意味があるのかもしれませんが、この“統一教会”においては、ある程度質問が固まれば、すぐに宗教法人審議会に諮問すべきだと私は思います」

Q.文科省などが聞き取りを行うことなどを宗教団体が拒否した場合、罰則などはあるのですか?
(紀藤弁護士)
「拒否をしたり、虚偽の答弁をすると、『過料』という制裁がありますが、罰則ではありません。例えば、住民票の転出届を出し忘れたときなどに過料の制裁があるのですが、そういうものにすぎない行政罰なので、いわゆる家宅捜索などはできません。銀行の金融検査のときに虚偽や拒否をすると犯罪なので、それ自体が場合によっては警察の捜査の対象になりますが、宗教法人法はそういう立て付けになっていないので、拒否しても制裁はすごく弱いです」

Q.同意がないと立ち入りも出来ないのですか?
(紀藤弁護士)
「そうです。行政的な立ち入りであれば、通常は同意なくできるのですが、これは同意がないとできないような立て付けになっています」

ジャーナリスト 鈴木エイト氏

Q.もし同意したとしても、帳簿や献金額の書類などを廃棄する時間はあるのではないですか?
(ジャーナリスト 鈴木エイト氏)
「はい。実際に2009年の新世事件のときも、色々な証拠書類を薬品で溶かしたりしていた、という証言をする脱会者の方もいます。そのあたりはちょっと心配です」

調査を待たず解散命令の可能性に「期待したい」

消費者庁・有識者検討会の提言(主な内容)

 10月17日、消費者庁が設置した霊感商法等の悪質商法への対策検討会は、「解散命令請求」について、宗教法人法に基づいて「報告徴収」及び「質問の権限」を行使する必要があること、そして「取消権の範囲の拡大」として、マインドコントロール下などでの「付け込み型の勧誘」を取消権の対象に追加、さらに寄付に関する被害の救済について、マインドコントロール下での「寄付」への対応を念頭に、禁止規定を法制化すべきだ、などと提言しました。

Q.「マインドコントロール下」というのをどのように規定するのかは、非常に難しいのではないですか?
(紀藤弁護士)
「難しいので、これから消費者庁の中で検討することになります。この報告書には、4か所にわたって『マインドコントロール』という言葉が出てきますが、マインドコントロールの問題が、最大の問題です。解散命令したからといって被害がなくなるわけではないし、過去の被害も救済しないといけません。そのためには法律の手当てが必要で、マインドコントロール下にある献金の規制みたいなものをどういう風にしていくか、これからの工夫が必要で、極めて大事ということになります」

永岡文科相 「年内の早いうちに権限行使へ」(10月17日)

 また永岡桂子文科相は、衆院予算委で「政府としては、年内のできるだけ早いうちに、権限が行使できるよう手続きを進めてまいります。この情報収集の結果といたしまして、あるいは情報収集・質問の手続きの途中であっても、解散命令を請求するに足る事実関係を把握した場合には、速やかに裁判所に対して、解散命令を請求することを検討してまいります」と発言しました。

Q.「年内の早いうちに権限行使へ」ということですが、どのように受け取られますか?
(紀藤弁護士)
「回答期間は、権限行使から1か月間ぐらい猶予期間があるので、年内にするということは年明けの中旬ぐらいまでに回答期限を迎えるということですので、それはそれでいいのかもしれませんが、この発言は後半部分がとても重要です。解散命令の請求というのは、質問権の行使が前提事由になっていないので、質問権を行使している間に調査の結果が整えば、解散命令の請求というのもできます。場合によっては、調査を待たずに解散命令請求する、ということに一歩踏み込んでいますから、この発言は私どもから見ると、とても歓迎です。とても良いことだと思っています」

Q.ジャーナリストの方や弁護士連絡会の方々も様々な証言・資料を持っていらっしゃいますし、元信者や2世信者の方々の実際の証言もあるので、資料はあっという間に集まるのではないでしょうか?
(鈴木氏)
「かなり早急に、早い時期に解散命令の請求をやろうと思えばできると思いますね、この状況であれば。ちょっと期待したいです」

Q.これまで色んな方々が長年取材をされてきましたし、そして世論が動かしたという感じはしませんか?
(鈴木氏)
「小川さゆりさんの会見であるとか橋田達夫さんの報道が、潮目になった可能性はありますよね。消費者庁の対策会議もそうですし、やはり非常に民意が反映されてきています。民主主義への新しい形の一つの結実になればいいと思いますが、まだ安心はできないかなと思っています」

(「情報ライブ ミヤネ屋」 2022年10月17日放送)

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