記事
【独自解説】“市中感染”確認…迫りくる「オミクロン株」感染拡大の脅威 危機意識はどこまで必要?年末年始はどう過ごすべき?専門家が解説
2021年12月25日 UP
広がり見せるオミクロン株の“市中感染”確認
12月22日に大阪で国内初、24日には東京でも確認された、「オミクロン株」の“市中感染”。年末年始が迫る中、強い感染力が特徴の「オミクロン株」の感染拡大を防ぐためには、どんな対策が有効なのでしょうか。関西福祉大学の勝田吉彰(かつだ・よしあき)教授が独自解説します。
12月23日、政府分科会・尾身茂会長は会見で、「今のところ私どもは、国内でオミクロン株が“面的”に広がっているとは考えていませんが、複数のいわゆる“スポット”で既に感染が始まっているのではと考えています。」と述べました。
Q.これまで検疫では確認されていましたが、国内初の“市中感染”は、諸外国に比べると日本は粘りましたよね?
(関西福祉大学 勝田吉彰教授)
「そうですね。それだけ水際対策が、本来の機能である“ピークを後にずらす”、すなわち“パイプを細くする”というところで、きちんと機能していたんだと思います。水際対策の本来の目的は、感染を100%防ぐことがではなくて、あくまでも“ピークを後にずらす”ということなので。この帰省シーズンに、まだ“面的“な感染拡大になっていないことは、大きかったと思います。」
国内で初めて確認された、大阪での「オミクロン株」の“市中感染”。12月22日に感染が分かった3人は、5人家族の30代の夫婦と10歳未満の娘で、発熱などの症状で入院したということです。大阪府の吉村知事は22日の会見で「海外の渡航歴なし、感染経路不明。これは“市中感染”にあたると思います。」と発表しました。
30代の男性は寝屋川市の小学校の教員で、12月17日まで学校に出勤。18日から発熱などの症状が出たため検査し、22日に「オミクロン株」に感染したことが判明しました。この教員と接点があった3つのクラスの児童と全教員は、PCR検査で陰性でも14日間の自宅待機という処置がとられました。
Q.陰性でも「14日間自宅待機」という“網のかけ方”はどうですか?
(勝田教授)
「危機管理の基本として、一番最初のよく分からないときは『大きな網をかけて、深くとらえましょう』という話なんですが、ただそこまで必要がないということが分かってきたり、あるいはどんどん“面”として拡大してくれば、今度はその意味はなくなってきますから、そのときにいかに早く転換するのか、そのスピード感が求められていると思います。」
また、大阪府の吉村知事は12月23日の会見で、「今後、オミクロン株の感染が拡大することが予測されます。様々な対策を実証していくことになります。そのうちの一つとして、ワクチンの3回目接種が非常に重要になってくると、専門家から意見を聞いています。ですのでワクチンの3回目接種を、高齢者の方などリスクのある方にできるだけ早くするため、大規模接種会場を新たに3か所追加して、合計6か所の大規模接種会場を設置します。」と今後の対策について発表しました。
Q.3回目接種は非常に有効だということも言われていますが、なるべく早く打つのが良いですか?
(勝田教授)
「そうですね。特にリスクの高い方が優先ですけれども、高齢者と、これまでメタボ健診などで何か言われていることがある人も、全部だと思ってください。」
論文発表で「重症化率低い」 だからこその危険性も…
一方、オミクロン株の重症化については、12月22日発表のイギリス・エディンバラ大学の論文では「オミクロン株に関連した入院リスクは、デルタ株に比べて3分の1」、12月21日に医療論文サイト「medrxiv.org」に掲載された論文には「オミクロン株の感染者が入院する確率は、デルタ株の感染者に比べ80%低い。しかし入院した場合の重症化リスクは変わらない」と表記されています。
Q.この論文をどうみたらいいですか?
(勝田教授)
「確かに医療ひっ迫というところについては、一つバリアになると思います。ただ軽症ということは、例えば鼻が利かない症状や熱などがないという人は、自分がコロナに感染している感覚がないと思うんです。そういう方でもアフリカでは受診している方がいらっしゃるので、『何かいつもの自分と違うよね』という感じがあったら、まずは誰かに相談をする、そこを強調していきたいと思います。意識なく感染している可能性もありますから、リスクの高い方とは会わないことも大切です。」
Q.軽症と言う人もいる一方で、高齢者や基礎疾患のある方は、そういう人からオミクロン株をもらうと怖い、という意識を持たなくてはいけない?
(勝田教授)
「そうですね。症状の疑いがあるときは、特にリスクの高い人、糖尿病の人をはじめとして、高齢者はもちろん、会わないということですね。」
年末年始はどう過ごすべき?
政府分科会の尾身会長は12月23日の会見で、「年末年始は、一年のうちで最も感染が拡大しやすい時期であり、また、オミクロン株の動向も踏まえ、帰省や旅行は慎重に検討してください。オミクロン株は急速に感染拡大する可能性があり、“スポット”の感染が更なる感染につながると、短期間で多数の患者発生が予想され、その中から当然一定程度の重症者も生じ得ることから、ここに来て強化されてきた医療制度ですら、ひっ迫してしまう可能性があると思う。」と述べました。
Q.こういう発言が出ると、日本人の国民性として「じゃあ、自粛しようか」ってなりがちですよね?
(勝田教授)
「これまでの経緯を見てくると、実際に日本の国民全部がそうなるのかっていうところですね。じゃあ旅行を皆さん取りやめるかといったら、そこまでは期待できないかもしれないと私は思っています。だからむしろ、旅行先や帰省した先で、おじいちゃん、おばあちゃんの前でどういうふうに行動してください、どうふるまってください、ということをしっかり伝えておくべきじゃないかなと思うんです。」
勝田教授は、移動することよりも行った先で何をするかが大事。帰省しても、高齢者との接触は最小限に、マスク会食、換気、手洗いなど、家の中でも感染対策を続けるべきだとしています。
Q.2020年も感染者が年末年始に急増しました。今年はどう過ごしたらいい?
(勝田教授)
「まずは高齢者にワクチンをちゃんと打ったかを確認して、できるだけ別の部屋で行動する、隔離とはいかなくても、家の中で親族がそろって夜中までお酒を飲む…というのはちょっと控えて欲しいと思います。」
(情報ライブ ミヤネ屋 2021年12月23日放送)


