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金の価格が過去最高に

【独自解説】盗難された高級時計はどこへ?海外の“闇ルート”を専門家が独自取材 金・ブランド品の価格が高騰する中、増加する“押し買い”にも警鐘

 原材料費の高騰や金融不安などの影響で、金やブランド品の価格が高騰しています。10日には、金が1gあたり9794円と過去最高値を記録。買い取り店が連日大忙しの中、凶悪な事件やトラブルも増えています。海外で流通する日本での盗難品。盗品売買に手を出すと、反社会的勢力と繋がることに⁉犯罪ジャーナリスト、石原行雄氏が解説します。

金・ブランド品の価格高騰!買い取り業界が大忙し

金の価格上昇の理由

 経済評論家の加谷珪一氏によると、金の価格上昇の理由は様々あり、ウクライナ侵攻も影響していますが、一般的に金は有事に買われるということです。物価上昇時には貨幣の価値が下がるため、安定した金を買う傾向が強くなります。実際に1970年代の物価上昇時は、金の価格が5~8倍に急上昇しました。世界的な物価上昇が今後も続くとの予測から、金の価格はしばらく上昇傾向が続くといいます。

ブランド品の買い取り価格もアップ

 さらに、円安の影響と需要の高まりから価格高騰しているのが、ブランド品や高級腕時計です。3年前(2020年5月)と比べ、買い取り価格が急上昇しています。「株式会社エコリング」によると、3年前には60~65万円だった「エルメス ケリー28ボックスカーフ(1999年製)」が、現在(2023年5月16日)では100~110万円と約45万円もアップ。190万円だった「ロレックス GMTマスターII 126710BLRO ジュビリープレス」も現在では260万円と、70万円もアップしているということです。

東京で強盗事件が頻発

 貴金属の価格上昇で、悪いニュースも増えています。強盗事件が相次いでおり、それに並び“押し買い”のトラブルも増えているといいます。押し買いというのは、アポなしで電話・訪問してきて、家にある貴金属などを強引に買い取ることです。ある女性の家に突然「不要な貴金属があれば売ってほしい」と言う男がやって来て、5000円だけを渡し、家にあった指輪を持ち帰ってしまった例もあります。この女性は「安すぎる」と思ったものの取引の書類もなく、業者の名前も覚えていなかったので連絡が取れず、泣き寝入りするしかありませんでした。

押し売りならぬ“押し買い”とは

 押し買いは『基本的に断るべきだ』ということですが、被害に遭いそうになった時の対策としては、『相手を確認する』『買い取り条件など書面をもらう』『警察や消費者センターに相談する』などがあるということです。中には家に上がり込もうとする業者もいて、もし間取りや家族構成が知られてしまうと、「家に入れるか(=空き巣や強盗に入れるか)」の判断材料を与えてしまう危険があると、石原氏は警鐘を鳴らします。

犯罪ジャーナリスト 石原行雄氏

Q.腕時計やブランド品の高騰により、押し買いが増えているのですか?
(犯罪ジャーナリスト 石原行雄氏)
「押し買いに偽装した強盗団の調査部隊というケースもあります。向こうから来るものは悪徳業者、あるいは犯罪集団の一味だと思って、全てシャットアウトしていいと思います」

Q.「Tシャツでも何でもいいので、不要な物はありませんか?」などと、固定電話に突然電話がかかってくることもあります。
(石原氏)
「そういった電話も基本的には悪徳業者、あるいは犯罪集団の調査部隊という可能性が十分あります。ナンバーディスプレイ機能を使って、知らない番号には全て居留守を使っていいと思います」

ブランド品買い取り店の対策

 ブランド品買い取り店では、盗難品を買い取らないよう対策をしています。取引業者等で強盗や盗難があった場合、警察から買い取り店に『盗品リスト』が送付され、そこに記載されているシリアル番号を在庫と照合してチェックするということです。

Q.日本国内では、盗難品を流通させることは難しいということですね?
(石原氏)
「以前は、盗難品の届け出があってから古物商の間にリストが出回るまでのタイムラグの中で、売り抜けられるということがありました。ですが今は、例えば、先日の銀座強盗の事件は夕方に起きて、翌朝には業者の間でリストが広まっていますので、国内で売りぬくのは困難な状況です」

石原氏がタイで撮影した偽ブランド品

 では、日本の盗難品はどこに行くのでしょうか?2019年にタイ・バンコクを取材した石原氏によると、繁華街のナイトマーケットでは、ロレックスなどの高級時計やブランド品の“違法コピー品”が多く売られていたといいます。また、偽ロレックスを売る店で「もう少しクオリティーの高いものを見せてくれないか?」などと言うと、本物のロレックスのみを扱う“店員の知り合いの店”に連れて行かれます。そこのロレックスは相場より少し安く販売されていて、その理由は、実は仕入れ先が盗品だったというケースがあったということです。

Q.違法コピー商品が並ぶ店で、本物が売られている店に案内されるのですか?
(石原氏)
「コピー商品自体が商標権を侵害した違法な品物ですから、こういうお店に関連する人間は裏社会に片足を突っ込んだような人物です。そういう所で『本物がほしい』と言うと、盗品ばかりを集めた店に繋がってしまうということが、しばしばあるということです」

ロレックスが強盗のターゲット

 石原氏によると、ロレックスが強盗などに狙われる理由は、価格高騰が日本国内だけではなく、世界的なものだからだということです。特に中国や東南アジアなどアジア諸国での人気が高く、品薄状態なので、日本での盗品であっても、海外に行けば『人気の商品』として現金化できる可能性が高いといいます。

石原氏がタイで撮影した偽高級時計

 では、どのようにして盗品を海外へ持ち出すのでしょうか。石原氏が反社会勢力やそれに近い人物に取材をした話によると、腕時計を大量に運び出せば税関で怪しまれるため、2~3本、多くても4~5本と小分けにして、観光客やビジネスパーソンのふりをして持ち出すということです。海外の買い取り店に普通に持ち込み、「カジノで遊びすぎてお金が必要になったから、換金したい」などと言えば、品薄状態のロレックスは喜んで買い取ってもらえるといいます。それが日本での盗難品かどうかは、海外の買い取り店には分からないということです。

Q.8日に銀座で起きた強盗事件では、実行役は未成年でした。裏に指示役がいたかは不明ですが、盗品を売ろうとすれば反社会的勢力と繋がってしまうリスクを十分に認識しなければいけませんね。
(石原氏)
「そうですね。そういう裏のコネクションがあるので、実行犯も、盗品を買わされてしまった人も、裏社会と繋がってしまうということになります」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2023年5月16日放送)

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