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取り調べが続く山上容疑者

【独自解説】山上容疑者の行動は「拡大自殺の一種」犯罪心理学者が分析 恨みを持ったとされる『統一教会』、霊感商法対策弁護士が語る信者の心理

 安倍晋三元首相を銃で撃ち殺害した疑いで送検された山上徹也容疑者への取り調べが続く中、新たな供述が次々と明らかになっています。いまだ国内外の衝撃が収まらない未曾有の事件の全容は、明らかになるのでしょうか。犯罪心理学者で東京未来大学こども心理学部長の出口保行氏が解説します。

捕まる前提の行動は「拡大自殺の一種」

犯行に使用した自作の銃

 山上容疑者は警察の調べに対し、犯行に使用した銃について「動画投稿サイトYouTubeの動画を参考にして作った」「火薬はインターネットで購入した」「銃は今年の春ごろに完成した」「最初は爆弾での事件も計画した」などと供述しています。銃弾は「筒の形をした容器の中に、6発入る仕組みで1度に発砲できる」と説明しており、自宅からは、犯行に使用したものと似た構造の銃5丁が押収されています。さらに、この銃について「事件前日に、奈良市内にある宗教団体の施設に銃の試し撃ちをした」と供述。宗教施設の壁には銃で撃ったような跡が数か所見つかり、警察は周辺の防犯カメラに山上容疑者の車とみられる映像を確認したということです。

犯罪心理学者 出口保行氏

Q.山上容疑者は、発作的にこのような行動に移ったのではなくて、用意周到に時間をかけて計画していたことが分かりますね?
(出口氏)
「はい。かなり計画性は高い犯行だと思っています。色んな事態を全て想定しながら、かなり入念に計画していたと考えられます」

Q.容疑者は安倍元首相を銃撃した後、逃げるつもりはなかったようですね?
(出口氏)
「そうですね。自死を遂げる際に周囲を巻き込んでいく“拡大自殺”の一種だと思っていますが、捕まることを前提に、この事件に臨んでいるということは言えると思います」

霊感商法対策弁護士が語る高額献金と信者の心理

田中会長が語る「献金」

 山上容疑者は、「母親が宗教団体にのめり込み、多額の寄付をするなどして家庭生活がめちゃくちゃになった」と供述しています。母親が入信している宗教団体・世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の田中富広会長は7月11日、会見を行いました。田中会長によると、山上容疑者の母親は1990年代後半に入会し、2002年ごろ経済的に破綻したということです。2009年~2017年ごろは連絡が途切れていましたが、2019年~2020年に、親交の深い教団関係者と再び連絡を取り合い、2022年初めからは月に一度、教会行事に参加していたということです。ただ、山上容疑者自身は信者ではないとし、「破産された諸事情は、私どもも把握していません。その後、高額献金を要求したかどうかという事実は、記録上一切残っていません」と発言しました。

山口広弁護士が語る「統一教会」

 献金の実態について、田中会長は「献金は本人の信条に基づいてされる。ノルマという扱いはしていない」としています。しかし、長年宗教被害者の救済にあたってきた、全国霊感商法対策弁護士連絡会代表世話人の山口広弁護士によると、献金の額は高額で「1990年代は、創始者の文鮮明(ムン・ソンミョン)氏から、毎月何億円という集金の指示が繰り返しあった。『統一教会』は物品を売ったり、献金だけでは間に合わなくなり、信者が持っている不動産を担保に金融機関からお金を借りさせていた。20憶円ぐらい取られた人がいた。自己破産する信者も少なくなかった」と話します。

 さらに、山口弁護士によると脱会した信者について、「戻る信者もたくさんいる。何か嫌なことが起きると、『教団を離れたせいじゃないか』、『罰が当たったんじゃないか』という感覚を持つ。それで結局、教団に戻ってしまう」ということです。

Q.何かに頼りたいという気持ちは誰しもあると思いますが…。
(出口氏)
「何かに依存していくのは、自分の心の破綻を防ぐために非常に重要なポイントになります。それが宗教であったり人であったり、人によって全く違うわけですが、救われることは多々あると思います」

思い込みで殺意を募らせたか

 山上容疑者は「2021年9月に、恨みがある宗教団体が設立したNGOの集会に寄せられた安倍元首相のメッセージを見た」と言い、宗教団体と安倍元首相の間につながりがあると思い込み、殺意を募らせるようになったとみられています。

安倍元首相との関係について、田中会長の説明

 田中会長は教団と安倍元首相との関係について、「友好団体(UPF・天宙平和連合)が主催する行事に、安倍元首相がメッセージなどを送ったことはある。教団の指導者が進める世界平和運動に賛意を示していた。安倍首相が会員として登録されたことも、顧問になったこともない」とし、「山上容疑者は、友好団体との区別がついていなかったのではないか。どちらも創始者が一緒なので、そういう観点から全てが同じに見えていたのかなと感じています」と発言しています。

Q.宗教団体ではなく、安倍元首相に銃弾が向いたのはどういうことなのでしょうか?
(出口氏)
「まず普通では考えられないことです。一般的に殺人というのは、加害者と被害者の間での認識率は90%を超えていて、肉親の間で起こる確率は50%を超えています。要するに、非常に濃い人間関係の中で殺人は起きるのです。今回、この容疑者の敵意が宗教団体に向いていたのであれば分かりやすかったのですが、安倍元首相に矛先が向いたというところが、なぜ安倍元首相に恨みを持って、どのような感情を持ったのかというのが解明できるかが、今後最大の争点になると思います」

(情報ライブ ミヤネ屋 2022年7月12日放送)

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