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【家計の危機】「海産物を海から取って食べるのは、もう今厳しくなってきている」“庶民の魚”と“高級魚”の価格に逆転現象も…もう節約だけでは乗り切れない?“大値上げ時代”を乗り越えるコツを専門家が解説
2025年4月7日 UP
政府が備蓄米を放出しましたが、コメの平均価格はいまだ高いままです。一体いつ値下がりするのか?一方、家計の助けとなっている“庶民の魚”と贅沢品とされる“高級魚”の価格にまさかの逆転現象が―。経済評論家の加谷珪一氏の解説です。
■「備蓄米だけが売れてしまわないよう『備蓄米』と明記せず販売」 今後のコメの価格は下がるのか?
販売店も分からないことが多いとされる備蓄米についてですが、スーパーでのコメの平均価格は5キロ当たり4077円で前年同期比の約2倍だといいます。そして政府放出の21万トンの備蓄米のうち、現在14万トンが落札されています。早ければ2025年3月下旬から店頭へ並ぶ見通しとなっています。
では、その備蓄米はどこで買えるのでしょうか?東京都内の中小スーパー4店舗に聞いたところ、2025年3月23日時点で備蓄米に関する情報はないとのことで、スーパーアキダイの秋葉弘道社長によると、「そもそも小売店に『備蓄米が来る』という情報が入るかどうかも不明」と話しています。
さらに他のコメとの区別はどうしていくのか、JA全農によると備蓄米だけが売れてしまわないよう『備蓄米』と明記せず販売するよう依頼するとしていますが、消費者からは「コメの値段が安いなら嫌でもバレてしまうのでは…」という声も上がっているといいます。
“安い備蓄米だけが売れて、他のコメが売れ残る”という懸念について、農業ジャーナリストの松平尚也氏は「売れ残りを避けるため備蓄米と一般流通米がブレンドされて店頭に並ぶ可能性」と話しています。
そして備蓄米の店頭価格はどうなるのでしょうか?政府放出の備蓄米のうち、14万トンが落札されていて、JA全農などから卸売業者へ行き、そこから小売店に並びますが、2025年3月 17日の時点でJA全農米穀部の藤井暁部長は「(備蓄米の)販売は落札金額に必要経費のみを加え適正に取り扱います」として、販売先に価格の報告など国の定める要領に則した適正な取り扱いを求めていくとのことです。
農業ジャーナリストの松平尚也氏によると「卸業者や小売店からすれば、既に仕入れたコメも売る必要があるため備蓄米だけを安く提供するというのは可能性が低いのでは」と話しています。
(松平氏)
「4月中旬~下旬で5キロ3800円程度になり、5月には3600円まで下がるのでは。しかしそれ以上は下がらないだろう。2024年の価格である2000円台にまではならない見通し」
(経済評論家・加谷珪一氏)
「根本的には消費量に対して生産量が少ないので値段が上がっている。生産量が増えない限りは、安くならないと思ったほうがいいと思います」
Q.日本人のコメ離れが進み、その分、作る量が減っているとのことですが…。
(加谷氏)
「減りました。昭和の時代から比べると、私たちのコメの消費量は半分になっているんです。生産者からすると、もう生産量を絞らないと値崩れしちゃうので、絞ってきた。ここでインバウンドからの需要が増えたので、一気に足りなくなったというのが真相ですね」
コメの価格高騰の中で、企業も努力しています。今、ローソンでは冷凍おにぎりを販売していて、東京都内約400店舗で2025年2月から本格的に販売開始しています。全4種類で価格は140円からとなっていて、独自の冷凍技術で賞味期限は1年だといいます。店舗での食品ロス削減効果が見込まれています。
■今はタイよりもイカが高い⁉不漁による価格高騰で“庶民の魚”と“高級魚”の逆転現象
全国で漁獲される『イカ』の1キロ当たりの平均価格を見ると、1814円となっていて、『タイ』は1509円で4年前と比べると2倍の価格となっています。中島水産担当者によると、『イカ』高騰のワケは「不漁による価格高騰がこの10年くらい続いている」とのことです。
そして今は、旬の『マダイ』がお得ということで「今の時期は1匹(2~3キロ)2000円程。高い時期と比較すると半値ぐらいに。断然“生”で食べるのがおススメ」だといいます。
そして『サバ』も高騰が続いています。『サバ』の1キロ当たりの平均卸売価格は2014年が387円なのに対し2024年には560円となっていて、この10年で約1.4倍になっています。理由は“漁獲量の減少”だとのことで、エサが減って成長が遅くなり、成長前に水揚げされてしまうため、漁獲量が減っているといいます。
『サバ』といえばノルウェー産がお得なイメージもありますが、ノルウェー産サバを使用する『ぬかだき橋屋の橋英行さんに聞くと、「仕入れ値は2024年まで4000円台。2025年3月は6000円。1年で1500円ぐらい上がっている」と言います。10年前は1キロ当たり300円だったものが、現在は650円と2倍以上になっています。
今後、サバの安定供給に向け「サバの不漁は世界的な問題。大手企業も養殖産業に参入し安定的に生産できる体制を整えようとしている」とのことですが…
Q.安定供給できれば今後値段は下がるのでしょうか?
(加谷氏)
「海産物を海から取って食べるというのは、もう今、世界中の人口が増えて豊かになっている中で、ちょっと厳しくなってきているんです。あと気候変動の影響もあって、漁獲量もすごく増減しやすいので、どちらかというと、“値段を安定化させるために”養殖を進めないといけないので、養殖したからといって劇的に安くなるかというとそうではないんです」
そんな中、代わりに高級魚の『うなぎ』がお手頃価格になっています。『シラスウナギ』の稚魚が5年ぶりに豊漁で、1キロ当たりの取引価格が2024年の半値以下になる可能性もあるといいます。さらに『クロマグロ』は2015年から漁獲量が制限されていましたが、数が十分に回復していると確認され、2025年4月から増枠されるといいます。
■4000品目以上の値上げラッシュ 専門家推奨の『三大出費の見直し』で“大値上げ時代”を乗り切れるか?
2025年に入っても値上げは、2024年を超えるペースで続いています。品目数を見ていくと、2025年4月だけで4000品目以上で、早ければ来月にも値上げの品目数が2024年の1年間を上回る可能性があるということです。気になる新年度の家計負担増がいくらなのか、一般的な世帯で前年度と比べてプラス4万2000円という試算もあるとのことです。
Q.給料が上がっても、値上げでは意味がないですよね?
(加谷氏)
「こんな感じになると、そういう印象になってしまうんですよね。ただ、少し円安が落ち着いてきていますから、2024年のように、年の後半にかけて次々上がっていくかというと、そこまでいかない可能性もあるので、ただ、お給料上がらないとどうしようもないというのはその通りです」
Q.値上げラッシュを乗り切る対策はありますか?
(加谷氏)
「日本はインフレ時代に突入している。節約だけでは乗り切れない可能性も。三大出費、『家』『車』『保険』の見直しを推奨する。地方で車がなきゃだめだという方は、どうしようもないんですが、3大出費を抑えないとインフレ時代は厳しいです。カーシェアに切り替えるとか、都市部の方はちょっと思い切った決断がいるのかもしれません」
(「情報ライブミヤネ屋」2025年3月24日放送)


