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【独自解説】猿之助さん両親“中毒死”か、服用した『向精神薬』とは?今後の捜査のポイントは「種類と入手ルート」 専門家2人が解説
2023年5月23日 UP
東京・目黒区の自宅で、歌舞伎役者の市川猿之助さん(47)が意識朦朧の状態で発見された事件。死亡した両親の死因は、向精神薬服用での中毒死とみられています。猿之助さんが、「死んで生まれ変わろうと家族と話し合い、両親が睡眠薬を飲んだ」という趣旨の話をしていることもわかりました。向精神薬とは、どういった薬なのでしょうか。そして、今後の捜査の行方は?元埼玉県警科捜研で法科学研究センター所長の雨宮正欣さん、元警視庁刑事の吉川祐二さんのダブル解説です。
向精神薬とは?大量摂取でも致死率は高くない
向精神薬とは、鎮静剤・精神安定剤・睡眠導入剤等を含む薬剤の総称で、パニック障害や睡眠障害の治療に用いられる薬です。中枢神経に作用することから、依存性が現れる可能性があるなど、乱用によって健康被害が発生する恐れがあるということです。また、服用するためには医師の処方箋が必要で、他人に譲渡する目的で所持することは禁じられています。
Q.医師の処方箋が必要な薬を、致死量となる数を手に入れるのは、難しいのではないでしょうか?
(元埼玉県警科捜研・法科学研究センター所長 雨宮正欣氏)
「1日や2日では難しいです。お薬手帳に、調剤歴という『どんな薬物が処方されたかの記録』が残りますので、いろいろな所からかき集めることもできないと思います。今の向精神薬は比較的安全で、例えば1錠で効果のある薬を1か月分など大量に飲んでも、相当危険な行為であることは間違いないですが、亡くなる確率は決して高くはないです。しかし、亡くなるケースもあります。原因としては高齢であることや、持病があって肝臓や腎臓の働きが鈍っていたなど、そのような要因も関係するので、中毒死が決してないというわけではありません」
Q.現場検証では、睡眠導入剤や薬に関するゴミなどは見つからなかったということです。薬が1錠も残っていないということは、あり得るのですか?
(雨宮氏)
「あった物を全て飲んだということになりますが、普通はあり得ないです。薬の種類が何かという情報は、嘔吐物や解剖したときの胃の内容物などで得られると思いますが、1錠も残っていないというのは不思議です」
雨宮氏によると、今後は簡易検査では分からない薬剤の種類や、死亡時の薬剤濃度などを調べる検査を行っていくということです。
Q.向精神薬の種類を特定するには、時間がかかりますか?
(雨宮氏)
「司法解剖の時に採取した血液を分析するのですが、もし薬の空き箱などが見つかれば、短時間で結果は出ると思います。しかし、全く分からないところからとなると、数週間、あるいは数日程度はかかると思います」
両親に布団を掛けたのは誰?今後の捜査は?
捜査関係者によると、事件の後、猿之助さんは「死んで生まれ変わろうと話し合い、両親が睡眠薬を飲んだ」という趣向の話をしていたといいます。また、両親は発見時、2階リビングの床に倒れており、布団が一枚掛けられていたということです。
Q.猿之助さんは「両親が睡眠薬を飲んだ」ことを認識しており、第三者の侵入がないとするならば、両親に布団を掛けたのは猿之助さんなのでしょうか?
(元警視庁刑事 吉川祐二氏)
「お父様は、救急隊が駆け付けた時には生きていらっしゃいましたので、お父様が掛けたとも考えられます。しかし、現場にいたのは両親と猿之助さんの三人だけだったので、猿之助さんが掛けたと考えるのが一番自然だと思います」
吉川氏によると、今後、向精神薬の種類や入手ルートの特定、押収した複数のスマホの通信・検索履歴の確認、猿之助さんの証言と現場検証の状況に矛盾点がないかの照らし合わせなどをしていくということです。
Q.大量の向精神薬を、どのように入手したのでしょうか?
(吉川氏)
「向精神薬の処方は1回につき30日分が限度ですので、通常の入手ルートだけで集めても、それだけ大量にはなりません。薬を貰って飲まずに溜めている人もいますが、それにしても数が多すぎます。向精神薬を医師を通さずに手に入れることは犯罪ですが、そういうこともあり得ます。それが『スマホの通信・検索履歴の確認』に関わってくる部分で、薬の違法入手に関わる人物とコンタクトがないか、自殺の仕方などをネットで検索していないかなどを見ていきます」
Q.そして、猿之助さんの証言と現場検証の結果を照らし合わせていくのですね?
(吉川氏)
「今回、『家族で話し合いが行われていた』という情報は流れていますが、それが、いつ行われたのか。その時点で自殺が決まっていれば、向精神薬を溜めていくことも可能でしょう。また、薬物のパッケージを捨てることも十分考えられます。そのようなことも含め、今、猿之助さんは意識がハッキリとしていない状況かもしれませんが、回復を待って、猿之助さんの口から話を聞く、事情聴取をして、確実にしていくことが必要になってきます」
(「情報ライブ ミヤネ屋」2023年5月22日放送)