記事
【提言】「畑に入って作物を抜いていく」富士山&桜の大人気“絶景スポット”周辺で今も住民を悩ます『オーバーツーリズム』 観光業は“おもてなし”からビジネスへ、専門家が提言「自然ではなく“資源”と捉えたほうがいい」
2025年5月2日 UP
富士山の麓、山梨・富士吉田市にある『新倉山浅間公園』。“日本らしい風景”が撮影できるとあって、多くの外国人観光客が訪れています。しかし、問題となっているのが、観光客による迷惑行為などの『オーバーツーリズム』です。周辺住民を悩ませる中、今の日本に必要な“発想の転換”とは?富士山周辺の観光の現状を独自取材しました。
■外国人観光客でにぎわう『新倉山浅間公園』 “日本らしい風景”で大人気
富士山と五重塔、そして春には公園内に植えられた約650本の桜が一望できる『新倉山浅間(あらくらやませんげん)公園』。日本らしい風景としてSNSを中心に海外にも広く知れ渡り、外国人観光客を中心に人気のスポットとなっています。
2025年4月9日時点ではまだ満開ではなかったものの、公園内は大勢の外国人観光客で大混雑していて、絶景スポットになっている展望デッキまでは60分待ち。展望デッキでは、溢れんばかりの外国人観光客が記念撮影を楽しんでいました。公園の来園者は近年右肩上がりで増え続け、2024年は前の年よりも約36万人多い約151万人(過去最多)となりました。
■「畑に入って作物を抜かれた」周辺住民の生活に支障をきたすオーバーツーリズム問題がここでも…
その一方、これまで問題となっていたのが、『オーバーツーリズム』です。公園周辺は狭い道が多く、時間を問わず慢性的な渋滞が発生。さらに、観光客によるポイ捨てや私有地への立ち入りなど、マナーの問題もあとを絶たず、地元は頭を悩ませていました。
こうした事態に対応するため、富士吉田市は2025年2月に公園周辺にある駐車場4か所を有料化する条例を可決し、同年4月1日から開始しました(同月18日まで開催されている『桜まつり』の期間中、第1駐車場は利用不可)。公園から離れた第2・第3駐車場を安くし、車を分散することで渋滞緩和、さらに市内を回遊してもらい経済効果を高める狙いがあります。駐車料金は、交通誘導員の配置や周辺の維持管理に役立てるということです。
それでも、公園周辺の取材を続けていると、大勢の外国人観光客が歩道に収まりきらず車道に広がり、通行の妨げに。周辺住民は今でも生活に支障をきたしているそうで、公園のすぐそばに畑を所有する男性は、“とんでもない迷惑行為”を受けたといいます。
(公園近くに畑を所有)
「家から車で1分の畑に行くのに、人・車が多すぎて20分かかることもあります。畑の中にも入られるから、ネットをしています。ネットがないと入るし、作物は抜いてくし」
Q.えっ⁉作物を抜いてしまうんですか?
(公園近くに畑を所有)
「抜いちゃうよ…」
■「自然ではなく“資源”と捉えたほうがいい」求められるのは“逆転の発想”?
富士吉田市は、さらなる対策として『展望デッキ』の有料化を検討しています。堀内茂市長は「今年度中にはやりたい。地元の皆さんからもお金は取りにくい。検討は必要」と話していますが、デッキに向かう入り口は複数あり、実現に向けクリアすべき課題が多いということです。公園を管理する『都市基盤部』は、「駐車場の有料化をしたばかりで、次のステップとして検討していく」としています。
Q.ヨーロッパでは、観光地や歴史的建造物などはお金を取っていますよね?
(元日本テレビ解説委員・NNNロンドン特派員 小西美穂氏)
「それでも見たいし、それを見に行っているわけなので。例えば、ゴミもなくキレイにしてくれたり、行列も整備してくれたりして、安全に楽しむために使われるんだという相互理解のもとに、お金を取っています。だから日本も、ずっとここまで“おもてなし”で来ましたけど、住民の生活あっての観光地ですから、畑にネットを張るなど自分でお金をかけて自衛しないといけないというのは、経済的なインセンティブとのバランスがあまりにも取れていないと思います」
Q.日本は観光業の意識を根本的に変えて、完全にビジネス化したほうがいいんでしょうか?
(元ユニクロ最年少執行役員・神保拓也氏)
「全く同意です。2024年は約3600万人の外国人が訪れ、インバウンド消費額は8兆円超で過去最高です。日本は“観光大国を目指す”がこれまでのフェーズでしたが、もう観光大国になったと捉え直し、景観などの自然はどうしてもお金をかけづらいという話もあると思いますが、僕は全く逆転の発想で、自然ではなく“資源”と捉えたほうがいいと考えます。日本には石炭や石油などはありませんが、観光という物凄く大きな資源があるので、この資源をどう有効活用して国力を強めていくのかという発想に変えたほうがいいと思います」
■“コンビニ富士山”の次は“コストコ富士山”⁉逆さ富士まで撮影可能な注目スポットを紹介!
そんな中、山梨・南アルプス市に、新たな“富士山絶景フォトスポット”として注目を集める施設が完成しました。南アルプスの麓の魅力が集まった『fumotto南アルプス』は、2024年6月にオープンした体験型観光複合施設です。
ここで見られるのは、“コンビニ富士山”ならぬ“コストコ富士山”。また、設置された岩のテーブルで“逆さ富士”も撮影可能です。“コンビニ富士山”は観光客が撮影のため車道を横断するなどして危険・迷惑だと問題になりましたが、ここは『fumotto南アルプス』の広い敷地内にあるため思い思いの場所で撮影でき、『fumotto南アルプス』としては「コストコ富士山がバズって、もっとたくさんの人に来てほしい」と期待を寄せているということです。
(河野玄斗氏)
「これは逆転の発想ですね。普通だったら富士山が見える所にコストコがあるのは景観的にマイナスかもしれませんが、それをプラスと捉えて観光客を呼び込むのは、おもしろい発想です」
(「情報ライブ ミヤネ屋」2025年4月9日放送)


