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収容所からの指示は「賄賂を渡せば可能」 強盗事件『ルフィ』はフィリピンに?個人情報を握られ「一生を棒に振る」“闇バイト”の実態
2023年1月31日 UP
関東地方を中心に全国で相次いでいる強盗事件で、複数の事件で指示を出している疑いがある「ルフィ」と名乗る人物は、フィリピンにある入管施設の収容所にいる可能性があり、警察が関連を調べているということがわかりました。また、先月、東京・中野区で発生した強盗傷害事件の「指示役」は「KIM(きむ)」と名乗る人物だったこともわかりました。これらの事件について闇バイトの取材をするジャーナリストの石原行雄氏と元警視庁刑事の吉川祐二氏が解説します。
「ルフィ」はフィリピンの収容所から指示か、なぜ可能?
警察庁によりますと全国8都県にまたがる14件の強盗事案について、同一グループの犯行と見られていて、すでに30人以上が逮捕されているほか、別の6府県での事件の関連性も進められています。
また、捜査関係者によると強盗の指示役とされる、「ルフィ」を名乗る人物が、フィリピンにあるビクタン収容所にいる可能性があり、警視庁が関連を調べているということです。ジャーナリストの石原行雄氏によるとこの収容所には「入国管理局管轄の収容施設で、不法滞在者や送還を待つ外国人などが滞在している」ということです。
Q.このマニラのビクタン収容所は、犯罪の指示ができるほど自由が効くのですか?
(ジャーナリスト石原行雄氏)
「フィリピンでは、収容所でも役人に“袖の下”を渡して中で結構自由にできることがあります。今回指示役は、パソコンやスマホなど通信ができるものがあれば一通りの仕事ができますので、日本にいる必要はなく、収容所内でも賄賂を渡して指示ができる可能性はあります」
Q.フィリピンでは街中より収容所の方が安全ということもあるのでしょうか?
(石原氏)
「マニラなどは治安が非常に悪いと言われています。夜にお金を持っていそうな外国人がいると簡単に襲撃対象になって、銃で撃たれて金品を奪われるということがあります。収容所の中に居れば、フィリピンの国家によって身の安全を守られながら犯罪を行えるといえます」
Q.収容所にいる人間は、この犯罪で得た金品をどうやって送ってもらっているのでしょうか?
(石原氏)
「収容所に入れられている場合も、看守に“袖の下”を渡すことで、収容されている人間の部下が自由に塀の中と外を出入りできるという状況があるとも言われていますので、その人間に色々なものを運ばせるのは造作もないことです」
個人情報を握られ辞められず…闇バイトの実態とは
12月にあった中野区の強盗傷害事件で、指示役とされる「KIM」という人物は、秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」を使って実行役に指示を出していました。メッセージの中身は「お仕事」と称して現場の住所を示したり、2022年の11月6日には「山口県に呼ぼうと思ったんですが、間に合わないのでまた連絡します」というメッセージを送ったりしていました。実際にその翌日、山口県岩国市で強盗未遂事件が発生しています。
Q.今回の事件では、末端の人間が現場に痕跡を多く残しているように見えます
(元警視庁刑事 吉川祐二氏)
「今回の事件では、現場に実行犯が遺留品や上に繋がるものを非常に多く残しているといえます。そのことから実行犯が30名以上検挙されました」
また、容疑者の供述によると、組織の上の人間に免許証などを持った顔写真を送ったり、家族構成や職場を聞きだされたりするなど個人情報を握られてしまい、家族や職場に危害が及ぶと思って辞められなくなるということです。また、「指示役が変わったことがあって、その理由を聞くと『死んだ』といわれ本当に怖い組織だと思った」「警察に捕まったときは黙秘をする契約だったので、話をすると『ルフィ』に粛清されるかもしれない」などとも供述しています。報酬は、実行役が110万円で盗品の処分役が80万円程度だということです。
Q.昨日まで一般人だった人間が強盗や殺人を犯しているという怖さがありますね?
(吉川氏)
「一般人というか素人が犯罪を犯すときは、加減を知らないんです。相手を拘束したり、打撃を与えたりするのも加減が分からないんです。加減を知らずに今回のような犯罪を犯すと、結果的に人が亡くなったり重傷を負ったりということが起きてしまいます」
Q.安易にこういうことをしてしまうと、簡単に組織から抜けられなくなって、2件3件と犯行を繰り返すことになってしまうのですね
(石原氏)
「身分証明書をわたしているので、怖いから1回犯行をしてしまう。1回するとそのことがさらに脅迫の材料になります。辞めたいと言うと『お前の犯罪の証拠を警察に密告するぞ』と言われて、断り切れずに2度3度とずっと逮捕されるまで使いまわされてしまいます」
Q.闇バイトは、「気軽に1日で100万円もらえる」というものではないし、殺人までしないといけないかもしれない、一生抜けられないということですね
(石原氏)
「もらえる金額がいくらであろうとも、人生を棒に振ってしまいます」
主犯格の検挙はいつ?フィリピンからの身柄引き渡しは…
吉川氏は今回の事件の主犯格逮捕について「過去の特殊詐欺事案と比べ、実行犯が多数で次々と逮捕されているので、指示役のメッセージ消し忘れなどが発生し、足がついている可能性が十分ある」としています。また「フィリピン警察とは人脈とノウハウができており、捜査協力がスムーズに行える」ことを挙げて、「主犯格の早期検挙の可能性もあり得る」といいます。
Q.「ルフィ」が特定されても、その上にさらに元締めがいるんでしょうか?
(石原氏)
「闇バイトの犯罪組織はピラミッド型です。底辺の実行犯と上部の反社会勢力などは一方通行で、実行犯を捕まえても上の指示役やトップの検挙には至りにくいといわれています。しかし、一旦指示役を捕まえると、トップの方はがっちり固まっているケースもありますので、元締めの暴力団などまで捜査の手が及ぶことは期待できます」
Q.日本とフィリピン間には「犯罪人引き渡し条約」は結ばれていませんが、犯罪人を日本に移送することはできるのでしょうか?
(吉川氏)
「日本の警察が現場に行って現地の捜査当局とコンタクトを取っていますので、条約がないから引き渡しなどが難しくなるということはありません。また今回の場合、実行犯が数多く検挙されていて、その中には運搬役や物品の処分役などもいます。そういう人間は、指示役など上の人間と繋がっている可能性が高いので、そういう者を取り調べることで、一歩ずつでも上層部に近づけると見ています」
(情報ライブミヤネ屋2023年1月27日放送)


