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写真:元阪神タイガース 片岡篤史さん(51歳)

「息が吸えない・・」コロナから生還 闘病生活を自撮りで投稿した元阪神タイガース片岡篤史さん(51歳) コロナ回復者専用抗体検査に協力 抗体はできる?再感染しない? 日本初の大規模調査8月からスタート

「締め付けられるような息苦しさを感じましたね。」

そう語るのはかつて阪神タイガースで活躍した元プロ野球選手の片岡篤史さん(51歳)です。片岡さんは4月7日に息苦しさを感じ病院へ。CT検査で「肺炎」と診断され、入院後に受けたPCR検査で翌日、陽性が確認されました。38度以上の高熱が続き日々恐怖を感じていたといいます。症状が出てから1週間後の4月14日ようやく熱が下がり始め、自身の感染をYouTubeで報告。

「毎日不安でした。今も動画を見るのは嫌ですね」(片岡篤史さん)

ベッドに横たわり、苦しそうな表情で感染防止を訴えるその姿は世間に衝撃を与えました。

「動けないんです。トイレに行くときに一度ベッドの上に座ってから動かなきゃいけない。その座る動作が一番苦しかった。胸が締め付けられるような感じで、苦しくて咳き込んでしまって、しばらく動けなくなるんです。」(片岡篤史さん)

当時は緊急事態宣言が発表されて間がなく、新型コロナウイルスの情報もまだ少ない時。体力には自信があったという片岡さんも、未知のウイルスとの戦いに恐怖を覚えたといいます。

「味覚障害なはく、とにかく苦しい。息が吸えないような感じでした。亡くなる方の情報が多くて、自分もどうなるかわからないなと。」(片岡篤史さん)

片岡さんの容体が落ち着いたのは、入院から2週間近く経った4月20日。食欲も出てようやく峠を越えたと実感したそうです。その後、3度にわたるPCR検査で陰性となり、4月24日に退院しました。

自身の体験を振り返って、片岡さんが伝えたいこと。それは「根拠のない過信をしないこと」。誰でも明日は感染者になりうると訴えます。そして自分の体は自分にしか守れないこと、正しい知識を学ぶこと、最後に、「医療従事者への感謝」を強調しました。

日本初の試み 新型コロナ回復者の抗体を大規模調査

写真:コロナ回復者専用抗体検査プロジェクトホームページより

コロナの苦しみから生還した片岡さんが、今回協力を申し出たのは8月から始まった「コロナ回復者専用抗体検査」です。

この研究は、横浜市立大学医学部の山中竹春教授らが企画したもので、新型コロナウイルスに感染し、その後回復した人に、どれだけ抗体が残っているかを調べるという日本初の大規模な調査です。

日本在住で20歳以上の新型コロナウイルスに感染した経験を持つ人を対象に、発症日から半年後、及び一年後の2回、採血をして抗体の残り具合を調べます。残った抗体は持続するのか、また再感染しにくい働きを持つのかなどを調査します。同じく新型コロナウイルスに感染し、その後回復したフリーアナウンサーの赤江珠緒さん(45歳)も参加を表明しています。研究に参加を希望する場合は電話で問い合せ、プライバシーを確保した上で採血が受けられる医療機関が紹介されます。

感染しても発症する人しない人 その差は“免疫”

写真:免疫細胞の働き

「免疫」とは体内に侵入してきたウイルスや細菌などの外敵から体を守る働きです。

人間の体には大きく分けて「自然免疫」と「獲得免疫」という二つの免疫機能が備わっており、自然免疫は外敵の侵入を直ちに察知して破壊します。

自然免疫では処理しきれなかった外敵に対して発動するのが「獲得免疫」です。ウイルスが侵入したという知らせを受けると獲得免疫の司令塔である「ヘルパーT細胞」が指令を出し、それをを受けた「B細胞」が抗体を大量に生み出します。

抗体はウイルスに付着して増殖する能力を無力化し、感染を防いで”中和”します。ただし抗体の量には個人差があり、量が少ないとウイルスの細胞への侵入を防ぎきれない場合があるのです。すでに感染してしまった細胞には抗体は効かないため、今度はヘルパーT細胞の指示で「キラーT細胞」が反応し、感染した細胞ごとウイルスを破壊します。

一度、ある感染症にかかると、その後、同じ感染症にかかりにくくなるのは、免疫細胞が一度侵入したウイルスを記憶して、再び同じウイルスが侵入してきた時に素早く対処できるよう備えているからです。新型コロナウイルスに感染しても無症状の人がいたり、症状の重さに違いが出るのは、こうした免疫力に個人差があるためです。

大規模抗体検査で“感染しても安心できる社会を”  大勢の協力を呼びかけ

写真:記者会見に出席する横浜市立大学山中竹春教授(左) 赤江珠緒さん(右)

今回のコロナ回復者専用抗体検査は、一般的な抗体検査に加えて、感染阻止に役立つ「中和抗体」の測定も同時に行われ、“感染しても安心できる社会を創る”ことを目的としています。得られた研究成果がワクチン開発に貢献することも期待されています。

写真:コロナ回復者専用抗体検査の代表 山中竹春教授(横浜市立大学医学部)

山中教授(横浜市立大学)は、日本にはコロナ回復者を対象とした研究がしづらい事情があると言います。世間では新型コロナウイルスに感染した人を差別する風潮が広まり、感染者が自ら名乗り出にくい状況にあります。欧米に比べ、日本の感染者や死者数が少ない要因の一つとして「ファクターX」の話題が注目を集めています。山中教授(横浜市立大学)は「もし日本独特の免疫があるとすれば、日本人の回復者を対象としたデータが必要。それは新型コロナウイルスの解明に役立つはず。多くの方々に抗体検査に参加いただき、様々な結果を出したい」と協力を呼びかけています。検査は8月から、コールセンターにて予約受付を開始、9月より各医療機関での血液検査が行われる予定です。

(読売テレビ 7月29日「情報ライブミヤネ屋」放送分より)

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