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【要警戒】今、狙われるのは『現金』よりも『金塊』?一旦金を購入させて…手元になくても奪われる、その巧妙な手口とは― 元刑事が提言する詐欺の見抜き方&電話の対処法「私から見ると最初からあり得ないことです」
2025年6月1日 UP
増加の一途を辿る、“ニセ警察官”などを騙る詐欺。また、現金を振り込ませるのではなく、金塊を購入させ奪う詐欺まで横行しています。さらに、『日本年金機構』を騙り「年金を停止する」などと煽って、個人情報を聞き出そうとする不審な電話も急増中。すぐに詐欺だと見抜く方法は?“警察”から電話があったら、どうしたらいい?元埼玉県警捜査1課・佐々木成三氏の解説です。
■「LINEに誘導してくるなら全て詐欺」特殊詐欺被害額の約6割が“ニセ警察官”
2025年4月28日、警察庁はホームページで検察官を名乗る人物が実際にビデオ通話を利用して被害者男性を騙す手口の動画を公開し、『“偽警察官・検察官”による詐欺』への注意を呼びかけました。
(大阪地検特捜部検事・石野を名乗る人物)
『ご本人様でお間違いなかったですかね?私のほうは大阪地検特捜部検事の石野と申します』
この人物は、画面越しに身分証らしきものを提示。あたかも本物の検察官であるかのように振る舞ったことで、男性は最終的に現金を騙し取られる被害に遭ったといいます。
警察庁の発表によると、2025年1月~3月の特殊詐欺被害額は約276億円。そのうちの約6割に当たる約171億円が、“警察官を騙る詐欺”だということです。
Q.ビデオ通話で大阪地検特捜部検察官を名乗り、身分証まで見せられたら、一般人は少し怖くなりますよね?
(元埼玉県警捜査1課・警部補 佐々木成三氏)
「そうですよね。ただ、司法・捜査をよく知っている私から見れば、これは最初からあり得ないことです。まず、警察も検察もSNS等のアカウントを持っていないので、SNSで連絡をすることは100%ありません。LINEに誘導してくるなら、全て詐欺だと思ってください」
■現金の次は金塊?次々に変わる詐欺の手口…本物の警察なら“絶対にしないこと”とは?
一方、騙し取られるのは現金だけではありません。今、各地で急増しているのが、金塊を狙った詐欺です。金の価格は、この数年で急激に上昇。2025年4月の平均価格は5年前と比べると約2.7倍となっていて、同年5月1日の価格は1グラム当たり1万6533円と、引き続き高値を記録しています。
そんな中、金塊を騙し取られる事件が発生。2024年1月、福岡市の男性(75)のもとに、警察官を名乗る人物から「マネーロンダリングの疑いがある」と電話がありました。警察官を名乗る人物は「資産の流れを調べる必要がある」として、男性に金の購入を指示。男性が金2.4キロを約3600万円で購入すると、袋入れて玄関先に置くように指示があり、数日後に見ると、袋がなくなっていました。
福岡県では、警察官などを騙り金やプラチナを騙し取る事件が11件発生していて、被害総額は2億1000万円相当となっています。同年2月には、青森県でも金塊860グラム約1380万円相当が騙し取られています。
Q.「金の購入を指示され購入した」とありますが、どういうことですか?
(佐々木氏)
「これは、最初に“警察官をかたる”ところから騙されているので、一度警察官だと信じてしまうと、あり得ないこともあり得ると思ってしまうのだと思います。現金を振り込む=詐欺だとリンクする人は多いですが、金を買うのが詐欺だと気づく人が少ないことを狙った手口なのでしょう」
また、現金ではなく金を狙う理由として、佐々木氏は「ATMは警察や銀行の警戒の目が強い」「金のほうが“足がつきにくい”」との見解を示しています。警察庁は、「警察官が金品を要求することはない」と警鐘を鳴らしています。
(佐々木氏)
「金に替えてしまうと、金を販売するルートを持っている組織にとっては、“足がつきにくくなる”部分があります。詐欺の手口は、どんどん変わるのが特徴です」
警察官を騙る詐欺に騙されないよう、警察も注意喚起しています。『警察官によるSNSを使っての連絡』『警察官が逮捕状をSNSで送付する』『警察官によるATMへの誘導』は絶対にありません。
もし、警察を名乗る者からの電話があった場合、『電話を切って警察相談専用電話(#9110)に相談』『相手の所属・担当部署・氏名・内線番号を確認し、最寄りの警察署に連絡』を。このとき、相手から教示された番号には決して折り返さないようにしてください。
Q.警察官から電話があったら、所属や部署・名前などを聞くことが重要ですね?
(佐々木氏)
「今の時代は、警察官から電話がかかってきても、一度冷静になって疑わなければいけないと思います」
■1年間で250倍以上増加!?「年金を停止する」と不安煽る『自動音声ガイダンス』に注意
そして今、『年金機構』を騙り、個人情報を聞き出そうとする“不審な電話”も横行しています。日本年金機構や年金事務所の職員を名乗る人物からの自動音声ガイダンスで、「書類の提出確認が取れないため、手続きしないと年金の支給が止まる」などと“案内”されるということです。日本年金機構によると2023年度は3件でしたが、2024年度には770件と急増しました。
下記は、愛媛県警が公開した実際の自動音声ガイダンスの内容です。
『こちらは日本年金機構です。国民年金の受給額についての確認書類のご返送がいただけないご家庭にご連絡しております。引き続きご対応をいただけない場合は、国民年金の受給を停止する場合がございます。このまま受給額等をオペレーターに確認したい方は電話機のいずれかのボタンを押してください』
日本年金機構は、「日本年金機構や年金事務所の職員が電話で、自動音声ガイダンスで連絡すること、口座番号や振込先など個人情報を聞くこと、銀行振り込みやATM操作を案内することはない」と注意喚起しています。
(「情報ライブ ミヤネ屋」2025年5月1日放送)


