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【提言】『みそ汁にネズミ』『レジ袋に害獣』相次ぐ飲食物への異物混入…でもSNSへの投稿は要注意!「お店のミスであれ名誉毀損になり得る」 もし見つけたら、どうしたらいい?法律のプロが徹底解説
2025年4月15日 UP
世間に大きな衝撃を与えた『すき家』の異物混入。そんな中、フードデリバリーサービスを手がける『出前館』も、商品を入れたレジ袋に異物が混入する事案が発生していたと発表しました。もし、注文した商品に異物を見つけたら?SNSには投稿してもいい?元検事・亀井正貴弁護士の解説です。
■店舗・テークアウト・フードデリバリーで相次ぐ異物混入 『置き配』利用時の責任どうなる?
2025年1月、『すき家』鳥取南吉方店で、「みそ汁にネズミが混入している」と提供した客から指摘があり、その場で店員が目視し確認(ただし公表は同年3月22日)。また、同年3月28日には東京・昭島駅南店で、テークアウト商品にゴキブリが混入していたことが利用客からの電話で発覚し、商品代金を返金したということです。
これらを受けて『すき家』は、同年3月31日午前9時~4月4日午前9時にかけ、全店(ショッピングセンターなど一部除く)1971店舗で一時休業。「粗大ゴミは放置されていないか」「ガス・水道・隙間・穴はないか」など、店内・店外29のチェック項目を確認し、対策を実施しました。
また、フードデリバリーの“ネットサイト”『出前館』が、2025年3月29日に客に届けられた商品が入ったレジ袋内に異物(害獣)が混入していたと、同年4月1日に公表しました。これを重大事案として、客への謝罪及び害獣の捕獲など専門家を含め対応しましたが、同年4月2日現在、混入経路については不明です。
Q.フードデリバリーは、どこで異物が入ったかを特定するのは難しいですよね?
(元検事・亀井正貴弁護士)
「難しいです。実際に私もこういったケースは経験がありますが、結局“誰が責任を負うか”という問題です。今回の場合、どの段階で原因が生じたかを立証するには、どういう過程で流れてくるか、どの可能性があるか、という検証をやるしかないです」
Q.『置き配』をお願いして、そのときに異物が入ったら、誰の責任になりますか?
(亀井弁護士)
「それは、責任を追及するのは難しいと思います。飲食物の場合、そのままではなく袋などに入れてあるなら、そのように置いてほしいと消費者が言っているわけですから、運ぶ側は言われたことをやっているだけです。要するに、“どこまでが給付か”ということです。一般的には家の中に入って渡すまでが給付ですが、『置き配で』と言ったのであれば、そこで給付は履行したことになります」
■もし異物を見つけたら、どうしたらいい?気になる『4つの疑問』を解説
もし店内で飲食しているときに異物を見つけたら、店員を呼び、一緒に確認してください。テークアウトの場合は、すぐに店に連絡し、商品は捨てずに保管して、動画・写真に保存するなど証拠を残すようにしてください。
Q.証拠を保存する際のポイントはありますか?
(亀井弁護士)
「写真だけだと、あとで加工・工作した疑いが出てくるので、最初から動画で過程を撮影することによって、証拠保全ができます」
気になる4つの疑問を見ていきます。まず、賠償請求は可能なのか?亀井弁護士は、「代替品の提供か、代金の返金は可能」としています。
Q.代替品か返金、どちらかを選べるということですか?
(亀井弁護士)
「基本的には製作物供給契約があり、これは売買と請負みたいなもので、ちゃんとしたものを提供する義務があるのに不完全なものしか提供できない場合には、法律によって別の代替品を請求するか、損害賠償するか、一部なら代金を減額するか、この3種類からどれかを選べます。また、精神的苦痛による慰謝料はあり得ます」
次に、SNSに投稿した場合は?亀井弁護士によると、「虚偽なら罪になる。事実でも、名誉毀損となる場合がある」ということです。
Q.事実でも名誉毀損になるんですか?
(亀井弁護士)
「外形上は、社会的評価を下げれば名誉毀損になるので、事実だろうが虚偽だろうが、社会的評価は下がります。問題は名誉毀損かどうかではなく、違法性があるかどうかです。違法性がなければ犯罪は成立しないし、賠償請求もはねつけられます」
Q.完全にお店のミスでも、SNSで誹謗中傷のような内容を書くのはダメだということですね?
(亀井弁護士)
「お店のミスであれ何であれ、店の社会的評価を毀損するようなものであれば、原則として名誉毀損になり得ます。ただ、公共の利益・公共の目的の下でやる場合は、違法性が阻却されるので犯罪ではないし、賠償責任も負いません。問題は、それが公の目的なのか、あるいは公に資するものなのか。例えば健康被害など、早くそれを上げないとすぐに同じことが起きる可能性がある場合、その物についての重要な公共の利益が出てくる可能性もあるということです」
では、自作自演だったら、どんな罪になるのか?亀井弁護士は、「ウソにより返金を受けた場合、『詐欺罪』で懲役10年以下となる可能性がある」と指摘します。
最後に、店への罰則は?亀井弁護士によると、「食品衛生法違反で懲役3年以下、又は300万円の罰金となる可能性がある」ということです。
Q.懲役3年以下、又は罰金300万円は厳しいですね?
(亀井弁護士)
「店が異物を混入させた場合、それに対する改善命令などが出ますが、その命令にも従わなかった場合、ここまでいく可能性があるということです」
Q.例えばですが、きつねうどんを頼んだらそばが一本入っていたら、それは異物混入になりますか?
(亀井弁護士)
「そばを食べなければいいので、何の問題もないです。ただ、その人がそばアレルギーだった場合は、論点化すると思います。店側は、そばアレルギーの人が来ているかどうかまで予測する義務があるのか、その上で回避する義務があるのかという論点になるでしょう。客が『私はそばアレルギーです』と言って入ってきた場合には、その客に供給するときには何らかの危険が生じる可能性があるので、予見して回避する義務を負います。でも、アレルギーかどうかわからない客の場合は、店側にそこまでの義務を課すことは難しいのではないかと思います」
(「情報ライブ ミヤネ屋」2025年4月2日放送)


