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【独自取材】超厳戒な中国のコロナ対策、そのウラで地方幹部の処分なども…それでも習近平主席が「ゼロコロナ政策」にこだわるワケ
2022年1月28日 UP
「中国版バブル方式」で“スパイアプリ”配布!?
北京五輪を開幕目前にして、中国では感染拡大の懸念がぬぐい切れません。「ゼロコロナ」政策を掲げる中国政府が巨額の感染対策をとる一方、市民からは不満が続出しています。“バブル方式”という厳格な管理に問題はないのでしょうか。
2021年10月に中国で行われた、ボブスレーのテスト大会に参加した日本代表の強化部コーチである鈴木寛氏に当時の状況を聞きました。
Q.中国のバブル方式での感染対策の状況は?
(鈴木寛氏)
「中国入国前に、政府指定のPCR検査場で陰性証明を取らなければいけません。中国に到着時も係員が白い防護服のようなものを着ていて、異様な雰囲気の中での入国手続きでした。もちろん宿泊施設からは出られません。消毒は、かなり熱心にしていましたし、アプリでチームの健康状態を毎日報告していました。北京でもオミクロン株が流行し始めたと聞きますので、今後どれだけ厳しくなるかは想像できないです。」
このような“中国版バブル方式”の特徴として、アプリのダウンロードが必須だということなのですが、中国のアプリは行動の監視だけでなく、個人情報まで覗かれる懸念もあります。このアプリについて、中国事情に詳しいジャーナリストの福島香織氏は…
(フリージャーナリスト 福島香織氏)
「アプリをダウンロードしたスマートフォンが勝手に動くというようなことがありました。何か検索して勝手に文字を打ち込んでいるんですよ。多分ダウンロードしたときに、何かスパイウェアみたいなものが入ったようです。それを誰が入れたかはわからないですが、経験から言うと『こういうことができるんだぞ』という脅しに使われることがあります。」
批判続出でも続ける“ゼロコロナ”、なぜ?
Q.2桁の感染者でロックダウンを行ったり、感染者の滞在が判明した商業施設が突然閉鎖になったり、感染者が確認されていないのにハルビンの全市民にPCR検査をしたり、火炎放射器で消毒したり、強烈なことが行われていますが、いったいなぜですか?
(フリージャーナリスト 福島 香織氏)
「これは地方当局幹部の、習政権の“恐怖政治”に対する忖度と保身のためです。まず早期発見で、発見したら即撲滅という指示が出ているので、ちゃんと守っているというのを身をもって示しているということです。また、あちこちで地方幹部に処分者が出ていまして、例えば湖北省のケースですと、『春節の移動に影響させないように』という指示が出ていたので、影響が出ないように情報を隠蔽したら、後から情報隠蔽だと処分されてしまったんです。結局処分されるときはされてしまうという感じです。」
「また、先日西安市で、妊娠した女性が陰性証明を持っていないとして、氷点下の中病院の外で2時間待たされた末、死産するということがあり、普段当局に批判的な記事を書かない地方記者も『これは人為的な災難だ』と批判的しました。深セン市では食糧不足や価格の高騰により、抗議する市民と警官の小競り合いが発生しました。ゼロコロナ疲れが出ています。国民が怖いのは感染よりも、この“ゼロコロナ政策”ということです。」
Q習主席はなぜここまで「ゼロコロナ」にこだわるんでしょうか?
(福島氏)
「ゼロコロナは習主席自身が指示した政策で、欧米を真似て転換することは『中国が政策において欧米に敗北した』と認めることに等しいんです。中国共産党内にも、ゼロコロナに反対する有識者もいるんですが、いまさら変えてしまうと習近平政権の判断は間違っていたということになってしまうので、党大会を前に批判されるようなことは避けたいということです。」
疑問視される中国製ワクチンの有効性、検証結果に猛反論
香港大学の発表によると、中国・シノバック社製とファイザー社製のワクチンについて、オミクロン株に対して防御効果があるか検証したところ、それぞれ2回接種した25人の被験者のうち、ファイザー社製は5人から中和抗体が検出されたのに対し、シノバック社製は0人という結果でした。シノバック社は、3回目接種を終えた48人中45人には十分な中和抗体があるとして反論しています。
Q.ワクチンはもはや外交戦略の一つになっていますが、オミクロン株に対しての検証で、中国製ワクチンの効果に疑問が出ていることは問題になりますか?
(フリージャーナリスト・福島香織氏)
「そうですね、中国は“感染爆発”が起こってしまうことによって、国産ワクチン政策を進めた習近平政権の権威が失墜することを警戒しています。“一帯一路”や“ワクチン外交”の前進のため、中国製ワクチンの評価を下げるわけにはいかないんだ、ということです。」
Q中国が北京五輪の成功にこだわり、その後に目指すものは?
(福島氏)
「北京五輪は、中国共産党による政治体制の正しさ、合理性を宣伝するショーです。大会後に『中華民族の偉大なる復興』を掲げて、アメリカとの本格的な競争に入るつもりなのではないかと思っています。」
(情報ライブ ミヤネ屋 2022年1月26日放送)


