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【密着】「私の体が使えるまでは…」年金受給者で農家の“年金農家” 体力面でも収入面でも厳しい農作業、それでも続ける理由
2025年7月5日 UP
さまざまな事情を抱えながらも前を向いて今を生きる年金受給者の皆さん。今回『ミヤネ屋』が密着したのは、年金を受給しながらも農作業を続ける“年金農家”の方たち。何かとお金がかかる農家の苦悩と現実とは―。
■「外で働いて得た収入を、コメ作りに回している」“兼業農家”の厳しい現実
兵庫県姫路市の北に位置する宍粟市。人口は約3万3000人で、面積の9割を森に覆われた豊かな自然の下では、農業が行われていました。
田住学さん(69)は、すでに年金を受給していますが、自宅近くの田んぼで、今もコメ作りに精を出しています。
田住さんの田んぼで、2024年に収穫されたコメを見せてもらいました。
(田住さん)
「耕地面積は2.4ヘクタール。(一袋)30キロで350~360袋。(2024年秋の収穫は)360袋ぐらいになりますね」
2024年から高騰してきたコメの価格は、農家にとって良い傾向なのかと思いきや…
(田住さん)
「経営上、確定申告をしましたら、マイナスです。赤字です。(近所の)皆さん、ほとんど兼業農家ですけど、外で働いて得た収入を、兼業であるコメ作りに回している。これが現実ですわ」
田住さんによると、農薬や肥料の価格高騰以上に、農機具の購入や、その維持にお金がかかるといいます。トラクター・乾燥機・コンバイン・田植え機など、合わせて約2000万円近くになるとのことです。
60歳の定年まで小学校で教師をしていた田住さん。すでに子どもは独立しており、現在は夫婦二人の生活です。所有している農機具は、教職員時代の蓄えで購入したそうですが、夫婦共に年金生活となった今では、一から揃えるのは無理だと話します。
歳を重ねるにつれ、楽ではなくなっていく農作業…妻のひとみさんは―
(妻・ひとみさん)
「本当にキツイ仕事ですからね。健康、体の面が心配ですし、これからだんだん年がいくとキツくなりますのでね」
体力はもちろん、収入面でも決して楽ではないにもかかわらず、農業を続ける理由とは…
(田住さん)
「親から譲り受けた家・土地・墓を守るという、その使命。家を継ぐという使命の中でやっているところが一番ですね」
■『中山間地域』の農業の今後「“年金農家”はいずれ消えていく」
周囲を山に囲まれた兵庫県宍粟市は農業には不向きとされる『中山間地域』です。一方で全国の耕地面積の約4割は、この『中山間地域』にあります。
(養鶏農家で前宍粟市議・今井和夫さん)
「政府は今『大区画化』とか言ってね『スマート農業化』とか言っていますけど、見てのように、これ以上は大区画化できないです」
地元で養鶏農家を営む今井和夫さん(67)。この春までは市議会議員として活動し、宍粟市の農業を見守ってきました。
(今井さん)
「この農地は、見渡す限り“兼業農家”であり、もう年も取っているので、ほとんど“年金農家”です。“年金農家”はいずれ消えていくのはハッキリしていますから、次の若い子(後継者)を育てるためには、所得補償のような形で、税金で補填をしていかなかったら、日本の中山間地域の農業は50年後には、全て廃墟になります」
(田住さん)
「生産者が少なくなれば、当然、供給が減りますから、コメの値段が高くなります。やっぱり国策として、きっちり手当てしていかなければいけないのが、日本のコメ作りの現状だと思っています」
来年70歳になる田住さん。何歳までコメ作りを続けるのか聞いてみると…
(田住さん)
「機械と一緒で、へたるまではやります。機械も使えなくなったらそこでおしまいですけど、私の体も使えるまでは、使います。この田園風景を維持するために」
(「情報ライブミヤネ屋」2025年6月16日放送)


