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名門『桜蔭学園』に暗雲が…

【波紋】「生徒に対する盗撮の危険性が高まる」“女子御三家”の名門女子校が、校舎崩壊とプライバシー侵害の危機⁉至近距離に『能の名門』が高さ制限を超えるタワマンを計画、学校側が東京都を提訴する事態に…「1500人の生命に危険がおよぶ」

 2024年4月に創立100周年を迎えた名門女子校『桜蔭学園』と、室町時代以来『能』の伝統を600年にわたって伝え続ける『宝生会』。隣り合う2つの名門が今、タワマン建設を巡る紛争の真っただ中に。一体、何が?元検事・亀井正貴弁護士の解説です。

■“女子御三家”名門女子高の隣にタワマン計画浮上 一体、何が―

“女子御三家”『桜蔭学園』とは?

 いわずと知れた名門女子校・女子御三家の一つである『桜蔭学園 桜蔭中学校・高等学校』。一学年は約230人ですが、例年約60~80人が東大に合格しています。卒業生の元衆院議員・豊田真由子さんは、「受験指導とか『東大に行け』みたいな話もなく、生徒の自主性に任されている。大学受験がゴールではなく、『こういう仕事をしたいから、こういう勉強をする』という人が多かった」と語っています。

『宝生ハイツ』建て替え計画浮上

 そんな『桜蔭学園』に隣り合って建っているのが、能の名門『宝生会』が所有するマンション『宝生ハイツ』。地上8階建てですが、坂道の下に位置するため、桜蔭学園への日当たりや視界を妨げることなく、これまで共存できていました。

説明会の配布資料による“タワマン計画”

 しかし、『宝生ハイツ』は、もうすぐ築50年。建て替え計画が浮上したのですが、マンション側が周辺住民への説明会で公表した資料によると、新たなマンションは地上20階建て・高さは最高部で77mに及ぶものでした。

■なぜ同じ高さで建て替えない?背景にある『公開空地』と『総合設計制度』

高さ制限にも『総合設計制度』を利用

 そもそも、当該地域の建築物には46mの高さ制限がありますが、20階建て(約70m)のマンションが建設可能な理由について、ハイツ側は「一般の人も利用できる公開空地を設けることで、高さ制限緩和などが可能になる『総合設計制度』を利用した」としています。

専門家が指摘する背景『公開空地』

 総合設計制度に詳しい冨田裕弁護士は、「公開空地(こうかいくうち)を作ることで、床面積を増やすことができる。そうすることで、部屋数を増やして売却することができ、建て替え費用を捻出しやすい」との見解を示しています。

予定されている公開空地

 今回予定されている公開空地は、『南側の歩道を広げる』『マンションのエントランスを開放』『能楽堂の屋上に誰でも利用可能な広場』としていますが、近隣住民からは「地域の住民は利用しづらい」という声もあがっています。

元検事・亀井正貴弁護士

(元検事・亀井正貴弁護士)
「建築基準法上の建築許可を出すのは東京都ですが、建築基準法で決まっている容積率や建物の階数を引き上げるのは、総合設計です。なぜかというと、都市計画の一環で、市街地だと空き地を確保しづらいので住民の利便性を確保するために、『広い土地を持っている人は空き地を確保してください。その代わり、高い建物を建てさせてあげます』というような制度なので、“住民のために広げた”ということで建設できます」

■学園側が都に対し『差し止め請求訴訟』 裁判で主張した“3つの懸念事項”

計画見直しを求める署名は2万筆超

 『桜蔭学園』は周辺住民と協力して、計画の見直しを求める署名運動を展開。2万筆を超える署名を東京都に提出しました。署名運動に参加した地元町会の代表者は、「『老朽化して配管などを直したいので建て替えしたい』という話は聞いていたので、その点に関しては、地域のほうでは何も問題にしていない。ただ、大きな建物を造るということで、ちょっと考え直していただけませんかと話し合いを続けている」と話しています。

タワマン計画の差し止め求め都を提訴

 こうした中、双方の交渉は難航。『桜蔭学園』は2024年、東京都に対し申請を認可しないよう求める『差し止め請求訴訟』を起こしました。

建設工事によって土台部分が崩落か

 2024年11月に行われた第1回口頭弁論で、まず学園側が主張したのは、「建築工事によって生徒や教職員1500人の生命に危険がおよぶ」というもの。『桜蔭学園』と『宝生ハイツ』の境界を見てみると、校舎の下には高さ4mほどの土台があり、マンションの建設工事によって土台部分が崩落し、校舎が倒壊する危険性があるとしています。

冬期の日照シミュレーション

 次に、「建築によって、終日にわたって日が差さなくなる」とも主張。宝生ハイツ側が住民に提示した“冬期の日照シミュレーション”では、朝8時にはタワマンの影が東京ドームにまでかかり、正午から校舎にかかり始めた影は、時間と共に『桜蔭学園』の敷地全体にかかっていくのが見てとれます。

マンション居室と教室が至近距離に…

 さらに、学園側は、「マンション居室のバルコニーが校舎の窓と対面するため、生徒に対する“のぞき”の危険性も危惧している」との懸念を示しました。20階建てのマンションに、至近距離で向かい合う校舎。そこにあるのは、生徒たちの教室です。

「盗撮の危険性がぐっと高まる」都議も懸念示す

 3年前から都議会でこの問題を取り上げてきた福手ゆう子都議は、「生徒たちは日常そこで生活する。食事したり、場合によっては着替えもするし、休み時間などもおしゃべりする。そういう中で、盗撮の危険性がぐっと高まるという問題が、本当に危ないと私は思っている」と訴えました。

『宝生ハイツ』側の対応は―

 今後、この問題にどう対応していくのか、番組は『宝生ハイツ』側に取材を申し込みましたが、回答は得られませんでした。

Q.タワマン問題では「日照権はあまり力がない」と聞きますが、いかがですか?
(亀井弁護士)
「建築基準の関係からすると、日照権やのぞき見には規制があるし、民法上の規制もあります。ただ、そんなに強くないため、学園側の主張が全面的に認められて差し止めになる可能性は、今のところ考えにくいです」

■東京都は請求却下求め争う姿勢…子どもたちの未来どうなる―

東京都は請求却下を求め争う姿勢

 東京都は請求却下を求め争う姿勢を示し、「建築主側には、引き続き計画内容について丁寧に近隣住民等に説明するよう求めています。裁判については、法令に基づき、都として適切に対応していきます」としています。

双方、歩み寄りの余地は―

 老朽化による建て替えの必要性を主張する宝生ハイツ側と、タワマン化計画で生徒たちの学びの環境が損なわれると主張する学園側。未来ある子どもたちのため、両者の間に歩み寄る余地はあるのでしょうか―。

(「情報ライブ ミヤネ屋」2025年4月11日放送)

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